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パパ活(ママ活)の実態や量刑を弁護士が解説

パパ活(ママ活)とは、性的関係(肉体関係)は持たず、年上の男性もしくは女性とデートや食事してお小遣い(金銭)をもらう活動といわれています。しかし、実際には性的関係を求められることもあるようです。「パパ活(ママ活)」という言葉が広く普及しているからといって、安全というわけではありません。事案によっては警察の捜査を受けたり、逮捕されることもあります。

そこで、今回は、パパ活(ママ活)はどのような法律に触れる可能性があるのか、性的関係がある場合も含めて弁護士・坂本一誠が解説いたします。
なお、以下の説明では、わかりやすくするために、パパ活(ママ活)を行ってお金を受け取る人を「受託者」。反対にお金を払ってサービスを受ける人を「委託者」として説明していきます。

性的関係がなくても、相手が未成年であれば犯罪となることもある

パパ活(ママ活)では性的関係(肉体関係)がないと言われています。そうであっても、未成年者が当事者の場合、刑事罰の対象となる場合があります。例えば、刑法第224条は、「未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。」と定めています。ここでいう「未成年者」とは、18歳に満たない者(17歳までの者)を言います。

未成年者であっても双方が合意しているパパ活(ママ活)は「誘拐」ではないと思われるかもしれません。しかし、誘拐とは欺罔・甘言を用いて未成年者をその生活環境から不法に離脱させ、自己の事実的支配下におくことと定義されています。そこで、お金を払うので会おうなどと未成年者の金銭欲につけ込むような「甘言」を使って会う場所を決めた場合、「誘拐」となる可能性は否定できません。勿論、受託者である未成年者の年齢が高くなり判断力が高くなれば、「その生活環境」の範囲も広くなるので「誘拐」と解される可能性は低くなります。

しかし、パパ活(ママ活)の事案ではないですが、自殺や家出を希望する16歳や17歳の未成年者を連れまわしたとして未成年者誘拐で逮捕される事案が発生していることからもわかるように「誘拐」とならないと決めつけることはできません。保護者から警察に通報がなされ、未成年者と一緒にいるところを警察が発見した場合、警察から事情を聴かれる、場合によっては現行犯逮捕される可能性もあるので注意が必要です。

当事者が成年の場合、刑事罰はなくとも民事上の責任が生ずる

両当事者が成年(18歳以上の者)であれば、「未成年者誘拐」で罪に問われることはありません。また、仮に性的関係に金銭等の対価が支払われていたとしても刑罰はありません。売春防止法第3条で、「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。」と定めていますが、これには罰則がないからです。
しかし、民事上の責任となると話は別です。受託者もしくは委託者の配偶者から、損害賠償を請求される可能性があります。夫婦関係にある男女と不倫をすれば、不倫相手は不倫をされた配偶者に損害賠償金を支払わなくてはならないというのが原則だからです。

過去の裁判例においては、クラブの女性が「枕営業」として行った性行為は、もっぱら性欲解消のための性交渉であり、法的に保護されるべき夫婦関係を壊すものではないとして、賠償請求を否定したものが存在します(東京地裁平成26年4月14日判決・判例タイムズ1411号314頁)。この判決は、売春婦が客から対価をもらって性行為を行っても、それは性欲解消のために行われたものであり、法的に保護されるべき夫婦関係は壊さないと判断しています。この裁判例のように考えると、仮にパパ活(ママ活)で、性交渉に及んだとしても、金銭を対価とした性交渉ですから、売春婦との性交渉と同じであり損害賠償をする必要はないかもしれません。

しかし、このような判断をした裁判例は、現在のところ、この1件だけです。この裁判例の解説でも、今までの判例からして例外的なものであることが指摘されています。したがって、このような裁判例があるから損害賠償金を支払う必要はないと言い切ることはできません。

相手方が18歳未満の場合、性的関係は絶対に避けるべき

それでは、18歳未満の者(17歳までの者)を当事者とするパパ活(ママ活)において性的関係をもった場合はどうでしょうか。この場合は、各種の法律で刑事罰に問われる事になりますので、絶対に避けるべきです。
刑罰の重いものから順番に①児童福祉法違反、②児童買春児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、③各都道府県制定の青少年健全育成条例違反が想定されます。それぞれどのような場合に罪が成立するのか確認していきましょう。

18歳未満と性的関係を持ち、児童福祉法違反となる場合

児童福祉法第34条1項6号及び第60条1項は「児童に淫行(いんこう)をさせる行為」を禁止し、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は懲役と罰金を同時に科すと定めています。本条で保護されている「児童」とは「満十八歳に満たない者」(同法4条)つまり17歳までの者をいいます。そして、「淫行」とは、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為」(最高裁平成28年6月21日決定)と解釈されており、性交渉に限定はされていません。

したがって、性交渉ではない行為(手淫や口淫および素股並びに同性間の性行為等)も禁止されています。パパ活(ママ活)のような金銭を媒介として行われる性的関係(肉体関係)は「淫行」と解釈されて当然と言えます。もっとも、本条で処罰されるには、児童に淫行を「させる」ことが必要になります。この「させる」とは、「直接たると間接たるとを問わず、児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」と解釈されています。この「事実上の影響力を及ぼして」をあえて簡単に説明すると、“児童を支配して”と言い換えることができます。

例えば、教師と生徒の関係や雇い主と従業員の関係にあれば上下関係があるので事実上の影響力が認められやすくなります。パパ活(ママ活)の場合、このような関係にあることは少ないので、「させて」と認定されることは少ないです。しかし、出会い系サイトで出会った16歳の児童に対して、会ってすぐに性行為をし、別れることを希望した児童に対して、家族にばらすと脅すなどして複数回性行為をした事案で本罪の成立が認められたことがあります。パパ活(ママ活)は上下関係がないから、本罪は成立しないと言い切ることはできません。児童福祉法違反の定義などの解説はこちらをご覧ください。

18歳未満との性的関係が、児童買春、児童ポルノ違反となる場合

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律は、18歳に満たない者に対賞を与えて買春することを禁止し、違反した場合は5年以下の懲役又は300万円以下の罰金の刑を定めています(同法4条)。

ここで禁止される児童買春には、児童福祉法と同様に「性交」のみならず、「性交類似行為」や、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることも含まれています。パパ活(ママ活)のように金銭を媒介として性的関係を持つ場合、本罪によって処罰されることが多いですし、本罪の成立に異議をとなえるのは難しいと言えます。

未成年との性的関係が、各都道府県の健全育成条例違反となる場合

各都道府県には青少年の健全育成を推進する条例があります。このような条例の中で青少年との性行為やわいせつ行為を禁止している場合があります。これらの条例の多くは、青少年として18歳未満の者(17歳までの者)を保護の対象にしています。したがって、パパ活(ママ活)で18歳未満の者との間で性的な行為を行った場合、各都道府県の条例に違反するとして処罰される可能性があります。

例えば、大阪府の条例では、同条例39条で①財産上の利益等を供与するなどして、性行為またはわいせつな行為を行うこと、②専ら(もっぱら)性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと等を禁止しています。そして、罰則として2年以下の懲役又は100万円以下の罰金を定めています(第52条)。

福岡県にも青少年健全育成条例があります。福岡県の場合は、「何人も、青少年に対し、いん行(淫行)又はわいせつな行為をしてはならない。」(同条例31条1項)と定め、2年以下の懲役または100万円以下の罰金(同条例38条1項1号)に処するとしています。「いん行」(淫行)については、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうもの」(最高裁昭和60年10月23日大法廷判決、福岡県青少年保護育成条例違反被告事件)との判例があります。

このように大阪府も福岡県の場合も含めて健全育成条例では、売買春ではなくても(つまり対価を与えていなくても)18歳未満の者に性行為やわいせつな行為、淫行を行えば、条例違反に問われることがあるので注意が必要です。これらの健全育成条例は各都道府県で規定が異なりますので、各都道府県の条例内容を確認する必要があります。その上、これらの条例でもっとも注意が必要なのは、児童福祉法や児童買春・児童ポルノ禁止法とは異なり、児童の年齢を知らなくても処罰を免れないと規定されていることがあることです。過失がない場合は別ですが、安易なことをしないことが重要であると思われます。

このように見てみると、18歳に満たない者と性的関係を持つことはリスクが大きいと言えます。真摯な交際であるなら淫行等に該当しないと主張することも可能ですが、パパ活(ママ活)で出会って性的関係を持った場合、真摯な交際であると主張することは困難です。18歳に満たない者が受託者となる場合は、性的なあらゆる接触は持たないように気を付けるべきです。そして言うまでもないことですが、受託者が未成年である場合、分別のある大人としてパパ活(ママ活)の誘いに乗らないよう行動するのが、大人の務めであると思われます。

パパ活(ママ活)を行った未成年である受託者には刑事責任はない

ここまでは、委託者側(すなわちパパ・ママ側)がどのような法的責任を追及されることがあるのかを検討してきました。その一方で、受託者である未成年者がパパ活(ママ活)を行ったとしても刑罰の対象にはなりません。しかしパパ活(ママ活)を行った受託者が未成年の場合、警察に「補導」をされることがあります。

「補導」とは、警察が行う活動の1つで、「少年警察活動規則」によって定められています。同規則では、「自己又は他人の徳性を害する行為」を行っている少年を警察が発見した場合、「当該不良行為についての注意、その後の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い、必要に応じ、保護者(学校又は職場の関係者に連絡することが特に必要であると認めるときは、保護者及び当該関係者)に連絡するものとする。」(同規則14条)と定められています。
パパ活(ママ活)は、金銭を媒介として年長者と交際をする行為であり、自身の徳性を害する行為であることは明らかです。警察からの連絡で親や学校に発覚することも考えられます。安易なことを行わないように注意が必要です。

パパ活(ママ活)でトラブルになった場合には弁護士に相談すべき

安易な事を行わないことが、もちろん重要になりますが、トラブルになってしまった場合には、被害者との示談交渉が必要となります。
警察の捜査が始まる前に弁護士を通じて相手方と示談をすることで、刑事事件化を回避できる可能性があります。また、既に警察の捜査が始まった後であっても、示談交渉や警察・検察との折衝によって不起訴処分を獲得し、前科が付くのを避けられることがあります。万が一、家族がパパ活に関連する罪で逮捕された場合には、1日でも早く身柄を解放するために弁護士の迅速な弁護活動が必要不可欠です。

国家資格や教員免許を持っていた場合

国家資格を有する方がパパ活に関連する罪で捜査を受けたり逮捕され、その後に起訴されて前科が付いた場合には、その資格に関する法律の定めに従って懲戒処分を受ける可能性があります。

例えば、医師については、医師法7条1項、4条3号により、罰金以上の刑に処せられた場合には戒告、3年以上の医業の停止または免許の取消しの処分を受ける可能性があります。地方公務員の場合には、実刑に処せられると資格を失い失職することとなり、執行猶予が付いたとしても執行猶予期間が満了するまで資格を失います(地方公務員法38条)。罰金刑であったとしても、「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合(同82条)に該当するとして免職、停職、減給又は戒告の処分を受ける可能性があります。このように、国家資格を有する方に前科が付くと、懲戒処分によって大きな不利益を受ける可能性があります。そのような不利益を避けるためにも、早期の不起訴処分を獲得するために弁護士の力が必要です。

パパ活(ママ活)をしたとして脅されたら

このように、法的にも問題のあるパパ活(ママ活)ですが、このような点に目をつけた者が、買春などをしたことを理由にして恐喝をする事件が時折発生しています。
恐喝を行っている方も犯罪を行っているわけですので、弁護士等の専門家を間に入れて、毅然とした態度を示すことで恐喝が止まる場合もあります。そもそも違法性の疑われることをしないことが一番ですが、初犯の児童買春は罰金や執行猶予判決などが予想されますので、一人で抱え込むことなく、守秘義務のある法律専門家に相談の上、適切に行動することが大事です。

まとめ

児童買春が援助交際と名前を変え、今はパパ活(ママ活)と名前を変えています。性的関係を持たなければ刑事的な責任を問われることは少ないと思われますが、常識のある大人として、未成年者からのパパ活(ママ活)の誘いにはのらないことが大事かと思います。

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