弁護士のセカンドオピニオンとは何か
セカンドオピニオンとは、ある専門家に相談または依頼している案件について、別の専門家に意見を聞くことをいいます。通常、医療業界で多く聞く言葉だと思われますが、弁護士によるセカンドオピニオンも勿論可能です。
例えば、現在依頼している弁護士に対し、不安や不満があったり、現在の弁護方針で大丈夫なのかわからなかったり、または他の弁護士の意見も聞きたかったりした場合、一体どうすれば良いのでしょう。その際に活用できるのが、セカンドオピニオンです。
要は、現在依頼している弁護士とはまた別の弁護士の意見を聞くことです。弁護士といっても千差万別であり、どの弁護士に相談しても意見が同じということはなく、その弁護士の経験や知識によって意見が変わることが十分考えられます。仮に意見が同じであったとしても、弁護士との相性や案件に対する方針も弁護士によって異なるかもしれません。以上の理由から、弁護士によるセカンドオピニオンの必要性は十分にあると考えられます。
弁護士にセカンドオピニオンを依頼するにはどうすれば良いのか
セカンドオピニオンを承っている弁護士にご相談ください。現在依頼している、または依頼しようと考えている弁護士の許可や確認を取る必要はなく、まずはセカンドオピニオンを受けた後、現弁護士への対応を検討すれば良いでしょう。
当事務所でも刑事事件や民事事件など法的問題のセカンドオピニオンを承っているので、お気軽にご相談ください。案件によっては、資料や現在依頼している弁護士とのやり取りの記録をこちらで検証させていただく必要があります。最終的に当事務所にご依頼いただかなかった場合でも問題なく、ご相談者様の納得のいく結果となれば幸いです。
セカンドオピニオンの種類
セカンドオピニオンには、大別して以下のような種類があります。
1. 結果・結論が異なる場合
刑事事件でいえば、逮捕される・されない、保釈できる・できない、自首すべき・すべきでない、などの捜査や身柄に関わる内容の結論が異なる場合があります。また、結果としての、有罪となる可能性が高い・低い(無罪となる可能性がない・ある)、罰金刑を獲得できる可能性がある・ない、執行猶予を獲得できる可能性がある・ない、減刑できる可能性がある・ない等の、その後の生活や人生を大きく左右しうる結論部分から異なるという場合があります。
2. 方法・進め方が異なる場合
結論が同じであるとしても、そのための方法や進め方が異なるという場合もあります。たとえば、上記の保釈でいえば、結論としては「保釈できる」という同じ意見であるとしても、「いつ」保釈をするのか、「どのような」証拠を収集するのか、「どのように」保釈のための意見を展開するのか等の方法や進め方が異なる場合があります。
別の例として、例えば、和解や示談をする場合にも、「いつ」和解の打診をするのか、「どのような」コミュニケーション方法で相手の心を解きほぐすのか、「どのように」和解交渉を進めるのか、等様々な点で、各弁護士の経験に応じて内容の異なるアドバイスとなる場合があります。
3. 弁護士の説明の仕方が異なる場合
結論や進め方が同じであるとしても、異なる弁護士であればその説明方法も当然異なります。弁護士も人間であり、説明の仕方や具体例の用い方などにはもちろん個人差があります。結論や方法が同じであるとしても、自分が会話しやすい弁護士や、遠慮なく質問をしやすい弁護士に依頼した方がより納得感を得やすい場合もあるので、比較対象として複数の弁護士に相談することは重要といえます。
弁護士にセカンドオピニオンを依頼するメリット・デメリット
メリット
- 現在依頼している弁護士の意見と同様であった場合、安心してその弁護士に依頼することができる。
- 現在依頼している弁護士の意見と異なった場合、依頼するかどうか、今後どうするか等について慎重に考えることができる。
- セカンドオピニオンの結果を現在依頼している弁護士に伝え、今後の参考にしてもらうことができる。
- 複数の弁護士に同じ話を聞いてもらうことで、各弁護士と自分との相性や信頼関係の築きやすさが違うこと等に気付き、現在依頼している弁護士に要望を出しやすくなったり、自分が話しやすいと思った弁護士に変更できたりする等、弁護士とより良好な関係を築くことができる。
デメリット
- セカンドオピニオンを受けたことを現在依頼している弁護士に伝えた場合、現在の弁護士との関係が悪くなる可能性がある。
- コストが発生する可能性がある。
当事務所のセカンドオピニオン事例
当事務所での弁護士によるセカンドオピニオンの事例を一部ご紹介いたします。
ケース①国選弁護士からの切り替えを検討
窃盗事件で逮捕された方のお母様からのご相談。現在国選弁護人がついているが、息子の状況をあまり教えてくれず、このままで良いのか、というご相談。当事務所側で現弁護人の状況を確認したところ、「来週になったら息子さんのアルバイト代が振り込まれるので、その後に示談を開始します。」と言われたとのこと。
当事務所においては、「通常は、早期の示談成立を目指し、母親に対し、お金を用意できないか聞き、すぐにでも示談交渉に着手します。少なくとも我々の事務所ではそうします。」と回答した。ご相談者様は弊所と契約し、弁護人が交代した。すぐに母親から示談金原資を預かり、示談交渉に着手、結果的に示談が成立した。
ケース②私選弁護士の進め方に不安がある
詐欺等3件の容疑で在宅捜査が進んでいた方からのご相談。現在依頼している弁護人には実刑になると言われている。それはどうにか避けたく、自分で調べて反省文を書く等しているが、依頼している弁護人は反省文を見てくれようとしない。警察に対しても何の働きかけもしてくれていない様子であった。
当事務所側にて具体的に事案を聞いたところ、相談者が最も心配していた1件については起訴される可能性はあるものの、確実に実刑になるとはいえない事案であったため、その旨説明した。被害者が公共団体であったため、示談はできないものの、反省文や贖罪寄付等で起訴猶予を一応の目標にすることも可能であったことから、もし自分が弁護人であったら反省文は添削すること、贖罪寄付についても希望があれば手続を代行する旨を回答した。相談者は当事務所と契約し、弁護人が交代した。
その後、反省文を添削しつつ、警察と定期的に連絡をとり、感触をつかむようにした。警察の話と相談者の話を照らし合わせたところ、相談者が最も心配していた上記1件以外の2件のうち1件の容疑については被疑者において身に覚えのないもの、1件については嫌疑不十分と言いうるものであることが判明した。そこで、取調べの対応方法なども細かく指導。2件は不送致、1件は不起訴で終結。結果的に実刑にならないどころか、3件とも起訴されなかった。
ケース③示談交渉に不安を覚え相談
痴漢事件で、本人からのご相談。今ついている弁護人に示談交渉をお願いしているが、事件からしばらく経つのに示談がまとまらない。弁護人を変更したら示談がまとまるかとの相談。現弁護人の活動を相談者に確認したところ、既に被害者と連絡を取り、示談を申し入れているが、被害者の都合により、直接弁護人と会って話をするのは少し待ってほしいと言われている状況であった。
「最終的に示談を受け入れるかどうかは、被害者が決めることなので、被害者を急かさないことが重要。今は、弁護士を変えずもう少し様子を見るべきである。」と回答した。
ケース④執行猶予判決を獲得したい
特殊詐欺事件で、起訴後、婚約者からの相談。管轄が地方の裁判所で、現地の弁護人を私選でつけているが、保釈も示談も上手くいっておらず、また、どうしても執行猶予を獲得したいので、力を貸してほしいとのご相談。
完全に弁護人を切り替えると接見が難しくなり、不都合が生じる事案であったため、現弁護人との契約はそのままとし、当事務所の弁護士を追加する形で共同受任。引き続き、接見や現地での書類の授受などは現弁護人に担当していただき、保釈や示談の段取りは当事務所の弁護士が指導し、弁論要旨や保釈請求書など主要な書面の起案も当事務所の弁護士で担当した。先にご依頼されていた弁護人と密に連絡を取って連携し、上手く役割分担したことで、保釈許可・示談成立のみならず、最終的に執行猶予付き判決も獲得した。