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息子・娘が事件に巻き込まれた-少年事件の手続きを解説

このページをお読みの方は、息子さんや娘さんが刑事事件の当事者となり、不安の中にいらっしゃる方がほとんどではないでしょうか。逮捕されたお子さんを一刻も早く解放したり、処分を避けたりするためには、弁護士の力が必要です。

まずは中村国際刑事法律事務所がどのようなポリシーで少年事件の弁護活動を行っているかをご紹介します。少年事件では、自分のしたことについて、どこまで深く自分で考え、その考えを調査官や裁判官に伝えられるかが処分を左右します。少年一人では、深い振り返りはできませんから、弁護士の助けが必要です。ですが、弁護士が答えを教えるだけでは、調査官や裁判官に見抜かれてしまいます。

私たちは、答えを教えるのではなく、とにかく少年との面会を繰り返して一緒に考えます。そもそも振り返りに「答え」などありません。私たちはただの弁護士で、先生ではありません。多数の少年事件を扱って得た経験に基づき、考えるヒントは出しますが、弁護士が「指導する」など、おこがましい話です。付添人は、少年との信頼関係なしには絶対にできない役割だと思っています。

初めて面会したその日から、私たちは少年の絶対的な味方です。私たちは、少年の人生を左右する立場として、少年事件に感情移入します。嬉しかったとき、悔しかったとき、今まで何度も少年と一緒に泣きました。1人1人の少年への熱意・思い入れは誰にも負けない自信があります。その結果、深い考えを少年から引き出すことができ、自分だからこの結果を得られたと思う事件も多数あります。

私たち自身が少年から学ぶこともたくさんあります。コミュニケーションに長けていて友達がたくさんいる子がいます。そんな方に会うたびにそのコツを聞いています。家族ととても仲が良い子もいます。そのたびに自分ももっと家族を大事にしようと気付かされます。若さゆえの純粋な考えに触れて、はっとすることもあります。

少年の皆さんから、「温室育ちのお前になにがわかるんだ」などと思われず、信頼を寄せていただけるのは、自分が指導する立場だなどと決して考えず、ちょっと長く生きているだけ、という思いを持って向き合っているからなのかもしれません。そんな皆さんを少年院に入れないためにはどうすればいいか、不処分となるためになにができるか、日々考え、経験を積みながら付添人活動にあたっています。

少年事件に関する感謝の声はこちらをご覧ください。

少年事件とは

成人の刑事事件は、罪を犯した個人に対して刑罰を科すことを目的とした刑事手続きです。犯罪の成否に関する証拠が収集される捜査段階を経て、公開の法廷において犯罪事実があったかが明らかにされる公判(裁判)手続きが行われます。これに対して、少年事件は非行をした少年や罪を犯すおそれのある少年等の保護を目的とした手続きです。

少年事件では犯罪等の証拠が集められる捜査段階の後家庭裁判所に事件が送致され、少年の生育環境などについて調査官による調査等を経て、家庭裁判所裁判官によって非公開の審判廷において審判がなされます。審判での処分はあくまで少年の保護を目的としたものであって、刑罰ではありません。このため保護観察処分や少年院送致処分を受けても、それは前科にはなりません(逮捕された事実が前歴として残るだけで、前科にはなりません)。

少年の保護を目的とした少年事件においてはどのような非行を犯したのか(あるいは犯していないのか)という点だけでなく、少年自身の生育環境も審判での最重要の判断要素となります。例えば、少年が家に寄り付かないといった事実やその原因、解決策の有無が、保護観察処分と少年院送致処分いずれを選択するかの重要な判断要素となります。

上記のような少年事件の手続きにおいて、弁護士は、捜査段階においては弁護人として、家庭裁判所に送られてからの段階では付添人として、少年を助けることになります。そこでは、非行について自分がやった以上の罪を着せられないように取調べ対応をアドバイスしたり、不当な捜査に対して抗議したり、少年にとって有利な事情を集めたりする活動をするとともに、少年の生育環境について解決すべき点を分析し、その解決策を考えて実施することや、調査官では拾いきれない少年の成長、進歩を記録に残し、調査官や裁判官に対して意見をして少年に対する適切な処分を導くように働きかける活動を行います。

少年事件の弁護に必要な弁護士の能力

少年事件は、下記に詳しく述べるように、ある時点の手続きまでは成人の刑事手続と同様です。その後の手続きも、成人の刑事手続と共通点が多くあります。そのため、少年事件の弁護士を探すうえでその弁護士が刑事事件の豊富な経験・実績を有していることは大切です。

更に大切なのは、少年事件の手続きの特徴を理解し、捜査機関や裁判官と対立するだけでなく時に協働する柔軟性が必要です。また、少年や両親に対して、時にやさしく時にきびしく、最終的な処分を軽減するために必要な考え方や努力について指南できる力も必要です。

少年が非行を行ってしまう背景には、必ず何らかの問題があります。それは少年の特性かもしれませんし、家庭環境に背景があるかもしれません。その問題の改善なくして、少年事件で処分を回避したり軽減したりすることは絶対にできません。ですから、少年や両親と対話をし、非行の要因をよく考えて、問題の改善が必要な場合には適切な言葉で少年や家族に働きかけることのできる力が少年事件の弁護には必要なのです。以下、少年事件の手続と弁護士ができることについて、詳しく解説します。

少年事件に関するコラムはこちらのサイトにて掲載しております。

少年事件における初動弁護活動の重要性(逮捕・勾留と家裁送致)

少年事件であっても、成人事件と同様、捜査段階では基本的に刑事訴訟法が適用されます(40条)。犯罪少年の事件では、成人と同様、捜査機関が捜査することになり、少年は被疑者として逮捕・勾留されることになります。

しかしながら、少年法では、勾留に際して、成人の場合とは異なる規定が設けられており、「検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできず(43条3項)、裁判官においても、勾留状は、やむを得ない場合でなければ、少年に対して、これを発することはできない(48条1項)」と規定されています。実務的には、少年であっても成人と同様に捜査機関が安易に逮捕・勾留することは珍しくありませんから、そのような場合には弁護士が迅速な身柄解放活動を行うことで在宅捜査に切り替えられる可能性があります。

勾留場所についても、少年鑑別所とすることができ(同条2項)、少年を警察留置施設で勾留する場合でも、成人とは分離しなければならない(49条3項)とされています。刑事事件を起こした少年は、事案の重さなどにより、警察に逮捕されることがあります。事件の内容が軽微である場合には、逮捕されずに捜査を行い、あるいは、逮捕後に勾留されずにそのまますぐに家庭裁判所へ送致されます。この場合、逮捕後48時間以内に家裁送致となります。

一方、事件の内容が重大であり、罪証隠滅や逃亡を防ぎつつ、捜査にある程度時間を要する場合には、少年は逮捕後に検察庁に送られ(検察庁送致)、検察官が「勾留」という身柄拘束の延長措置(最長20日)を24時間以内に裁判官に請求し、裁判官の判断により勾留されることがあります(当初は10日間、延長されると最長20日間)。勾留満期には事件は家庭裁判所に送致されます。

ですから、身柄の拘束やその延長を避けるためには、逮捕後の48時間 + 24時間の72時間が非常に重要な初動となります。この間に弁護士を依頼し、不必要な長期拘束を避ける必要があるのです。勾留が決定された後では、早期釈放は難しく、また、身柄拘束されたまま家裁送致となると、その後、観護措置がとられて少年鑑別所に収容される可能性が非常に高くなってしまいます。観護措置は通常1カ月間の収容を伴いますので(最長2カ月)、身柄の拘束は非常に長くなります。

少年事件における家庭裁判所送致後の各種調査

刑事事件を起こしたすべての少年は、家庭裁判所に送られ、その処分に委ねられることになります(全件送致主義)。家庭裁判所に送致されてきた少年を調査するにあたり、本人の心身の安定が必要と判断され、専門家による資質等の調査の必要性が認められる場合には少年を少年鑑別所に収容する措置(最長2カ月)がとられます。

少年鑑別所では、専門家(鑑別技官)による少年の心身状態の細かい分析が行われます。具体的には、少年に対して面接や各種心理検査を行い、知能や性格等の資質上の特徴、非行に至った原因、今後の立ち直りに向けた処遇上の指針等を明らかにしていきます。また、この間、家庭裁判所調査官による調査(資質や家庭環境など)も並行して行われます。

家庭裁判所調査官は、送致された少年について、本人や関係者との面接などをはじめとする綿密な調査を行い、最適な保護処分を決定するうえでの資料を作成します。具体的には、調査官は、少年と面接を行い、少年に対して、家庭および保護者の関係、境遇、経歴、教育の程度および状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況などの聞き取りを行います。また、家族及び関係者に対して、経歴、教育の程度、性行および遺伝関係等、少年のプライバシーに関わるような幅広い聞き取りを行っていきます。

調査官は、調査を終了した段階で、少年の最終的な処分についての意見書を裁判官に提出します。裁判官はこれを重要視することから、保護処分決定における調査官の影響力はたいへん強いものになります。

少年事件の付添人(弁護士)活動

面会と審判準備

観護措置期間は4週間であり、実務上その期間内に処分が言い渡されます。通常、家裁送致日から3週目の後半から4週目の前半に審判期日が入ることになります。したがって、家裁送致から審判までの間に付添人として活動できるのはわずか3週間程度であり、成人の刑事事件と比較して非常に短いです。

付添人は、少年と面会を繰り返すことで、短期間で信頼関係を構築し、被害者との示談、裁判官や調査官との打ち合わせを行うことになります。それに並行して、少年鑑別所における鑑別技官との面会や裁判官との協議を行うなどして、付添人としての意見を審判の結果に反映するべく説得をしています。

逆に言えば、家庭裁判所に送致される前の逮捕・勾留段階から弁護士をつけることで、少年や両親と対話し、環境を調整する時間をより長く確保することができます。家庭裁判所での調査を見据え、調査官により評価を受けられるように。少年の内省を深めたり、今後の具体的な再犯防止策を構築したりすることができるのです。

審判期日における付添人の活動

審判期日においては、付添人は少年に対し、裁判官に告げて質問することができます。付添人からの質問については、事前に十分に少年と打ち合わせた上で期日に臨みます。裁判官は、保護者にも質問をします。家庭環境やこれまでの少年の生活態度、さらに、保護監督状況などについて質問されることが多いのです。付添人は、その準備として、十分な打ち合わせを保護者の方との間でも進めます。

審判期日において、付添人自身は、審判において裁判官の許可を得て意見を述べることができます。この付添人意見書は、少年の処分を左右する非常に重要なものです。それまでの付添人の活動の成果を意見書に盛り込み、家庭裁判所調査官とは別の視点で少年の要保護性について意見を述べることで、裁判官に多角的な観点から適正に処分を決定してもらうことが出来るのです。

弁護士は、少年に対する処分が過酷なものとならないように、家庭環境の整備や学校復帰に向けた環境整備などに関し、積極的に活動していきます。また、鑑別技官や調査官の処分に与える影響力は非常に大きいので、調査段階において、鑑別技官や調査官とコミュニケーションを取ります。弁護士は鑑別技官や調査官と頻繁に連絡を取り、家庭環境の現状等を報告し、彼らの心証形成に影響を与えていきます。特に、調査官は、裁判官に少年の処遇に関する意見書を提出するので、弁護士の意見を調査官にしっかりと伝えるため、調査官が意見書を裁判官に出す前に、弁護士が調査官に意見書を出すこともあります。

少年事件の学校への復帰に向けた環境調整

少年が何らかの事件で逮捕された場合、警察から少年が所属する学校に対して当該事件に関する連絡が行くことがあります。これは、警察・学校相互連絡制度によるものです。この制度によって、少年の事件が発覚した場合、それまで少年が所属していた学校は、事件の軽重にもよりますが、少年に対して退学などの重い処分を下す可能性が高くなります。

そんな時に、弁護士は、学校側と交渉し、少年がそれまで所属していた学校に復帰できるように環境調整を行っていきます。具体的には、少年の事件の性質や家庭裁判所における最終的な処分の見通しなどを学校側に伝えることで、学校側の過剰な反応を抑制していきます。そして、弁護士は、校長や担任と面談し、少年を学校で積極的に受け入れるよう要請していきます。学校側の協力を求められる場合には、校長や担任に受け入れる旨の上申書を書いてもらうなどし、裁判所に提出することもあります。このようにして、弁護士は少年の社会復帰を学校という環境面からも支援していきます。

もっとも、このような活動をしても、少年が退学処分を受けてしまうことがあります。そのような場合には、弁護士が少年のために新しい学校を探すことになります。基本的には、通信制の学校になることが多いとは思いますが、少年の性格等を考慮し、少年にあった学校で、転入できる可能性が高い学校を弁護士がアドバイスしていきます。最終的に転入する学校を決定していただくのは保護者の方になりますが、学校を決める際の指針については、弁護士からも提示させていただきます。

通信制の学校については、学生一人一人のペースに合わせてくれたり、学校での日常を尊重した融通の効く教育システムを取ってくれたりするところも多く存在するため、事件後に少年が勉強を再開することが苦になりにくいです。また、登校する日数についても、週1日から週5日まで自由に選べる形態を取っている学校も多いので、少年の生活リズムに合わせた勉強環境を構築することができます。

少年事件での家庭裁判所裁判官による審判及び処分決定

家庭裁判所の裁判官は、調査官の作成した資料などをもとに送致されてきた少年に最適な保護処分の検討を行い、必要と認められる場合に審判を開き、最終的な判断を下します。審判は1回のみで終わることもありますが、場合によっては中間審判というかたちにして1回の審判で結論を伝えず、2回目の審判まで本人あるいは保護者などの行状を見極める期間が設けられることがあります。

なお、審判に至るまでの過程(調査段階)で少年本人が十分に反省していると認められたり、そもそも犯罪の事実がないと判明した場合などには、審判を行う必要がないという判断(審判不開始決定)が下されます。弁護士は、付添人として審判に立ち会います。裁判官、書記官、調査官、付添人、少年、少年の保護者が審判に出席します。ただ、家庭裁判所が求めれば、保護観察官、保護司、少年鑑別所の法務技官及び教官も出席することができますし、裁判長の許可があれば、保護者以外の少年の親族や少年の学校の教員なども出席することができます。

審判手続の進行は、一般的には、裁判長において審判の開始を宣言した上、次の順序、内容で行われています。

  1. 人定質問
  2. 黙秘権の告知
  3. 審判に付すべき事由の要旨の告知並びに少年及び付添人の陳述の聴取
  4. 非行事実の審理
  5. 少年の生活環境等の要保護性に関する事実の審理
  6. 最終的な処分決定の告知
  7. 決定の趣旨の説明および抗告できることの告知

上記④、⑤では、一般的に裁判官が少年に対して質問する形で審理が進んで行きます。少年審判は、前述のとおり、少年が手続の内容をよく理解できるように、懇切を旨として行い、和やかな雰囲気の中で、少年や保護者等に信頼感を持たせるように行わなければならないとされていますから、刑事裁判に比べて、裁判官の少年に対する対応は柔らかいものとなります。

また、裁判官からの質問が終わった後には、付添人と調査官からも質問が行われることが多く、少年に対して指導的な言葉が投げられることも多々あります。少年審判は、少年の非行事実を裁く場という意味だけでなく、少年に対して教育する場としての意味も有するため、このような審理方法がとられているのです。

少年に対する保護処分

審判において主として示される判断内容はおおよそ下記の4種類です。いずれの処分となるかは、付添人として審判に参加する弁護士の影響力も大きいです。弁護士は、審判において、付添人意見書という意見書を提出します。付添人意見書では、少年の非行事実を争わない事件であれば、主に少年の非行性が減退していることや少年の生活環境が非行時よりも改善されていることなどを主張していくことになります。

① 不処分

家庭裁判所からは少年に対して何も課さないとするものです。付添人や調査官からの働きかけや、審判における裁判官からの説諭などによって、少年とその保護者などが自力で事件からの立ち直りを果たせると判断された場合などに下される決定です。

② 保護観察処分

主として在宅で少年の立ち直りを図る措置です。施設に収容するような強い制約を課さずとも更生の見込みが認められる場合に決定されます。保護観察に付された少年は、定められた期間中に専門家(保護観察官)と地元の篤志家(保護司)による監督・指導を受けながら自己の改善を果たすことを求められます。経過が良好な場合は予定より早く保護観察が終了することもある一方、悪い場合には改めて少年院への収容が検討されることになります。

③ 少年院送致

事件が重大であり、少年を今の生活環境から一度離脱させて集中的な教育を施さなければ改善更生が難しい、と認められた場合に下される決定です。なお、少年院は法務教官という専門職を主体とした指導が行われる教育施設であり、「刑務所」ではありません。

④ 検察官逆送

事件があまりに重大な場合に、少年が成人と同じ扱いを受けるべきと判断するものです。この判断が下されると、少年は検察官のもとに送られ成人と同様の刑事手続に服することになります。この判断は調査段階(審判が行われる前)に行われる場合もあります。

以上、見てきたように、少年事件における弁護士(付添人)の活動は少年とその家族にとって非常に重要なものとなります。

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