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関税法違反の事件は弁護士へご相談ください

海外旅行を楽しんだ際に何気なく購入したお土産や、頼まれたため何となく運んでいた荷物、安価な掘り出し物を見つけたと思ってネットで輸入した商品が実は法律で輸入が制限されているものだった場合、どうなってしまうのでしょうか。

関税法は海外への輸出物や日本への輸入物について規制していますが、どのような物が対象となっているのでしょうか。ここでは関税法の規制について条文を挙げながら紹介しつつ、関税法違反で逮捕された場合やその後の弁護活動について弁護士・坂本一誠が解説いたします。

関税法違反とは

関税法は、関税の確定・納付・徴収・還付や、貨物の輸出入についての税関手続の適正な処理を図るため(関税法1条)、輸出入に関する様々な事項について規定しています。以下では関税法で規制対象となっているものについて紹介します。

1.輸出に関する規制

輸出が禁止されている物品として、覚醒剤や大麻などの不正薬物、児童ポルノ、知的財産権侵害品などが挙げられます(関税法69条の2第1項各号)。

    ◆輸入が規制されているもの

  • 1号 麻薬、向精神薬、大麻、アヘン、けしがら、覚醒剤
  • 2号 児童ポルノ
  • 3号 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権を侵害する物品
  • 4号 不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで又は第10号から第12号までに掲げる行為を組成する物品

関税法69条の2第1項各号の規定に反した場合、関税法108条の4による刑罰が科せられます。具体的な処罰内容は以下のとおりです。

違反事由 処罰内容
1号違反 10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれの併科(108条の4第1項)
2~4号違反 10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれの併科(108条の4第2項)
未遂 1号違反、2~4号違反と同様(108条の4第3項)
1号違反(予備) 5年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれの併科(108条の4第4項)
2号違反(予備) 5年以下の懲役若しくは5000万円以下の罰金、又はこれの併科(108条の4第5項)

2.輸入に関する規制

輸入に関しては覚醒剤や大麻などの不正薬物や知的財産権侵害物品に加え、爆発物、けん銃、火薬類、貨幣、公安又は風俗を害すべき書籍、金地金も規制対象となっています(関税法69条の11第1項各号)。
特に、不正薬物の押収量は年1トンを超えており、深刻な状況となっています。

    ◆輸出が規制されているもの

  • 1号 麻薬、向精神薬、大麻、アヘン、けしがら、覚醒剤、アヘン吸煙具
  • 1号の2 指定薬物(医療等の用途に供するために輸入するものを除く)
  • 2号 けん銃、小銃、機関銃、砲、これらの銃砲弾及びけん銃部品
  • 3号 爆発物
  • 4号 火薬類
  • 5号 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律第2条第3項に規定する特定物質
  • 5号の2 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第20項に規定する一種病原体等及び同条第21項に規定する二種病原体等
  • 6号 貨幣、紙幣、銀行券、印紙、郵便切手又は有価証券の偽造品、変造品、模造品及び偽造カード(生カードを含む)
  • 7号 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
  • 8号 児童ポルノ
  • 9号 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
  • 10号 不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで又は第10号から第12号までに掲げる行為を組成する物品

関税法69条の11第1項各号に違反すると、関税法109条による刑罰が科せられます。具体的な処罰内容は以下の通りです。

違反事由 処罰内容
1号~6号違反 10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれの併科(109条1項)
7号~9号違反 10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれの併科(109条2項)
未遂 1号~6号違反、7号~9号違反と同様(109条3項)
1号~6号違反(予備) 5年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれの併科(109条4項)
7号~9号違反(予備) 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれの併科(109条5項)

このように関税法に違反した場合の刑罰は、違反した項目により異なるものの、いずれも長期間にわたる懲役刑もしくは多額の罰金、又はその両方が科せられることとなるためかなり重いといえます。そのため、関税法違反は重大な犯罪にあたります。
 

関税法違反で問題となる薬物の輸入

上記で説明したように、覚醒剤や大麻などの不正薬物を輸入した場合には、関税法69条の11第1項1号違反となり、関税法における輸入規制の中でも最も重い刑罰の対象となります。
不正薬物でない医薬品や化粧品であっても、個人で輸入できる量は限られていますので数量によっては関税法違反に当たる可能性があります。

例えば、化粧品は一品目につき24個以内、使い捨てコンタクトレンズは2か月分以内でなければ輸入することができません。海外旅行のお土産として化粧品を購入する方は多いと思いますが、このような規制が存在することに注意が必要です。また、違法ではないと称して販売されているハーブやアロマオイル、バスソルトなどの商品の中には「麻薬」や「指定薬物」にあたり、輸入が禁止されているものがありますのでご注意ください。

関税法違反と金

金(地金)は、単に所持するだけでは違法にはなりませんが、関税法69条の11第1項6号により輸入が制限されているため輸入した場合は「密輸」にあたり、処罰対象となります。
不正薬物などと比べて金そのものには危険性がないため、金が「密輸」されることの何が問題なのかピンと来ないかもしれません。何故、金の密輸は処罰対象になるのでしょうか。

実は、金は輸入時に消費税を納付する必要があります。しかし、密輸をすることで消費税の納付を免れることができるのです。例えば、本体価格500万円/kgの金地金5kg(2500万円)を輸入する場合、本来であれば輸入時に税関で250万円(2500万円×10%)の消費税を納付する必要があります。しかし、その消費税の納付をせずに持ち込みを行い、市内の金買取業者に消費税込みの価格(2750万円)で売れば、差額の250万円を利益として得ることができるのです。このような事態の発生を防止するために、関税法は厳しい処罰規定を設けて金の輸入を制限しています。

関税法違反と商標法違反

「商標」について、商標法では次のように定義されています。

商標法2条
1項 この法律で「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。
1号 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
2号 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

つまり「商標」とは、スポーツメーカーやブランドのロゴ、お店の商品の名前やデザイン、利用するサービスにつけられた名称等をいいます。そして、商標や正規の商品を模して作られた偽物(いわゆるパチモン)の輸出入は、その行為一つで関税法違反と商標法違反の二つの犯罪が成立します(観念的競合、最判昭和58年9月29日刑集37巻7号1110頁)。

商標法違反事件では商標・商品・役務の類似が問題となります。類似しているか否かの判断にあたっては商品・役務の場合は、取引の実情を考慮し、標章を付けたら出所の混同が生じるかにより判断します。商標の場合は、商標の見た目・読み方・一般的な印象の類似性に加え、取引の実情を考慮して総合的に出所混同の有無を取引者や一般人が商品購入時に通常支払うであろう注意の程度を基準として判断します。その結果、商標権侵害があったと認められる場合は、商標法78条により10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこの両方が科せられます。

関税法違反については商品等の輸出は関税法69条の2第1項3号に違反、輸入は関税法69条の11第1項9号又は同項9号の2に違反することになり、上述の刑罰の対象となります。そして観念的競合のため、成立した犯罪のうち重い方の罰が適用されます(刑法54条1項)。

関税法違反で逮捕されたら

関税法違反によって逮捕された場合、警察は引き続き身柄拘束をする必要があるかどうかを判断します。身柄拘束の必要はないと判断した場合、被疑者を直ちに釈放しますが、引き続き身柄拘束をする必要があると判断した場合、被疑者の身柄拘束のときから48時間以内に被疑者を検察へ送致する手続きをとります(刑事訴訟法204条1項)。

送致された場合、検察官は被疑者に弁明の機会を与え、身柄拘束の必要が無いと判断すれば直ちに被疑者を釈放しますが、引き続き身柄拘束の必要があると判断した場合には被疑者を受け取ったときから24時間以内(被疑者が逮捕されたときから72時間以内)に裁判官に対して勾留請求を行います(刑事訴訟法205条1項)。勾留とは、罪を犯した疑いのある者を刑事裁判にかけるために刑事施設に身柄拘束することをいいます。

上記請求を受けた裁判官は被疑者に対して勾留質問を行い、勾留の当否を判断します。捜査の上で身柄拘束が必要だと判断した場合は勾留決定をします。被疑者の勾留は原則10日間(刑事訴訟法208条1項)、さらにやむを得ない事情がある場合は最大10日間延長した20日間の拘束を認めます(同条2項)。
この勾留期間内に検察官は関税法違反の事実について起訴するか否かを判断します。ここで起訴されれば刑事裁判が開かれ、裁判所が法廷で審理をします。

このように刑事事件では逮捕、勾留、起訴と、短い期間で刑事手続がどんどん進行していきます。したがって、少しでも早い段階で弁護士が手続きに関与することが重要です。中村国際刑事法律事務所では弁護士の携帯電話の番号を依頼者の方にお教えしていますので、何か不安があればいつでも弁護士に相談することができます。もちろんご本人だけでなく、ご家族の方が弁護士にご相談いただくことも可能です。

関税法違反の弁護活動のポイント

関税法違反事件の事実について争いがない場合は被告人に有利になる情状事実を作出するための活動を行い、不起訴処分を目指します。
また、捜査の特徴として、逮捕前や逮捕時に輸入物品の捜索及び差押えがなされることが多いです。そこで、弁護士は捜索差押そのものや捜索差押の方法に違法性がないかどうかを検証します。違法性があった場合にはこれを主張することで不起訴となる可能性が高まります。

なお、関税法違反、商標法違反事件は故意犯です。そのため、ブランドの偽物と知らずに海外で購入した商品を日本で販売した場合には故意がない旨主張し、不起訴処分を勝ち取ることが最大の目標となります。仮に起訴された場合は、被告人にとって有利な事情、たとえば犯行の手口・同期・被害額、被告人の役割、示談が成立している等の事情を裁判官に示し、刑が減軽されるよう弁護活動していくことがポイントです。

まとめ

新型コロナウイルスの流行も落ち着き、これから海外旅行をする方も多いでしょう。しかし、本記事でご説明したとおり、薬物だけでなく化粧品や医薬品の輸入も関税法違反となり得ることに注意が必要です。
規制対象が多岐にわたることや一見それ自体を所持しているだけでは違法とは思いにくい事項についても規定されているため、関税法違反はあなたが思っているよりも身近な犯罪かもしれません。まずは関税法で問題となる行為を起こさないことが重要です。そして、万が一関税法違反で逮捕されてしまった場合には少しでも早く弁護士にご相談ください。

中村国際刑事法律事務所では、休日・祝日も24時間無料相談を受付しております。弁護士はあなたの味方です。お気軽にご相談ください。

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