ある日突然、身近な家族が逮捕されてしまったら、「会えるのか」「いつ解放されるのか」「今後どうなってしまうのか」などと様々な心配が生じます。あるいは、逮捕されるような犯罪に心当たりのある方は、「逮捕されたら会社(学校)はどうなるのか」などの不安も拭えないかと思います。
罪を疑われて逮捕された場合、1日でも早く身体拘束を解くためには、弁護士による迅速かつ的確な弁護活動が必要不可欠です。
今回は、逮捕された場合の流れや、逮捕時に弁護士ができることなどについて、弁護士・坂本一誠が解説します。
逮捕とは
逮捕とは、被疑者の身体を強制的に拘束し、留置施設に連行し、そこに留め置くことです。
逮捕後、72時間以内に身柄を解放されない場合、その後10日間勾留されてしまうケースが多く、その間、会社や学校等は休まざるを得ません。
逮捕後すぐ弁護士に連絡するべき4つの理由
- 早期接見が可能
- 早期の取調べアドバイスが可能
- 早期の身柄解放への着手が可能
- 家族への連絡が可能
既に述べた通り、逮捕から勾留までの72時間については、原則として弁護士以外の接見が認められません。これに対し、弁護士であれば、逮捕されてから勾留が決定するまでの間に捕まったご本人に会い、事件について詳細な話を聞き、取調べへのアドバイスを行い、今後の方針について話し合うことができます。
また、家族等一般の方々の場合、面会できたとしても、例えば平日1日1組まで、1回15分程度など、多くの制限があります。これに対し、弁護士の接見には、時間に制限がないため、夜間や土日でも面会ができます。弁護士が迅速に接見し、逮捕されたご本人からできるだけ早く事件の詳細を丁寧に聞き出して、取調べに対処する方法や今後の方針を適切に決定することで、早期の身柄解放を目指し、逮捕された方に生ずる不利益を最小限に留めることができます。
早期に弁護士が接見し、ご家族との連絡の橋渡しになることで、会うことのできない家族に無事を伝えたり、仕事関係などの必要な連絡を伝えたりすることも可能となります。
逮捕を事前に把握できるか
逮捕される可能性がある場合には、例えば警察に逮捕するか尋ねても、教えてもらえない場合が多いです。逮捕は、非常に機密性の高い捜査情報であり、「逮捕する予定ですよ」等とうっかり漏らしてしまうと、被疑者の逃亡や証拠隠滅行為を誘発・助長してしまいかねないためです。
もっとも、被疑者が真摯に出頭する意思であり、捜査機関としても被疑者を信用している場合には、以下のような示唆を促す場合があります。
逮捕される可能性が低い例
①刑事から直ちに出頭するよう言われる場合
警察が逮捕状を持参の上自宅や勤務先等へ赴くのではなく、被疑者の出頭を待つ例です。
②刑事からの出頭要請に対して予定変更を申し入れ、できる限り速やかな出頭を求められる場合
警察が被疑者を一定程度信用している場合には、例えば急務(冠婚葬祭など)のために当日の出頭が困難な時には、翌日以降に出頭日を調整してくれる場合があります。
逮捕される可能性が高い例
①警察車両が自宅や勤務先に待機している場合
警察が既に逮捕状を請求中である場合などは、被疑者が逃亡しないか監視する目的等で、自宅や勤務先の周辺等に待機する場合があります。
②刑事から自宅待機を命じられた場合
警察が逮捕状を持参の上逮捕する予定であることを伺わせる例です。
なお、そもそも逮捕の可能性が全くない場合には、「逮捕はしません」と明示に伝達してくれる場合や、「今後の警察からの電話には必ず出てください」等と言われる場合が多いです。
逮捕後の流れ
逮捕後の流れは、フローチャートにすると以下の通りです。
以下、順に見ていきます。
警察による身柄拘束(48時間以内)
まず逮捕されると、警察により取調べ等を受け、留置施設に留置されます。
この拘束時間は48時間以内と定められており、警察はその間に検察庁へ送致するか釈放するかを決定しなければなりません。
検察庁への送致
検察庁へ送致されると、検察官は裁判所に勾留を求めるか否かの判断を行います。
この判断は、逮捕後72時間以内(送致後24時間以内) に行わなければなりません。
勾留決定
検察官により勾留が請求され、裁判所により勾留が決定されると、まずは10日間の勾留期間が設定されます。事案により、さらに10日間の勾留延長がされる場合もあります。
起訴、不起訴または処分保留釈放
勾留期間を経た後、検察官は、当該事案を起訴するか起訴しない(=不起訴とする)かを決定します。事案によっては、起訴不起訴の処分を留保した形で一旦釈放されることもあります。
なお、他にも逮捕されるべき罪がある場合には、これらの決定等の後に再逮捕される可能性があります。
起訴後勾留
起訴されると、刑事裁判の間、さらに勾留されることになります。
この間に身柄解放するためには、保釈請求をする必要があります。
刑事裁判
通常は、起訴後約6週間程度で、刑事裁判が始まります。
刑事裁判の場では、被告人が有罪か無罪か、有罪であるならどのような刑に処するべきかが判断されます。
逮捕後に面会できるか
逮捕直後、警察により取調べ等を受けている間の最大72時間は、家族であっても原則として面会することはできません。逮捕直後に面会できるのは、弁護人(または弁護人になろうとするもの)のみとなります。
その後勾留決定がなされると、一定の条件の下で、家族が接見できることとなります。ただし、証拠隠滅や口裏合わせなどの恐れが強い場合には、弁護士以外の者との面会を禁ずる、接見禁止がされることがあります。この場合には、家族は依然として面会することができません。
逮捕後の速やかな身柄解放に向けた弁護活動の重要性
上記のように、逮捕されると72時間以内に検察官が裁判所に勾留請求をするか釈放するかの判断を行い、その後に裁判所が勾留決定をするか釈放するかの判断を行います。この検察官と裁判所の判断の際に、弁護士が必要な資料を添付した意見書を提出することで、釈放の可能性を高めることができます。
逮捕や勾留の主な目的は、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐことにあります。ですから、逃亡や証拠隠滅をしないことやその理由について、被疑者自身の誓約書や家族の身元引受書を作成して添付し、弁護士が意見書において勾留の必要性がないことを説得的に記載して提出することで、勾留を防ぐことができる場合が少なくありません。
事案によっては、弁護士の迅速な活動によって早急に示談が成立することもあります。そうすれば勾留の可能性は飛躍的に下がることになります。このように、逮捕後にすぐに弁護士を選任し、身柄解放を目指した活動を行うことが極めて重要です。
逮捕後に相談できる弁護士の呼び方とメリット・デメリット
では、逮捕後に呼べる弁護士はどのような弁護士なのか、呼ぶ方法やメリット・デメリットといった具体的な問題について解説します。
当番弁護士
被疑者が一回だけ弁護士と面会できる制度です。逮捕された本人が捜査機関に対し、当番弁護士を呼んでほしい旨依頼すれば当番の弁護士が派遣されるというシステムです。
家族でも、弁護士会に申請をすれば、お願いすることができます。最寄りの弁護士会にご連絡ください。無料で派遣されるのは一度だけなので、その後何度も接見に来てほしい、事件を担当してほしいといった場合には別途、その弁護士と契約をする必要があります。
費用 | 無料。 |
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メリット | 初回の接見のみ無料で来てくれる。 |
デメリット | その後の弁護活動を依頼するには別途契約が必要。 |
国選弁護人
「被疑者国選弁護人制度」という制度のもと勾留決定後に弁護人が設定されます。国からの選任となるので、弁護士の指名はできません。また、家族が申請し派遣することもできません。
勾留が決定された場合に裁判官より、国選弁護士を打診されます。希望を出して弁護士と会うことができます。逮捕されてからそこで初めて外部と連絡が取れるようになるという人もいます。国選弁護士から家族への連絡はまちまちで、選任されれば必ず連絡するものではありません。本人の希望で連絡しない場合もあります。
国選弁護人に事件を担当してもらう場合は、その後の費用もかからないことが多いです。ただし、年収など一定の条件に該当する人のみとなります。
費用 | 無料、または数万円~20万円前後。 |
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メリット | 国の支援があるため弁護士費用がかからない、または安く済む。 |
デメリット | 弁護士を選べない。 起訴前の段階では勾留されていなければ選べない(在宅捜査の場合には選べない)。 |
私選弁護人
逮捕されたが、釈放になった場合や、逮捕前に自身で探していた弁護人を選任したい場合は、私選弁護人となります。自身で見つけておいた弁護士を選任することや、家族が依頼してくれた弁護士を選任する場合だけなく、国選の動きに満足できない場合に私選弁護士に変更したいという場合も私選弁護人への変更になります。
逮捕され勾留が継続している場合には、家族が弁護士を探し、本人の希望も聞いて依頼という流れになるでしょう。家族が面会できない場合に、私選弁護士を派遣して、様子を聞きに行ってくれるサービスを行う事務所も多くあります。前述の当番・国選弁護士と違い、弁護士費用はかかりますが、刑事事件の知識が豊富な弁護士が面会(接見)に行くことで、ご本人を安心させることや事件の状況を正確に把握することができます。
費用 | 事件の内容に応じた料金体系。 |
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メリット | 刑事事件に強い弁護士・相性のよい弁護士を自分で選べる。 |
デメリット | 弁護士費用を全額支払う必要がある。 |
逮捕されたときの弁護士の選び方のポイント
選び方のポイントは、自分のニーズに合った種類の弁護士を選ぶことです。とりあえず無料で一回弁護士と話してみたいという場合は当番弁護士を呼ぶことが考えられます。できるだけ支出を抑えて弁護士に依頼したい場合は国選弁護士を選ぶのが良いでしょう。
もっとも、特定の弁護士を選んで当番弁護士や国選弁護士を付けることはできません。名簿に登録された多くの弁護士の中から待機している弁護士が接見に来ることになります。そのため、当番弁護士や国選弁護士として接見しに来る弁護士が、刑事事件についてどれだけ豊富な経験を有しているかは、その弁護士次第ということになります。
これに対して、私選弁護士を付ける際には、多くの弁護士の中から好きな弁護士を選ぶことができます。刑事事件の経験が豊富な弁護士を私選弁護士として付けることで、適切な弁護活動を期待することができます。弁護士にはきめ細やかなサポートをお願いしたい、頻繁に接見に来て取調べのアドバイスが欲しい、家族とのコミュニケーションも密にお願いしたい、早期の身柄解放や最善の弁護活動をお願いしたい等の場合には、刑事事件を専門とした私選弁護士を選ぶのが適しているといえるでしょう。
逮捕後の学校や職場への影響
逮捕後の72時間や、その後の勾留期間は、会社や学校等を休まざるを得ません。場合によっては、会社を解雇されたり、退学処分を受けてしまう可能性もあります。会社の解雇や学校の退学を避けるためには、1日も早く身体拘束を解く必要があります。そのためには、弁護士が勾留を阻止するために迅速に活動することが大切です。少しでも早期の身柄解放の可能性をあげるためには、身柄解放活動に強い弁護士に依頼することが必要です。
ご家族が逮捕された場合するべきこと
できる限りお早めに弁護士に相談することをおすすめいたします。逮捕直後は情報に乏しく、そもそもなぜ逮捕されてしまったのか、詳しい事件の内容を警察は中々教えてくれません。事件の内容が分からなければ、今後どの程度身柄を拘束されてしまうのか、身柄拘束を短縮できるのか等の見通しも立たなくなってしまいます。
逮捕直後から接見することが唯一可能な弁護士が、早期に接見することで、これらの情報を早期に取得し、ご家族の方にも共有することが可能となります。
中村国際刑事法律事務所では、身柄解放活動に重きを置いています。逮捕され勾留されてしまった場合、職場や学校への影響は甚大です。その影響を最小限にするためにも身柄解放活動を行うことが必要なのです。もし、被害者のいる犯罪であれば、もちろん示談交渉も必要になります。勾留期間中に示談が成立し事件が終結した事案も扱っております。相談は無料となっておりますので、お気軽にご連絡ください。
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いかがでしたでしょうか。逮捕後は、情報の少なさに、自分は何をしたらいいのか分からず、パニックに陥ってしまう場合もあります。家族が逮捕されたとなれば、何かしてあげたい気持ちにもなりますが、何ができるのかもわからない状況だと何もできません。
まずは、どのような事情でご家族が逮捕されてしまったのか、今後の流れがどうなるのか等、正確な事実を知るためにも、まずは刑事事件の実績が豊富な弁護士へお早めにご相談されることが望ましいといえます。
当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
- 逮捕されるのだろうか
- いつ逮捕されるのだろうか
- 何日間拘束されるのだろうか
- 会社を解雇されるのだろうか
- 国家資格は剥奪されるのだろうか
- 実名報道されるのだろうか
- 家族には知られるのだろうか
- 何年くらいの刑になるのだろうか
- 不起訴にはならないのだろうか
- 前科はついてしまうのだろうか
上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。