中村国際刑事法律事務所 | 刑事事件の実力派弁護士集団 中村国際刑事法律事務所
お急ぎの方へ メニュー

整体やマッサージの施術中に起きたわいせつ事件の刑事責任や逮捕回避を弁護士が解説

整体師やマッサージ師によるわいせつ事件は、報道で頻繁に取り上げられる身近な犯罪の一つです。
世間の注目度合も高く、逮捕される可能性も高い事案です。特に、密室で起きる事件なので、双方の意見の食い違いや容疑を否認しているケースも多く、複雑な事情が絡むことが少なくありません。

本記事では、整体やマッサージの施術中に起きたとされるわいせつ行為について、該当する犯罪の成立要件や刑罰、また、立件された場合の具体的な対処方法や逮捕を回避するためのポイントについて、弁護士・坂本一誠が解説いたします。

施術中のわいせつ行為とは

施術中のわいせつ行為とは、整体師やマッサージ師などが施術を行う過程で、被害者の同意なく施術をするフリをしながら施術に必要のない部位への接触を行ったり、脱衣を強要したりすることが該当します。これらの行為は「不同意わいせつ罪」に該当します。

他にも、整体中に膣への指の挿入や、無理に性交しようとした場合には「不同意性交等罪」が該当します。施術中の様子を無断で撮影することも「撮影罪」に該当するなど、施術に関係のない行為については、わいせつ行為や別の犯罪に該当する可能性があります。

施術中のわいせつ行為に成立する犯罪と刑罰

では、具体的にどのような刑罰が科されるのでしょうか。指などを性器に挿入するまでに至らない、胸や臀部などを触るような施術中のわいせつ行為は「不同意わいせつ」に該当する可能性が高いです。

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪は刑法第176条に規定されています。具体的には、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、~6月以上10年以下の拘禁刑に処する」と定められています。
そして、2項において「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、~又はそれらの誤信~していることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする」と定められています。

つまり、整体やマッサージの施術中に行われたわいせつ行為については、施術「行為がわいせつなものではないと誤信させ」て「わいせつな行為」をすることに該当し、不同意わいせつ罪の構成要件を満たします。

刑法第176条1項(不同意わいせつ罪)
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

刑法176条2項
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

不同意性交等罪

整体やマッサージの施術中に、施術者が衝動的に乱暴的に性交等を行った場合には不同意性交等罪に問われます。条文のとおり、性交以外にも、肛門性交や口腔性交、膣に手や指、物をいれる行為も不同意性交等罪に該当します。
ただ、このようなケースの中には、被害者と被疑者・被告人の主張が異なり、被疑者・被告人から合意があった旨が主張される事案も見られます。

第177条 不同意性交等
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

不同意わいせつの罰則は「6月以上10年以下の拘禁刑」に対し、不同意性交の罰則は、「5年以上の有期拘禁刑」と当然不同意性交等罪の場合は重い罰則を科されます。
なお、上記犯罪はいずれも以前は親告罪(被害者等の告訴権者による告訴がなければ起訴できない犯罪)だったのが、現在では非親告罪となっています。ですので、書面のみで刑罰(罰金)が科せられる略式命令で終結する道がなく、起訴された場合には公開の法廷で裁判が行われることになります。

もっとも、被害者による被害申告がなければ、捜査機関に事件が発覚するのは困難ですので、事実上は被害者による告訴とまでは言わなくても被害申告があって初めて立件されることになるでしょう。また、非親告罪になったとはいえ、起訴・不起訴の判断にあたっては、被害者の処罰感情等は、なお大きな割合で考慮されています。

令和5年の刑法改正

整体やマッサージの施術中のわいせつ行為は、準強制わいせつ罪で立件されることが多い事案でしたが、令和5年7月の刑法改正によって、準強制わいせつ・準強制性交等罪は削除され、「不同意わいせつ罪(刑法176条)」「不同意性交等罪(刑法177条)」に内包されました。

旧刑法第178条(準強制わいせつ及び準強制性交等)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

施術中のわいせつ事件が発覚した場合

整体やマッサージの施術中のわいせつ行為について立件された場合には、起訴される前に示談等の手立てを講じ、不起訴を目指すことが重要になります。
どういう経緯で事件が発覚するかは、さまざまです。被害者が施術後すぐに警察へ通報したり、病院への相談から発覚したり、家族への相談した結果、施術がわいせつなものであったと発覚する場合などがあります。被害者は、施術者と面識があり特定も容易です。
関係性がある間柄での犯罪の場合、見ず知らずの他人との事件よりも、証拠を隠滅する働きかけを被害者に対し行う可能性があり、特に密室での施術は証拠が乏しいため、被害者の供述が重視されます。そのため、逮捕の可能性が高い類型です。

自身のお店で事件を起こした場合には、別の客へ評判が広まり実質的な営業停止を余儀なくされたり、営業停止処分を受ける可能性もあります。また、そのような噂が広まれば、お店の営業に影響があるのは明らかです。そのため、逮捕される前もしくは警察や捜査機関に事件が発覚する前に対策を弁護士と相談することで、対応できる幅が広がりますので、一度弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

逮捕されない在宅事件の場合には

当初は警察からお話を聞きたいと言われて呼び出され、任意の取調べに誠実に対応していたとしても、その後逮捕されてしまうことはあります。逮捕されてしまうと、報道される可能性も一段と高くなってしまいますので、まずは警察に呼び出された時点で早急に弁護士に相談しましょう。

刑事事件に強い弁護士に依頼すると、取調べでの受け答えの仕方について詳細にアドバイスをもらえる上、逮捕を回避するための書類も用意してもらえます。場合によっては、取調べ自体には同席できないものの、取調べを受ける当日に弁護士に警察署へ同行してもらえることもあります。逮捕の必要性の判断にあたり、弁護士がついていることが考慮されることもそれなりにあります。また、逮捕されていない間は任意の取調べである以上、取調べの途中に取調べ室を出て弁護士と直接又は電話等で相談することも可能です。

認め事件の場合には、逮捕を避けつつ、被害者との示談も進めていくことになります。被害者との示談が成立すれば、逮捕の可能性がほとんどなくなる上、初犯であれば不起訴になる可能性が高くあります。被害者の心情を考えると、示談は第三者である弁護士に依頼するのがベストでしょう。

整体やマッサージ中のわいせつ行為で逮捕されたら

整体やマッサージの施術中のわいせつ事案については、施術者においては犯罪を行った自覚がなく、あるいは合意があったものと信じ込んでいて、施術者本人の知らない間に被害者が警察に相談し、ある日突然逮捕される例も多くあります。

施術中のわいせつ事案は、逮捕されると報道されてしまう可能性も比較的高いのが現実です。報道自体を避けるのは至難の業ですが、今後の仕事や生活への影響を最小限にするためにも、お早めに弁護士に相談すべきです。特に、ご家族の方は詳しい事情が分からず、動揺されるでしょう。そのようなときにはひとまず、弁護士に相談して、ご本人の接見に行ってもらうようにしてください。早期の接見はご本人にとても重要です。

なぜなら、今後の刑事手続の流れや被疑者としての権利等について丁寧に説明を受けることにより、不安を軽減することができます。更に、認め事件の場合でも否認事件の場合でも、取調べにおける対応が刑事処分にとても重要になってきますので、可能であれば逮捕の当日中、できる限り早く弁護士からアドバイスを受ける必要があります。

認め事件の場合には被害者との示談についても考えなければなりません。施術中のわいせつ事案ですと、逮捕後に最大20日間の勾留が続く事案がほとんどです。検察官はこの勾留の満期日の数日前には起訴するか不起訴にするのかの方針を立てますが、証拠が十分にある事案ですと、この時までに示談が成立していない場合には起訴されてしまいます。したがって、示談との関係でもスピードをもって動いてもらえる、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼することが鍵となってくるでしょう。

わいせつ行為によって施術者が受ける不利益|免許のはく奪も

整体やマッサージの施術中のわいせつ事案は、刑事事件とは別途、民事的に損害賠償請求をされることも考えられます。
もっとも、刑事事件の手続の中で、示談を被害者との間で成立させることで、これを避けることも可能です。ただ、この辺りは、いかに被害者に示談に応じるメリットを感じてもらえるかにもかかってきますので、やはり被害者との示談交渉を沢山経験している、刑事事件に強い弁護士に依頼するのがよいでしょう。

専門資格の免許はく奪の可能性も

柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などの免許をもっている方の場合、起訴されて有罪判決を受けると、免許を取り消され、または、業務の停止を命じられる可能性があります(柔道整復師法第8条1項、第4条3号、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第9条第1項、第3条3号)。したがって、免許との関係でも、刑事事件において不起訴を獲得することが重要となってきます。

整体師やマッサージ師のわいせつ行為で弁護士が必要な理由

整体やマッサージ中の施術中に行われたわいせつ行為は、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に問われる場合があります。不同意わいせつ罪で事件化した場合には、逮捕の可能性も高く、事件の特性上報道される危険性もあります。そのため、捜査機関に発覚する前に対処できる場合には、その方が良いでしょう。

施術を受けたお客さんから直接被害を訴えられた場合には捜査機関が介入する前に示談交渉を行う余地もあるでしょう。そうすると報道されずに事件が終結することもあります。
刑事事件化した場合でも、逮捕を回避することや被害者との示談交渉、専門資格のはく奪を回避するため、不起訴処分を獲得する弁護活動が必要になります。これらの活動は刑事事件を多く取り扱っている弁護士に依頼する必要があります。

否認事件で戦うため

また、整体やマッサージの施術中のわいせつ事案は、否認事件も多くあります。
もっとも、通常、これらの施術は個室やカーテン等で仕切られた空間で、施術者と客の2人だけしかいないところで行われ目撃者がおらず、かつ、当然ではありますが録画等もされていませんので、事実を客観的に確かめる方法はほとんどありません。そのような中、捜査機関は被害者が何もされていないのに被害を訴える理由はない等考え、被害者とされる相手方の供述をより信用しがちです。そのために、冤罪であるのに逮捕されてしまったり、起訴されてしまったりする事例が発生してしまうのです。
ですから、否認事件を戦うためには、被害者とされる相手方の供述を丹念に検討し、冤罪であることを裁判所に説得的に訴えるための弁護士の豊富な経験と能力が必要になります。

整体やマッサージ中のわいせつ行為での解決事例

当事務所で扱った整体施術中の事件をご紹介します。
・マッサージ中の準強制わいせつで不起訴
・整骨院・整体施術中の強制わいせつ(不同意わいせつ)事案で示談成立

まとめ

いかがでしたでしょうか。施術中のわいせつ事件の場合、起訴を回避するためには捜査初動の時から適切かつ迅速な対処が求められます。
逮捕回避のためには、弁護士による早期の介入が重要です。また、刑事事件と並行して民事的な示談交渉も進めることで、社会的な信用や免許の問題にも対処できます。事件が複雑であることを考慮し、弁護士に相談しながら適切な対応をとることが最善の策です。お早めに刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

Columns

関連する弁護士監修記事を読む

経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

このページをシェア