配偶者や子どもなど、ご家族が突然逮捕されてしまったら、「本人と会って話がしたい、連絡を取りたい」「本人に着替えや手紙を渡したい」「弁護士に対応を依頼した方が良いのだろうか」等、このように心配されるのではないでしょうか。
ただし、逮捕された後更に警察署の留置施設等で身柄拘束を継続する勾留が決定した際、接見禁止がついている場合は、家族などの一般の方がご本人に会うことはできません。接見禁止が決定された場合には、弁護士以外の方は逮捕された被疑者に面会することができないのです。
以下、接見禁止とはどのような制度なのか、また、接見禁止に付いてしまった場合にどのように対処したらよいのかについて、弁護士・坂本一誠が解説します。
接見交通権
刑事事件で逮捕・勾留されている被疑者には、弁護人と立会人なくして接見する接見交通権が認められています。警察署では基本的に24時間接見することができ、1回の接見に時間の制限もありません。他方で、立会人や時間制限など一定の制約があるものの、家族との面会も許されています。
弁護人との接見交通権は、弁護活動の大前提となる被疑者からの事情聴取や、捜査機関の取調べへの対応について弁護士が法的助言を与えるための重要な権利です。弁護士と適切にコミュニケーションを取ることなくして、一般市民である被疑者が自分ひとりで刑事手続において自分の権利や利益を守ることは困難です。
また、身柄を拘束され日常から隔絶された被疑者や被告人は、耐えがたい精神的苦痛の中にいます。家族や友人の面会は、そんな被疑者・被告人の精神的に支えとなります。更に、仕事に関する連絡など、日頃の社会経済活動に対する影響を最小限にとどめるためにも、弁護士以外の一般の方との自由な面会や、文書の授受が必要になります。そのために、被疑者や被告人には、家族や弁護人と面会すること(「接見」又は「接見交通」)が認められているのです。
接見禁止とは何か
まず接見とは、刑事事件で身柄拘束を受けている被疑者や被告人と外部の人が会うことを言います。逮捕されると、72時間以内に勾留されるかどうかの判断がされることになり、勾留されるまでの72時間は、家族でも原則として本人と接見(面会)することはできません。その後勾留されると、誰とでも接見(面会)が認められるようになるのが原則です。法令の範囲内で書類や物の受け渡しをすることもできます。
しかしながら、検察官の請求または裁判所の職権により、弁護士以外の者との接見を許すことによって逃亡や罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判所が被疑者と弁護士以外の者との接見や文書の授受・物の禁止を決定することができます。この場合に接見が禁止されることを一般に「接見禁止」といいます。
なぜ接見禁止になるのか
外部との接見によって、罪証隠滅や証拠偽造などの危険があると判断される場合は、勾留後に接見禁止となってしまうことがあります。刑事訴訟法第81条は、「裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」には、弁護士以外との接見を禁止することができる旨を規定しています。この規定の意味は、勾留による身柄拘束によっては防止できない程度に罪証隠滅の具体的な危険が予見されるものであることを要すると言われています(川上和雄ほか「大コンメンタール刑事訴訟法」第二版119頁)。
しかしながら、実際は共犯事件などの一定の類型の事件について検察官が広く接見の禁止を請求し、裁判所もこれを認めている傾向にあります。接見禁止になりやすいケースとしては、下記のような場合が挙げられます。
逃亡の恐れがある場合
住居不定者、独身者、定職に就いていない者等は、一定の場所にとどまる理由がないため、逃亡のおそれが認められやすいといえます。
共犯者がいる場合
身柄を拘束しておかないと、他の共犯者との口裏合わせが行われる可能性があります。
証拠の確保が未了の場合
証拠の確保ができていない場合も、証拠を隠滅される可能性があります。
暴力団のような組織的犯罪の場合
組織的犯罪の場合も、組織の他の者と口裏合わせをしたり、証拠を隠滅したりする可能性があります。
加害者関係者と被害者(目撃者)の接触を回避すべき場合
友人や知人等をつかって被害者や目撃者に対して威圧するなど、何等かの接触をする可能性がある場合も接見禁止になることがあります。
接見禁止によって制限されること
接見禁止になっている場合は、弁護人または弁護人になろうとする者以外との面会が禁止されます。また、接見禁止になっている場合は、手紙のやりとりも禁止されます。事件に関係のない事務的な事項について、本人に伝えたいことがあるような場合は、弁護士に伝えてもらうことが可能です。
なお、接見禁止が付く場合、接見及び文書の授受が禁止されることが多く物の授受まで制限されることは珍しいため、衣類、書籍やお金の差し入れをすることは可能な場合が多いです。差入れは、原則として、警察署で行う必要がありますが、郵送や宅急便による差し入れも受け付けていることもあります。実際に、郵送や宅急便による差し入れを受け付けているかどうかは、警察署に確認してみましょう。
接見禁止の期間
接見禁止処分になった場合、どれくらいの間、面会等が禁止されるのでしょうか。期間については、明確な基準はありません。ただ、一般的には「証拠隠滅のおそれ」があるのは、捜査の終了時までです。勾留されている場合は、起訴前の勾留期間中の接見禁止が一般的になっています。つまり、起訴と同時に接見禁止が解除されることが多いと言えます。
ただし、どれくらいの期間になるのかについては、事件やそのときの状況により異なります。捜査の進行に伴い、被疑者が全面的な自白に転じた場合や証拠隠滅等の可能性がなくなったような場合には、起訴前の勾留中に接見禁止が解除されることもあります。逆に、共犯が何人もいる事件において、共犯者の捜査が継続している間は接見禁止処分が解除されない場合もありますし、場合によっては裁判まで長引くこともあります。接見禁止について、処分が決定されたことやその期間については、家族には知らされませんので、弁護士や警察に確認するようにしましょう。
接見禁止を解除し面会する方法
逮捕・勾留されると、被疑者は毎日のように取り調べを受け、心身への負担が大きくなってきますし、家族の心配も増してきます。できるだけ早く接見禁止を解除したり、面会をしたりするには、どうしたらよいのでしょうか。方法としては、①準抗告・抗告、②接見禁止処分の解除申立て、③勾留理由開示請求の3つがあります。以下、順に詳しく見ていきましょう。
①準抗告・抗告
準抗告・抗告とは、刑事訴訟法で認められている制度で、裁判所の決定や命令に不服がある者は、簡易裁判所の裁判官に対しては地方裁判所に、その他の裁判官に対してはその裁判官所属の裁判所に、決定や命令の取り消しまたは変更を請求することができるというものです。
第一回公判前は準抗告となり、第一回公判後は抗告になるというだけの違いであり、争う内容は同じです。接見禁止決定に対する準抗告や抗告が認められると、接見禁止が解除されて、その後は被告人と家族が接見できるようになります。
②接見禁止処分の解除申し立て
接見禁止処分の一部解除の申立ては、刑事訴訟法などの法律上の根拠があるものではなく、裁判所の職権の発動を促す申立てになります。接見禁止の全面的な解除は難しくても、事件に関係のないことが明らかな特定の人物(例えば、両親など)に限定して接見禁止の一部解除の申立てを行うことで、裁判所が申立て通りに接見禁止を解除することがあります。
③勾留理由開示請求
準抗告や接見禁止の一部解除が認められなかった場合でも、勾留されている被疑者・被告人の姿を確認することができる手続きがあります。接見禁止処分そのものについて何か手を打つ、という性質のものではないのですが、勾留理由開示請求を行うと、家族も傍聴人として勾留されている人に会うことができるのです。
勾留理由開示請求とは、勾留されている本人や弁護士等が、裁判所に対して、どのような理由で勾留されているのかを開示するよう求める手続きです。勾留理由の開示は公開の法廷で行われますので、家族も傍聴人として勾留されている被疑者・被告人の姿を確認することができます。会話まではできませんが、少なくとも姿を確認することは可能になります。
また、勾留理由開示請求は、本人や弁護士だけではなく、被疑者や被告人の配偶者や親兄弟等も行うことができます。請求者は、法廷で裁判官に対して意見を述べることも可能ですので、この機会を利用して本人を勇気づけることも可能になります。
接見禁止の場合に弁護士に依頼すべき理由
接見禁止処分がついていると、被疑者や被告人は家族とも会えず、心身ともに非常に大きな負担を抱えることになります。そのような中、唯一接見が認められるのが、弁護士です。弁護士であれば、接見禁止処分を受けていても、自由に被疑者や被告人と接見することができるのです。
一日でも早い身体拘束からの解放や前科の回避のためには、弁護人による迅速かつ適切な弁護活動が必要不可欠です。そのためには、弁護士が被疑者と速やかに接見し、本人から事情を聞き、その言い分に基づいてもっとも効果的な弁護方針を立てる必要があります。取調べでは供述をするのかしないのか、供述調書に証明押印はするのか、被害者との示談交渉はどうするか、何か集めておくべき証拠はないか、このような事は弁護士でなければ判断をして進めていくことができません。速やかな依頼が重要なのです。
そして、接見禁止が付いており、被疑者が家族や友人と会えない場合に、既に述べたような接見禁止に対する準抗告や解除の申立てを適切に行うためにも弁護士の力が必要です。通常、接見禁止は検察官の請求により裁判所が決定します。その時に弁護人が選任されていなければ、裁判官は、検察官の説明だけを聞いて判断するので、家族や友人が事件と全く関係がなく、面会しても証拠隠滅のおそれがないという事情を知ることができないのです。
そのため、一度接見禁止が付いてしまった事案でも、家族や友人が事件と関係のないことを説明する資料を添付して、弁護人が準抗告や申立てを行うことで接見禁止が解除されることが珍しくありません。接見禁止がついてしまうような事件では、速やかに弁護士に依頼することが必要です。当事務所では、逮捕・勾留された被疑者の方へ直接面会に行くという接見先行サービスをご提供しております。ご相談は無料となりますので、お気軽にお電話ください。
依頼できる弁護士の種類
接見の依頼が可能な弁護士には、次の3種類があります。依頼のタイミングや役割も違いますので、家族等身近な方が逮捕されてしまった場合は、状況に応じて依頼する弁護人を選択するようにしましょう。
①当番弁護士
当番弁護士は、1回であればどのような被疑者でも呼ぶことができ、無料で相談できます。
②私選弁護士
刑事事件の被疑者・被告人またはその家族が私的に依頼する弁護士です。
③国選弁護士
勾留後(あるいは起訴後)に依頼可能で、資産が50万円未満の場合などに依頼することができます。
逮捕直後であれば、当番弁護士を呼ぶのか良いでしょう。当番弁護士は、逮捕後から勾留期間終了までであればすぐに呼ぶことができます。被疑者本人が警察官を通じて呼ぶこともできますし、ご家族の方から呼ぶこともできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では、接見禁止について解説をしてきました。逮捕や勾留は、被疑者・被告人に対する非常に大きな精神的負担になると言われています。精神的負担を軽減し、支えとなるのが、家族や弁護士など味方との接見や面会、手紙です。
万が一、配偶者や子どもが逮捕されてしまった場合も、記事を参考にして弁護士に対応を依頼するなど、落ち着いて対応するようにしましょう。
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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
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