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傷害致死で逮捕されたら?事件の流れや対応を刑事事件に強い弁護士が解説

傷害致死罪とは、人の身体を傷害して死亡させた場合に成立する犯罪です。
人の死という結果が生じていますので、自ずと重罪であり、その嫌疑がかかれば身柄拘束(逮捕・勾留)され、公判請求の上、重罰が科されることが多い事案です。
この傷害致死罪により逮捕された場合の弁護活動等につき、刑事弁護に詳しい弁護士・坂本一誠が解説します。

傷害致死罪とは

傷害致死罪とは、「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。」という刑法第205条の罪のことです。暴行又は傷害の故意で人に傷害を負わせ、その結果その人を死亡させた場合に成立します。

上記のとおり、傷害致死罪は、3年以上の有期懲役とされています。
有期懲役は、下限が1か月、上限は20年とされています(刑法第12条1項)ので、傷害致死罪を犯せば、1か月以上20年以下の有期懲役刑に処せられる可能性がある(但し、他の罪と併合罪となる事案については、同法14条1項により、上限が30年に引き上げられることがあります)極めて重い罪となっています。

ちなみに、懲役刑に執行猶予を付すには、懲役3年以下の判決を言い渡すことが要件であるところ、傷害致死罪の法定刑は上記のとおり懲役3年以上の懲役なので、同罪で執行猶予付き判決を言い渡すには、法定刑の最低の刑を言い渡すか、酌量減軽(同法第66条)を施す必要があり、執行猶予付き判決の獲得には相当高いハードルがあります。

傷害致死罪が重罪であることは、以下のような点からもうかがえます。
例えば、この罪により起訴されれば、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪、危険運転致死罪等の重罪と同様、裁判員裁判対象事件となります(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条1項)。

また、起訴後の保釈請求に関し、傷害致死事件は、原則として保釈が許される(権利保釈)事件には当たらず(刑事訴訟法第89条1号)、裁判官の裁量で保釈が許される(同法第90条)に過ぎない事件に当たり、条文上、保釈が困難な類型ということが出来ます。

傷害致死と殺人罪や傷害・暴行との違いは?

傷害致死罪と殺人罪は、両罪とも人を死亡させた場合に成立する犯罪という点で共通していますが、殺人の故意(殺意)があるか否かという点に違いがあります。殺人の故意(殺意)がある場合は、傷害致死罪ではなく、殺人罪(同法199条)が成立します。

なお、暴行又は傷害の故意で相手方に傷害を負わせたにすぎない場合は、傷害罪(同法204条)が成立します。傷害罪と傷害致死罪との違いは、人を死亡させたか否かという点にあります。
他にも暴行罪は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立します(同法208条)。暴行罪の成立には、暴行の故意が必要となります。すなわち、暴行の故意で暴行を加えたが、相手方に怪我などの傷害結果が発生しなかった場合に暴行罪が成立します。

傷害致死罪で逮捕されたら

傷害致死罪は、上記のとおり重罪ですから、逮捕されれば、その後勾留及びその延長がなされ、捜査段階のみで最大23日間身柄拘束される可能性が高く、また、起訴後も、上記のとおり保釈の要件が厳しく、保釈を請求しても却下されることも多いので、身柄拘束が長引きます。早期釈放が困難な事例の一つと言わざるを得ません。

それでも、被疑者が事実関係を認めていて、暴行の態様が比較的軽微で、死との因果関係も明確であり、示談が成立し又は成立が見込まれるなどの事情があり、証拠構造上罪証隠滅のおそれが少ないと認められる事案の場合など、家族の身元引受、示談交渉等を行い、早期釈放にチャレンジする余地はあります。仮に起訴された場合の保釈請求との絡みもあるので、無駄にはならないでしょう。
ちなみに、起訴後は、上記のような事情を理由として、裁量保釈(刑事訴訟法第90条)を求めていくことになるでしょう。

傷害致死罪で逮捕された場合の弁護活動

傷害致死の場合、最低でも暴行の故意さえあれば、傷害の故意がなくても(相手方を傷付ける気がなかったとしても)傷害致死罪が成立し得ます。したがって、「暴行はしたものの、死ぬとは思っていなかった」と弁解したところで、傷害致死の成立を阻止することはできず、有効な否認とはなりません。

しかしながら、あまりにも軽微な暴行から死の結果が生じた場合や、暴行の態様からして死が意外な結果であった場合相手方の身体にもともと死に至る原因があった場合など、暴行行為と死との因果関係が客観的に認められない可能性もあります。
その点は、ご遺体の解剖結果を詳細かつ慎重に検討する必要がありますが、その点に関する証拠は、起訴前に被疑者・弁護側に開示されることはないと言ってよく、捜査側から得られる数少ない情報や、被疑者の供述、協力の得られる関係者の供述等から手探りで推測していくしかないことが多いと言わざるを得ません。

一方、被疑者・被告人が事実関係を認め、かつ、死の結果も被疑者・被告人の行為の結果であることがそれなりに受け入れられる場合には、やはり、できるだけ早期のうちに、亡くなった被害者のご遺族に対する謝罪や示談の申出をして行くことになるでしょう。ただ、被害者の死の結果が生じてしまっている事案ですから、ご遺族からすれば被害者を殺されたに等しく、当然のことながら、強烈な怒り・悲しみをお持ちであり、処罰感情も熾烈ですから、示談交渉そのものを拒否されたり、交渉には応じてもらえても示談金の金額等につき厳しい示談条件を突きつけられることが容易に予想されますが、傷害致死事件という深刻・重大な事件を起こしたものとして、誠意を持って真摯に対応していく必要があります

傷害致死で無罪主張をする場合

自分が犯人でないと主張する(犯人性を否認する)場合、その現場にいなかったというならその証拠資料(アリバイ)を探し、現場にはいたが手を出していないというなら他の者の関与・他の死亡原因等の痕跡を探し、自己の主張を根拠付けていくことになるでしょう。

暴行ないし傷害行為はしたがその行為から死の結果が生じたわけでない(他の原因から死亡した可能性がある)と主張する(行為と死との因果関係を否認する)場合、上記のとおりご遺体の解剖結果、つまり解剖医の死体解剖鑑定書が入手できない時期においても、行為と死との因果関係に疑問があるなら、その疑問を具体化すべく、捜査側から得られる数少ない情報や、被疑者の供述、協力の得られる関係者の供述等をできる限り収拾し、それをうかがわせる事情・根拠を少しでも捜査側に提供することによって、捜査側に行為と死との因果関係に疑問があることを、根拠をもって示し、その点を詳細に捜査してもらうことが必要になります。起訴後であれば、解剖医の死体解剖鑑定書を子細に検討するとともに、他の専門家の意見を聞き、場合によっては再鑑定を実施するなどの対応が必要でしょう(ちなみに、上記主張が通った場合は、全部無罪ではなく、暴行又は傷害の限度で処断されます)。

暴行又は傷害の故意を否認し、例えば、結果的に有形力は行使したが、わざとではない、などとの主張もあり得るかもしれません(その場合、傷害致死でなく過失致死に当たるかどうかが問題となることがあるでしょう)。その場合には、傷害の部位・程度・状況のほか被疑者・被告人の供述、目撃者その他の関係者の供述等から客観的に明らかになるその行為の態様、その行為に至る経緯、行為時の状況等からその主張の正当性を根拠付けていくことになるでしょう。

正当防衛を主張する場合

たとえば、傷害致死の場合には、正当防衛を主張する場合もあります。正当防衛は、以下の3つの要件を満たせば成立します。もっとも、裁判上全ての要件が満たされ正当防衛が成立するケースは稀です。

  1. 急迫不正の侵害であること
  2. 自己または他人の権利を防衛するための反撃行為であること
  3. その反撃行為がやむを得ずにした行為であること

1.急迫不正の侵害であること

「急迫不正の侵害」とは、他人の犯罪行為や違法行為によって自分の生命、身体もしくは財産が現に侵害されているとき、または、現に侵害されそうなときを指します。

たとえば、他人から暴行を加えられそうになった、もしくは実際に暴行されている場合や、他人が自分の家に押し入り、自宅内に置いてあるバッグや財布などの財産を持ち去ろうとした、もしくは持ち去った場合に、「急迫の侵害」が認められます。「不正の侵害」とは、「違法な侵害」をいうとされています。たとえば、他人からの暴行や窃盗は「違法な侵害」に該当します。

2.自己または他人の権利を防衛するための反撃行為であること

「自己または他人の権利を防衛するため」といえるためには、防衛の意思が必要となります。防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつ侵害を避けようとする単純な心理状態をいうとされています。

たとえば、現に他人から暴行を受けている場合に、その状況を認識しつつ、自分の生命や身体を守ろうとして反撃行為をした場合に防衛の意思が認められます。一方で、他人から攻撃を受けたことをいいことにその他人を痛めつけてやろうといった専ら攻撃的な意思で反撃行為が行われた場合は、防衛の意思は認められません。

3.その反撃行為がやむを得ずにした行為であること

「やむを得ずにした行為」とは、防衛行為としての「必要性」および「相当性」を有する行為をいうとされています。防衛行為としての必要性は、防衛のためにその行為をする必要があること意味します。防衛行為としての相当性は、反撃行為が防衛する手段として必要最小限度であることを意味します。より危険性が低い防衛行為をすることができたのに、あえて危険性の高い反撃行為に及んだ場合には、防衛行為としての相当性が認められず、「やむを得ずにした行為」にはあたらないといえます。

たとえば、老人が素手で大柄な若者男性に殴りかかった場合に、その男性がバットを持ち出し思い切り殴打するという反撃行為をした場合には、防衛行為としての相当性が認められず、「やむを得ずにした行為」とはいえないでしょう。

このように、正当防衛とは、他人が自己の生命、身体もしくは財産に対して現に違法な侵害を加えている場合、または、その侵害が差し迫っている場合に、防衛の意思を持って、必要最小限度の反撃行為をした場合に成立します。したがって、裁判においていきなり正当防衛を主張しても、これを認定してもらうのは難しいでしょう。

ただし、捜査段階において検察官が起訴するか不起訴にするかを決める場合、厳密に全ての要件を満たしていなくても、立証方法等公判での運用や被害者負担等の政策的戦略的事情を加味した結果、不起訴にする可能性があります。そのため、捜査段階において不起訴にしてもらえる可能性は、公判段階で正当防衛を認定してもらえる可能性よりも高いといえます。そのため、捜査段階の弁護活動が、公判段階での弁護活動よりもはるかに重要です。また、反撃行為が正当防衛に該当するかの判断には、事件の経緯や内容を詳細に聴取し、関連証拠を収集した上での高度な法的専門知識が必要ですので、疑問に思ったら早急に弁護士にご相談ください。

傷害致死罪の場合は裁判員裁判への対応が必要

裁判員裁判においては、短期集中審理により短期間のうちに判決に至る傾向にありますので、被告人の弁解が余すところなく主張されているか、その主張を裏付けるための調査を尽くしたかなどにつき、事前にスピード感を持って十分な事前準備を行う必要があります。

また、特に裁判員裁判においては映像等の視覚情報が多く用いられますので、その情報が一面的なものでないか、裁判員に誤解を与えるものを含んでいないかなどにつき、特に慎重に検討する必要があるでしょう。

裁判員裁判とは

裁判員裁判制度とは、国民の中から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する制度のことをいいます。
具体的には、法廷で行われる審理に立ち会って裁判官とともに被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑罰にするのかを法律に定められた範囲内で判断します。裁判員裁判制度の対象となるのは、殺人罪・傷害致死罪・強盗致死傷罪などといった重大な犯罪の疑いによって起訴された事件になります。
裁判員は、衆議院議員選挙の有権者から選ばれ、無作為に抽出された裁判員候補者の中からさらに特定の裁判に参加する裁判員を選任します。

公判では、証拠書類を取調べるだけでなく証人や被告人に対して質問がされ、裁判員も証人などに質問をすることができます。証拠を調べ終わったら、事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪であればどのような刑罰にすべきかを裁判官とともに議論します。議論においては、無罪推定の原則という刑事事件の大原則を必ず意識する必要があり、意見が全員一致することを目指して議論するものの、結果的に意見の不一致があった場合は、多数決によって決められます。そして、裁判員としての役割は、裁判長が判決を宣告することによって終了します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。傷害致死は重罪であり、自白事件でも、保釈等身柄の解放や執行猶予付き判決の獲得には高いハードルがあります。ましてや、犯人性を争って無罪判決を獲得し、又は因果関係を争って一部無罪判決を獲得するには、犯人性の証拠や死因に関する鑑定書等の証拠を詳細に検討し、時には医師その他の専門家の助けを借りながら問題点をえぐり出す刑事事件の深い知識と経験が必要です。
傷害致死を疑われたら、すぐに刑事事件の経験豊富な弁護士に相談するのがよいでしょう。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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