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傷害事件における示談の重要性や示談交渉のポイントを弁護士が解説

傷害事件を起こしてしまった場合といっても、一方的に殴ってしまった、つい手が出てしまった、相手が手を出してきたので応戦した。などいろいろなパターンがあります。

刑事事件となってしまった以上、被害者との示談は事件解決において極めて重要なポイントになります。示談は、被害者との合意を通じて被害回復を図るだけでなく、刑事手続においても被疑者に有利な情状として考慮される可能性があります。しかし、示談交渉は、法的知識が求められる複雑な手続きであり、慎重かつ適切な対応が必要です。

今回は、傷害事件における示談の意義や流れを、弁護士・坂本一誠が解説します。示談交渉を検討されている方や、その手続きに不安を感じている方は、お電話にてご相談受付をいたします。お気軽にお問い合わせください。

示談交渉はなぜ行うのか

刑事事件における示談とは、加害者が被害者に対して一定の金額を支払うことなどを条件に、被害者が加害者の刑事処罰を求めないといった合意を行うこと(和解契約)をいいます。
示談が成立した場合は、基本的に被害者が加害者に改めて損害賠償請求をすることはできなくなります。

もっとも、示談はあくまでも民事上の契約なので、示談が成立したから必ず刑事事件が終結して前科を避けられるわけではありません。示談交渉において重要なのは、①刑事処分を避けるために効果的な内容にすること②終局的に紛争を解決することの2点です。

刑事処分を避けるために効果的な内容にすること

被害者が警察に通報する前に示談が成立すれば、事件が警察に発覚するのを回避する可能性があります。被害者が被害届を提出した後であっても、「被害者が被疑者の刑事処罰を望まない」旨が記載された示談書を取り交わし、その示談書を捜査機関に提出することによって、警察が捜査を終了し不立件となることや、検察が不起訴処分と判断する可能性が高まります。

刑事事件化を回避できた場合や、事件が不起訴処分に終わった場合は前科が付くことはありません。また、重大事件では、示談をしたとしても起訴されてしまう場合があります。起訴前に示談が成立せず、起訴されて刑事裁判になってから示談が成立する場合があります。その場合には、示談が成立していることを裁判所が考慮し、執行猶予判決を獲得できたり、量刑を軽くすることができる場合があります。

終局的に紛争を解決することができる

刑事事件は、損害賠償の問題だけでなく、被害者に大きな精神的苦痛を与えます。従前から被疑者と被害者が知人であったり、家族間で起きたような事件の場合には、事件に付随した様々な感情を被害者側が抱いており、単なる損害賠償だけでは紛争が解決しないことがあります。

示談の内容に、お互いが接触をしないといった今後の関係性等に関する条項を盛り込むことによって、紛争を終局的に解決し、当事者にとって前へ進むための良い解決策となるという側面があります。そのためには、示談書の内容を紛争解決のための効果的なものにすること、被害者の方に対して示談書の内容を丁寧に説明し、十分に理解してもらうことが必要です。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れは以下のとおりです。

  1. 謝罪文や示談金などの示談に向けた準備
  2. 弁護士が捜査機関を通じて被害者へ連絡
  3. 被害者の同意に基づき示談交渉
  4. 被害者と合意に至れば示談成立

以下それぞれを解説します。

①謝罪文や示談金などの示談に向けた準備

被害者との示談交渉を行う前に、弁護士と示談金の用意をしたり、謝罪文を作成したりすることが考えられます。
被害者に謝罪文や示談金を受け取っていただけるかはまだ未知の段階であっても、いざ交渉を開始した後に「実はまだお金が用意できていませんでした」というのは非常識です。もし示談金の用意が苦しい場面でも、その時点での最大限の誠意の形となる金銭を用意することや、今後の資金計画などを予め具体的に検討しておくことが望ましいです。

謝罪文については、弁護士のアドバイスを受けない「生の言葉」で書くことが最も重要です。弁護士のアドバイスを受けて書かれた謝罪文は、検察官や裁判官には、一目瞭然です。そのような謝罪文は意味がなく、かえってマイナスに評価されてしまう危険もあります。
一方で、謝罪文の形式面やニュアンスなどについては、経験豊富な、示談に強い弁護士によるアドバイスが必要でしょう。例えば、被害者を一層不快にさせてしまうような内容がないか、被害者に到底受け入れがたいような「独りよがり」な動機が書かれていないかなどです。その他、書き方として、乱雑・読みにくい文字で書いていないか、一文字一文字丁寧に心を込めて書いているか等も、誠意を伝える上で当然重要です。

②弁護士が捜査機関を通じて被害者へ連絡

示談の準備が整ったら、まずは捜査機関に対して、謝罪を伝えたいため弁護士が被害者側と連絡を取ることが可能かどうかを問い合わせます。連絡を受けた捜査機関は、被害者側に連絡し、こちらの意思を伝達した上で、弁護士と連絡を取っていいか否か、被害者側から返答を受けます。被害者側が弁護士と連絡を取っていいと返答してくださった場合には、弁護士限りとの約束の下、被害者側の連絡先を教えていただくことができます。

③被害者の同意に基づき示談交渉

示談交渉は、何よりも誠意をもって行うことが大切です。先程も述べたとおり、金額面だけでなく、被害者がどのような思いを持っておられるかは、実際に交渉を始めてみないと分かりません。

示談とは、一度合意してしまうと、原則としてその後は修正することが困難であるため、被害者に示談のメリット・デメリットを正確に伝えなければ、後々のトラブルにも発展しかねません。豊富な刑事事件の経験を有する中村国際刑事法律事務所では、ただ性急に示談成立を急かすのではなく、状況を見定め柔軟に対応を見極めます。そのような柔軟力がある弁護士こそ、示談に強い弁護士といえるでしょう。

場合によっては、一度の交渉で合意に至らないこともあります。「犯人の反省の態度が謝罪文からは感じられない」と指摘されて合意に至らない場合があります。加害者の中には、被害者がどのような精神的苦痛、肉体的苦痛を受けたのか実感できていない人もおり、また、加害者が知りようもない被害の実態があることもあります。加害者も弁護士も知り得なかった事情に直面して、被害感情の強さから合意に至らなかった場合には、それを一旦持ち帰り、加害者にフィードバックして改めて自己の犯した罪の重大性を感得してもらう必要があります。そして、改めて、謝罪文を書き、二回目の交渉に臨むのです。

④被害者と合意に至れば示談成立

無事合意が整えば、必要な書類に署名・押印等を行うことで、示談が成立します。示談金の支払方法は、示談成立日に現金で交付する場合や、後日に振込入金したり、分割払いにて入金していく等の様々な方法があります。なお、仮に、当初の示談が、実被害額よりも少ない金額で成立したものの、後日に加害者側の資金状況が整う等して追加で示談を希望する場合には、改めて被害者側にその旨申し入れるケースもあります。

示談書の作成は必須ではありませんが、後にトラブルになることを回避するために作成しておくべきでしょう。示談が成立した後に、弁護士は、示談書のコピーを捜査機関に提出するなどして、示談成立の結果を伝え、不起訴処分等を求める意見書などを作成し、依頼者の利益になるよう活動します。

傷害事件における示談の重要性

傷害事件においては、相手方との示談を成立させることで、起訴前であれば早期釈放不起訴処分獲得による前科回避の可能性を高めることができます。
起訴後であれば執行猶予判決獲得の可能性が高まります。そのため、早期に相手方との示談を成立させる必要があります。

起訴前の示談

逮捕・勾留された場合、検察官は傷害罪の被疑者を起訴するか否かを一定期間内に判断します。この際、起訴不起訴の判断要素の一つとして、示談成立の有無が考慮されます。示談が成立し、被害者が被害届を取り下げている場合は、被疑者に対する処罰感情が弱まっていると判断されるため、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。
傷害事件が不起訴処分に終われば、裁判にかけられることはなく、前科が付くこともないので、起訴前の示談交渉は極めて重要といえます。

また、逮捕・勾留などの身柄拘束がされている場合に示談交渉が成立すれば、早期に釈放される可能性があります。身柄拘束は長期間に及ぶ場合もあり、被疑者にとって大きなストレスとなりますので、この点においても、早期に示談を成立させることが重要であるといえます。

起訴後の示談

起訴がされてしまった場合でも、示談を成立させることは刑事処分の減軽につながります。刑法204条は傷害罪について以下のように規定しています。

「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

傷害罪の法定刑は幅広く、裁判官による量刑判断(刑の重さ・軽さの判断)によって、刑の重さが変わります。
裁判官は、量刑を判断する際のポイントとして、示談交渉が成立しているかを考慮します。示談が成立していれば、被疑者に反省の意思があることや、被害者の処罰感情が弱まっていることが裁判官にも伝わり、有罪判決となっても、執行猶予が付いたり、軽い刑が科されたりする可能性が高くなります。執行猶予が付けば、直ちに刑務所に行かなくてよくなり、社会内での生活が許されます。
そのため、起訴がされた後であっても、示談を成立させることは極めて重要となります。

傷害事件の示談金の相場

では、傷害事件における示談金相場はいくらぐらいになるのでしょうか。示談金の相場として気になるところではありますが、実際の事件において相場はあってないようなものです。
なぜなら、ケガの程度や、被害に遭った時の状況、傷害を受けた後の損害などを考慮して算出されますので、事案に沿った算出が必要です。

慰謝料との違いはあるか

示談金の内訳は主に①治療費②休業補償③慰謝料が挙げられます。交通事故のように損害の内訳を具体的に算定して示談金について話し合う事件もあれば、性犯罪のように精神的損害と肉体的損害を切り分けにくい事案の場合には、全体的な示談金として話し合う場合もあります。

①治療費とは被害者が病院で治療を受けた際に発生した費用②休業補償とは被害者が負傷したために休業したことに対する補償③慰謝料は被害者が直接負った精神的苦痛やに対して支払われる金員です。慰謝料の金額は、怪我の程度や入院・通院にかかった治療期間などの定量的な要素だけでなく、その後の生活への影響や被害者の被害感情も十分に考慮しなければいけません。示談交渉は裁判ではなくあくまで話し合いですので、一概に相場の金額が決まってるわけではありません。

傷害事件の示談交渉を弁護士に依頼する必要性

傷害事件は被害者のいる犯罪ですので、示談交渉が不起訴処分を獲得する上で、重要なポイントになります。また、前述したとおり、警察や検察などの捜査機関が被疑者に被害者の情報を教えてくれることは基本的にありません。
知人同士であっても法律の知識が乏しい状態での契約は、後のトラブルを防ぐためにも避けるべきです。結果として示談交渉は、弁護士への依頼が必要となります。

弁護士に依頼し、示談交渉を行った場合には、示談書や示談金を支払った旨の領収書など、検察官に提出する資料を作成します。起訴・不起訴を判断する検察官は、これらの疎明資料や、被疑者、被害者の供述を聞いて、最終的に被疑者の処分を決定するのです。そのため、検察官には示談書などの疎明資料を以って、捜査機関に被害者が処分を求めていない旨、上申し、被疑者の処分を軽減するよう求めます。このように刑事事件に精通した弁護士が対応することで、不起訴処分の獲得や前科回避につながる可能性があります。

高額請求への対抗策

傷害事件で示談金が高額となるケースとしては、被害者が重傷を負った場合や悪質性が高い事件の場合が考えられます。
被害者が重傷を負った場合としては、被害者が殺傷能力の高い刃物等で襲撃されたり、骨等等重傷を負ったりした場合は、入院を余儀なくされるなどにより治療費が高額となりますし、入院期間中は休業の必要があるため休業補償の額も大きくなります。一般的に、怪我の程度が重く、傷跡が残る場合には示談金額も高額になります。

他にも、事前に襲撃計画を練る、刃物等の凶器を用いる、複数人で襲撃するなど悪質な態様の傷害事件の場合は、被害の程度も大きく、重大な事件として、示談が成立したとしても、起訴される可能性が高いです。
このような場合には、被害者の被害感情が痛烈であることが多く、示談交渉が難航する可能性が高いため、刑事事件や示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼する必要性が高まるといえます。

傷害事件における示談交渉の解決実績

当事務所の傷害事件における解決実績を紹介します。

まとめ

傷害罪に問われると、15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。示談が成立することで、不起訴処分が獲得できるなど刑事処分を軽くすることができます。そのため、傷害事件において示談の成立はとても重要なものであるといえます。

示談交渉は被害者に連絡を取ることから始まりますので、迅速に示談交渉を行うため弁護士に相談することが重要となります。また、示談金額の決定やその後の捜査機関などへの対応等は専門知識が必要ですので、経験豊富な示談交渉に強い弁護士に相談することをお勧めいたします。

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経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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