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暴行事件の示談の重要性とは?示談交渉を弁護士が解説

暴行罪に該当する行為を相手方に行ってしまった場合、その問題を解決するためには通常、警察による逮捕後、裁判所で裁判が行われ、処罰が決定されます。
しかし、暴行事件に関して問題を解決する方法は裁判のみではありません。加害者が示談交渉を行い、被害者がその提案を受け入れることで、裁判を避け、前科を回避することが可能です。示談交渉は、両者にとって迅速かつ円満な解決策を提供する手段となります。
そこで、暴行罪における示談交渉の重要性とその進め方などについて弁護士・坂本一誠が解説します。

示談交渉はなぜ行うのか

暴行罪に該当する行為を行った場合、通常は警察に逮捕され、起訴後に裁判で処罰が決定されます。加害者側は、無罪判決が出ない限り、ほとんどの場合、前科が付くことになります。これを避けるために、加害者側は示談交渉を行うことが想定されます。
また、被害者側においても、暴行事件に対する迅速な解決を望む方や、弁護士や裁判費用などのコスト削減を考える方、さらには事件や裁判による精神的負担を軽減したい方などが、お金によって問題を終局的に解決する手段として示談交渉を行うことがあります。

暴行罪に該当する事件を起こしてしまった場合、加害者側の代理人弁護士などが、被害者に対して示談を提案するところから始まります。次に、示談交渉が始まると、双方はそれぞれの立場賠償金額支払い方法謝罪の内容その他の条件について話し合われることが多いです。示談交渉は感情的になりやすく、お互いに冷静に交渉するために弁護士の介入が不可欠であると言っていいでしょう。
示談が正式に成立すると、被害者側は通常、被害届を取り下げることが一般的です。これにより、被害者が示談により事実上の解決を望んだとみなされ、検察官はその意向を考慮することになります。被害者が示談を受け入れ、被害届を取り下げることで、加害者に対する刑事責任を追及しないという意思表示がなされるため、検察官は不起訴処分にする可能性が高くなります。

ただし、示談が成立しても、検察官が必ず不起訴処分を下すわけではありません。検察官は被害者の意向を尊重しつつも、社会的な影響や加害者の犯罪歴なども踏まえ、最終的に不起訴か起訴かを判断します。そのため、示談成立後でも検察官が起訴を決定する場合もありますが、一般的には示談が成立し、被害者の取下げがあれば、前科が回避できる可能性が高くなります。よって、当該暴行罪に該当する事件を起こしてしまった場合においては、早急に弁護士にアドバイスを求めた方がいいでしょう。

暴行罪に該当する事件とは

暴行罪は、刑法第208条に規定されています。

第208条 暴行罪
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行罪における「暴行」とは「人の身体に対する不法な有形力の行使」とされています。
分かりやすい例でいうと、人を殴る蹴るなどの不法な有形力の行使。また、肩を押す襟首をつかむ足元に石を投げる塩を振りかけるなどの行為も、広く「暴行」に当たります。ドラマなどでたまに見る、コップの水を顔にかける行為も暴行にあたります。
「人の身体に対する不法な有形力の行使」の結果、人に怪我を負わせた場合は傷害罪となります。傷害とは、「人の生理的機能の侵害」とされており、具体例は、出血、骨折、打撲、騒音による不眠等です。

暴行罪が該当する事件としてよく見られるのが、飲酒などで酔っていている時に飲食店の店員やタクシー運転手などに手をあげたり、店や駅などで喧嘩をしたりするケースです。また、隣人間のトラブルなどから暴行に発展することもあります。

暴行事件で示談すべきかどうか

示談によるメリットとしては、以下が挙げられます。

  1. 被害者が警察に被害届を提出するまでに示談が成立していた場合、刑事事件化を防ぐことが可能である。
  2. 刑事事件化を防ぐことができることで、事件の報道や警察から職場等への連絡がなされる可能性が大きく減少するため、社会的な影響を抑えることができる。
  3. 刑事事件化後も示談が成立していれば、検察官から被疑者が事件について反省していると評価される可能性が高まるだけでなく、被害者の被疑者への処罰感情も低くなる可能性がある。
  4. 被害者との示談により前科のつかない不起訴処分となる可能性が高まる。
  5. 刑事事件化後も、刑事処分が軽くなるため事件の報道や警察から職場等への連絡がなされる可能性が低くなる。
  6. 執行猶予付きの判決や罰金判決にとどまるなど、刑罰が軽くなる可能性が高まる。
  7. 示談金を支払うことで被害者への損害賠償義務を免れる以上、被害者から損害賠償請求をされない。

このようなメリットがあることから、暴行事件における示談の必要性は高いといえます。

暴行事件の示談交渉の流れ

示談交渉の流れは以下のとおりです。

  1. 謝罪文や示談金などの示談に向けた準備
  2. 弁護士が捜査機関を通じて被害者へ連絡
  3. 被害者の同意に基づき示談交渉
  4. 被害者と合意に至れば示談成立

以下それぞれを解説します。

①謝罪文や示談金などの示談に向けた準備

被害者との示談交渉を行う前に、弁護士と示談金の用意をしたり、謝罪文を作成したりすることが考えられます。被害者に謝罪文や示談金を受け取っていただけるかはまだ未知の段階であっても、いざ交渉を開始した後に「実はまだお金が用意できていませんでした」というのは非常識です。
もし示談金の用意が苦しい場面でも、その時点での最大限の誠意の形となる金銭を用意することや、今後の資金計画などを予め具体的に検討しておくことが望ましいです。

謝罪文については、弁護士のアドバイスを受けない「生の言葉」で書くことが最も重要です。弁護士のアドバイスを受けて書かれた謝罪文は、検察官や裁判官には、一目瞭然です。そのような謝罪文は意味がなく、かえってマイナスに評価されてしまう危険もあります。一方で、謝罪文の形式面やニュアンスなどについては、経験豊富な、示談に強い弁護士によるアドバイスが必要でしょう。

例えば、被害者を一層不快にさせてしまうような内容がないか、被害者に到底受け入れがたいような「独りよがり」な動機が書かれていないかなどです。その他、書き方として、乱雑・読みにくい文字で書いていないか、一文字一文字丁寧に心を込めて書いているか等も、誠意を伝える上で当然重要です。

②弁護士が捜査機関を通じて被害者へ連絡

示談の準備が整ったら、まずは捜査機関に対して、謝罪を伝えたいため弁護士が被害者側と連絡を取ることが可能かどうかを問い合わせます。連絡を受けた捜査機関は、被害者側に連絡し、こちらの意思を伝達した上で、弁護士と連絡を取っていいか否か、被害者側から返答を受けます。被害者側が弁護士と連絡を取っていいと返答してくださった場合には、弁護士限りとの約束の下、被害者側の連絡先を教えていただくことができます。

③被害者の同意に基づき示談交渉

示談交渉は、何よりも誠意をもって行うことが大切です。被害者と対面で弁護士が会って実施するか、もしくは電話で行います。被害者との間で示談がまとまった場合、弁護士が作成した示談書を取り交わすことになります。一般的に、示談書は2通作成しそのうち1通を被害者にわたす形となります。
先程も述べたとおり、金額面だけでなく、被害者がどのような思いを持っておられるかは、実際に交渉を始めてみないと分かりません。

被害者のことを強引に説得し、十分納得が得られない中で示談をしても、不起訴処分が得られないリスクが高いです。なぜなら、示談が成立した後、検察官が被害者に電話などで連絡し、示談が真意に基づいてなされたものかについて確認をします。そこで、被害者が実は示談に納得していないことが判明した場合、示談が成立して示談金を支払ったとしても、処罰感情が緩和していないとして起訴されてしまうことがあるのです。
ですから、示談の影響などについて丁寧に説明し、被害者の十分な納得を得た上で示談を締結する必要があるのです。

④被害者と合意に至れば示談成立

無事合意が整えば、必要な書類に署名・押印等を行うことで、示談が成立します。示談金の支払方法は、示談成立日に現金で交付する場合や、後日に振込入金したり、分割払いにて入金していく等の様々な方法があります。なお、仮に、当初の示談が、実被害額よりも少ない金額で成立したものの、後日に加害者側の資金状況が整う等して追加で示談を希望する場合には、改めて被害者側にその旨申し入れるケースもあります。

示談書の作成は必須ではありませんが、後にトラブルになることを回避するために作成しておくべきでしょう。示談が成立した後に、弁護士は、示談書のコピーを捜査機関に提出するなどして、示談成立の結果を伝え、不起訴処分等を求める意見書などを作成し、依頼者の利益になるよう活動します。
弁護士が示談書を取り交わしたことと示談金を支払ったことを警察や検察に伝えると、示談が成立したことを考慮して刑事処分が下されます。被害者との示談が成立すれば不起訴処分で終了する可能性が高まり、さらに捜査段階では被疑者がただちに釈放されることも多くなります。

暴行事件における示談金はどう決まるか

示談金とは、事件の精神的苦痛に対する慰謝料や、物的損害などの不利益の補填、謝罪として支払う和解金などをすべてまとめたものです。インターネットなどには示談金の相場と言われる金額が掲載されていることがありますが、示談金の金額は加害者と被害者両者の合意により決まるものであり、事案の性質によってはより高額になる可能性もあります。

例えば、被害者の持ち物を壊してしまった場合や衣服を汚してしまった場合には、修理費用やクリーニング費用の負担が発生し、その分示談金は高額になります。

暴行事件の示談交渉には弁護士が必要

示談交渉をうまく進めるためには、事実上、弁護士への依頼が必須です。
加害者本人が暴行の被害者と直接やり取りをすることには、大きな困難を伴います。まず、逮捕されている場合は交渉のために動くことができません。身柄を拘束されていなかったとしても、原則として、捜査機関が被害者の連絡先を加害者に教えることはありません。被害者は事件による恐怖心や怒りを抱えているので、加害者とは関わりたくないと考えることは自然です。「示談に応じない」と厳しい態度を取られる場合も多いでしょう。

弁護士であれば、逮捕後すぐに面会をし、逮捕中であっても示談を進めることができます。また、加害者本人ではなく第三者である弁護士に連絡先を教えるという条件であれば、被害者の連絡先の入手が見込めます。

不起訴獲得、前科回避の必要性

示談が成立すれば、「両者の合意により解決した」と判断され、不起訴となる可能性が高まります。暴行で起訴されると有罪率は99%なので、前科を付けないためには示談を成立させ、不起訴処分を獲得することが重要です。
弁護士に依頼すれば、適切な内容・形式で示談書を作成することができます。示談書を作成し、捜査機関に提出することで、起訴・不起訴の判断材料になります。

高額請求への対抗策

被害者が高額な示談金を請求してきた際、加害者本人が直接被害者に減額交渉をすることは難しいでしょう。適正な示談金額についての知識があり、第三者の立場から被害者の感情に配慮した交渉を行うことができる弁護士であれば、減額交渉を円滑に進めることができます。

暴行事件での示談交渉における解決実績

当事務所における暴行事件で示談が成立した事例をご紹介します。

まとめ

暴行罪における示談交渉は、加害者が前科を回避し、被害者が迅速に問題を刑決するための有力な手段です。裁判を回避し、双方が納得した形で問題を解決できる可能性が高まります。しかし、示談交渉は慎重に進めなければならず、法的な知識や経験が求められます。ここで、弁護士の役割が重要になります。弁護士は、加害者と被害者双方の立場を理解し、適切なアドバイスを提供します。特に、示談書の作成や交渉の過程で法的トラブルを避けるためには、専門家のサポートが不可欠です。

弁護士が介入することで、交渉が円滑に進み、法律的に有効な合意に達することができます。示談交渉を行う際には、弁護士の協力を得ることで、双方がより安心して解決に向けて進むことができるのです。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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