大麻を使用したら捕まってしまう?
大麻の所持、譲り受け、及び譲り渡しについては、大麻取締法24条の2において罰則が規定されています。
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
しかし、条文には、「所持し、譲り受け、又は譲り渡した」とあるのみで、大麻の「使用」については規制されていません。(なお、大麻の所持、譲り受け、及び譲り渡しに関しては、あわせてこちらの覚せい剤や薬物事件で逮捕されたらをご覧ください。)
「所持」は違法なのに、「使用」はなぜ処罰されないのか
大麻取締法は、大麻草全体を規制対象にはしていません。大麻取締法第1条によると、成熟した茎や種子は規制対象から除くとされています。これは、大麻草全体に有害な物質が含まれている訳ではないからです。
大麻には、CBD(カンナビジオール)やTHC(テトラヒドロカンナビノール)などの成分が含まれます。幻覚作用等の有害作用を生ぜしめるのは、THCという成分で、これは、マリファナの原料にもなっています。THCが有毒性を持ち、大麻特有の精神活性作用、すなわち、多幸感、幻覚、妄想などを引き起こすのです。このTHCは、大麻草の樹液に多く含まれます。大麻草の花や葉っぱにはこの樹液が多く含まれているのに対し、成熟した茎や種子にはTHC成分はほとんど含まれていません。こうしたことから「成熟した茎や種子の部分は有害性がほとんどない」として規制対象から外されたのです。また、日本では伝統的に茎の部分は麻織物や麻縄に利用され、種子は七味唐辛子に使用されるなどして親しまれています。
ところが、これら茎や種子に全くTHCが含まれていないかというとそうではなく、微量なTHCが含まれていることがあります。そのため、この茎や種子が体内に入った場合に、尿検査で微量な大麻成分(THC)が検出されることが絶対ないとは言えません。そして重要なことは、尿として排出されたものが大麻の茎だったのか、種子だったのか、それとも樹脂(樹液が固まったもの)や花の部分や草の部分だったのか、特定できないことです。このため、尿検査で大麻の陽性反応が出たからと言って、それが規制対象である大麻の花や葉っぱ、あるいは大麻樹脂と言われるものを摂取したとは必ずしも言えないのです。
そこで、大麻にあたっては覚せい剤とは異なり、使用罪は処罰範囲から除外されたのです。決して有害性が小さいから不処罰とされているわけではありません。処罰範囲の明確化という、刑法の大原則である罪刑法定主義の観点から不処罰とされているのです。
しかし、大麻を使用した場合、大麻使用のための大麻所持、大麻譲り受け、大麻譲り渡しと密接にかかわっている場合がほとんどです。大麻の使用自体が罪でなくとも、所持、譲り受け、及び譲り渡しにより処罰の対象となります。
中村国際刑事法律事務所には、元検事である弁護士をはじめ、薬物犯罪の経験豊富な弁護士が多数在籍し、状況に応じた的確なアドバイスをすることが出来ます。大麻をめぐる問題でお悩みの方は、まず、弁護士に相談してください。
2021年、大麻取締法の改正検討へ
大麻「使用」罪創設か
大麻取締法は、1948年に施行されました。その後、何度も改正されてきましたが、2021年、大麻「使用」罪が創設されようとしています。大麻の使用は近年深刻化しており、大麻の使用をきっかけに薬物犯罪に手を染める人も多くいます。厚生労働省は、このような事態を改善するため、大麻の使用についても規制対象とすることを検討しているのです。
2020年12月、国連麻薬委員会は、大麻を「最も危険な薬物」から除外しました。これにより、世界における今後の規制緩和や、医療目的の使用が期待されます。しかし、大麻の危険性が全くないとされるものではなく、以前として大麻が依存性薬物として規制対象であることには変わりはありません。なお、確かに大麻が合法となる国もありますが、それは日本ではありません。また、合法であれば安全というわけではなく、やむを得ず合法化したという背景も多くあります。最高裁判例では、「大麻が所論のいうように有害性がないとか有害性が極めて低いものである とは認められない」(最判昭和60年9月10日)と述べています。
大麻を使った医薬品の取り扱い検討へ
現在日本では、大麻から製造された医薬品の取り扱いは禁止されています。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
四 医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この号において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと。
しかし、大麻には、医療における用途があります。上述のように、悪影響もあるTHCですが、鎮痛、鎮静作用や、抗がん作用があります。また、CBDには、高血圧・痙攣の緩和、不安や緊張、中毒の緩和、不眠症への効果など、様々な効果があります。抗がん治療にも、効果が期待できます。このため、医療用大麻を望む声は多く、既に海外には、医療用として大麻を使用することができる国もあります。
増加する大麻検挙数
日本の薬事犯罪の検挙者の大半は、覚せい剤及び大麻によるものです。厚生労働省ホームページによると、大麻取締法による検挙率は、平成25年には1,616人であるのに対し、平成26年には1,813となり、令和元年の4,570人に至るまで、年々増加を続けて、過去最多を更新しています。また、乾燥大麻の押収量は、平成27年から令和元年にかけて、4年連続で増加しています。
インターネットを利用した安易な情報収集や、危険ドラッグに対する取締の強化により危険ドラッグから大麻へと使用者が流れることが、大麻事犯の増加につながっていると考えられます。最近では、乾燥大麻及び大麻樹脂のみならず、大麻リキッド、大麻ワックスも存在し、摘発が相次いでいます。
大麻による悪影響について
大麻による悪影響は、少ないものではありません。大麻による悪影響としては、幻覚、幻聴や、これを原因とする自傷行為、酩酊状態、意識障害、生殖機能の低下があげられます。濫用すると、知覚の変化や情緒の不安定、集中力の欠如が起こります。また、長く続けていると、大麻精神病、無動機症候群、知的機能の低下が起こり得ます。今後、規制緩和によって、医療の現場における活躍の期待できる大麻ですが、同時に、大きな危険をはらむものなのです。
中村国際刑事法律事務所には、元検事である弁護士をはじめ、薬物犯罪の経験豊富な弁護士が多数在籍し、状況に応じた的確なアドバイスをすることが出来ます。弊所弁護士は、なぜ大麻に手を出すことになったのか、その経緯や動機、環境などをご本人やご家族とともに考え、今後の防止策の相談に乗ります。薬物依存の怖さを伝え、話し合い、二度と手を出すことのないよう、本人の更生に向けて粘り強く取り組んでまいります。
大麻をめぐる問題でお悩みの方は、まず、弁護士に相談してください。
まとめ
大麻をめぐる議論は日々進んでおり、今後、厳罰化や、反対に規制緩和が進む可能性があります。しかし、海外で多くのデータが収拾され、日本においてもその使用を求められている医療用としての大麻は別として、安易な大麻の使用により、身体に悪影響があることは科学的に証明されています。大麻の規制緩和が進んでいるからといって、単純に、「大麻は悪影響の全くない魅力的なものだ」、と考える事は出来ません。
そして、今後がどうであれ、現在、大麻の所持、譲り受け、譲渡しが、大麻取締法による刑罰の対象となっていることは事実です。大麻使用に罰則がないとはいえ、仮に使用したということであれば、少なくとも大麻の所持、譲り受けについて強い疑いがある状況にあると言えるでしょう。このような場合、一刻も早く薬物犯罪に強い弁護士に相談し、適切な対応を知ることが重要です。
中村国際刑事法律事務所には、元検事である弁護士をはじめ、薬物犯罪の経験豊富な弁護士が多数在籍し、状況に応じた的確なアドバイスをすることが出来ます。大麻をめぐる問題でお悩みの方は、まず、弁護士に相談してください。弊所における弁護活動は、ただ単に刑を軽くするとか、早く釈放するといった目先だけの弁護活動とは異なります。裁判を乗り越える、それだけでは薬物犯罪の弁護活動として不十分でしょう。私たち中村国際刑事法律事務所に所属する弁護士は、ご本人が今後、薬物を必要としない明るい未来に向けて一歩を踏み出せるよう、また、可能な限り寛大な刑を求めるための弁護活動を展開するとともに、人生の再出発に向けたトータルサポートをさせていただきます。
中村国際刑事法律事務所の弁護士は、数々の大麻取締法違反事件を担当しています
事例1
依頼者が知人を乗せて車を運転していたところ、職務質問をされて車内の捜索をされた。その際、車内から大麻樹脂が見つかり現行犯逮捕された事案。
後に勾留されましたが、被疑者は自分のものではないと否認していました。弁護士は、依頼人が釈放されるまで毎日警察署に赴いて刑事手続に関するあらゆる質問に答え、綿密なコミュニケーションを図りました。そして、これまで聞き取った事項をもとに、同乗していた知人が職務質問の際、車内に大麻樹脂を隠匿した可能性が排斥できないと主張しました。このような弁護人の適切な活動の結果、不起訴処分を獲得することが出来ました。
事例2
短期滞在ビザしか有しない外国籍の依頼人が、大麻を所持したまま飛行機に搭乗し、大麻を日本国内に持ち込んだとして空港で逮捕され、大麻取締法違反(輸入)、関税法違反で起訴された事件。
まず、本国の家族に協力をもとめ、裁判までの生活環境を調整しました。また、早期帰国を目指した取り組みを行いました。弁護人の熱心な活動により、早期解決に至り、保釈及び執行猶予を獲得しました。
中村国際刑事法律事務所には、元検事である弁護士をはじめ、薬物犯罪の経験豊富な弁護士が多数在籍し、状況に応じた的確なアドバイス及び指導を行います。薬物犯罪においては、早期に、専門知識をもつ弁護士に依頼することが大切です。大麻をめぐる問題でお悩みの方は、まず、弁護士に相談してください。