アダルトビデオを違法ダウンロードした事案で著作権者と示談が成立した事例
海賊版サイトに制作会社の許諾なく違法にアップロードされたアダルトビデオを依頼者が違法にダウンロードして制作会社の著作権を侵害したという公衆送信権侵害、複製権侵害の事案です。
依頼者は動画データを無料でダウンロードできると思い、ダウンロードリンクをクリックして操作したところ、それがファイル共有ソフトであり、依頼者も意図せずファイル共有ソフトをとおして不特定多数人に対して閲覧できる状態にしてしまうことになりました。この行為が動画データの公衆送信権侵害、複製権侵害にあたるとして制作会社がプロバイダに対して依頼者の発信者情報の開示を求める訴訟を提起し、依頼者の自宅に意見照会書が届けられた段階で弁護士が制作会社との和解交渉のため受任しました。
依頼者は、ファイル共有ソフトを使用していたという確定的な認識はなく、ダウンロードした動画データ自体も粗い静止画が再生されるのみであったため、意見照会書が届けられる数か月前にはすでにファイル共有ソフトとデータ自体を削除していました。
著作権は形のない財産であるため、形のある物を盗む窃盗罪や壊す器物損壊罪と異なり、単一の著作物に対して複数の権利侵害行為を観念することができます。違法アップロードされた動画データをさらに著作者の許諾無く複製し不特定多数人に対して送信することは新たな複製権侵害、公衆送信権権利侵害として刑事上も処罰の対象となります。
今回では、不特定多数人が閲覧できる状態に置いたことは間違いなく、制作会社の著作権を侵害していることに争いはないものでしたので、制作会社との和解成立による刑事告訴回避を目指しました。
弁護士は受任後、プロバイダからの意見照会書に回答するとともに、著作権者との和解のために当事務所弁護士との連絡を希望する旨回答し、著作権者との間で示談交渉に臨みました。
依頼者は本件著作物以外の著作物に関しても同様にダウンロードしていたことを自認したため、後日の紛争を回避するため、著作権者との間では著作権者が有するすべての著作物を対象として示談金を支払うことで合意に至り解決しました。
刑事事件に精通した当事務所ならではの弁護活動
一口に犯罪行為と言ってもその違法性の程度は千差万別で、それを一瞬で見抜いて弁護方針を立てることは刑事事件に精通していないとなかなか難しいです。
本件でも著作権という、侵害されたモノの性質及び保護法益を正確に把握し、犯行態様や犯罪後の事情を加味して違法性の程度を的確に判断し、それを検事説得で遺憾なく発揮しています。
当事務所の弁護士は、いずれも、検事の上を行く、つまり、他事件の処理に忙殺されて、一件一件を深くは考えていない検事をして、「なるほど」と唸らせる弁護活動を目指しています。
執筆者: 代表弁護士 中村勉