示談成立と再犯防止策につとめ不起訴処分を獲得
依頼者が路上において、被害者の背後から近付いて背中を飛び蹴りして転倒させ、さらに依頼者を追いかけようと起き上がった被害者を押し倒すなどの暴行を加え、よって顔面裂傷等の傷害を負わせたという傷害事件です。
この後警察から呼び出しが入り、当事務所に相談、受任に至りました。
依頼者は、「歩道は右側を通行すべきである」「相手が歩道の左側を通行し、ぶつかったにもかかわらずそのまま立ち去ったので、怒りが込み上げて背後から飛び蹴りをしてしまった」「反撃されると思ったのでさらに転倒させてしまった」と話していたため、弁護士はカウンセリングにてアンガーマネジメントの実践を試みました。
また、被害者との示談交渉を行い、依頼者が暴行に及んだ理由やアンガーマネジメントを実践していることなどを伝えた結果、円満な示談が成立しました。
示談成立後、すぐに検察官に意見書を提出して不起訴処分となりました。
事件のポイント
本件は、当初の暴行の動機として、被疑者にしてみれば一応「正当」な理由が存在するものの、一般人から見れば、また、少なくとも被害者側にしてみれば、いきなりそんな暴行をされるほどの落ち度があるとは言い難い事案です。つまり、歩道の左側を通行していたからといって、跳び蹴りをされるまでの「違法」とか「落ち度」はないと考えるのが普通でしょう。
したがって、本件の原因には、被疑者側のやや特殊な性格ないし思考方法やこれに基づく感情表現の短絡性が強く影響しているとみることができます。
このような事案においては、上記のとおり、被害者側にしてみれば、「その程度のことでなぜ跳び蹴りをされなければならないのか」と怒り心頭に発し、暴行の態様が強度かつやや執拗であることもあって、その感情が収まらず、示談等がそもそも困難であることも多々あります。また、被疑者側の上記のような特殊な考え方等については、これをコントロールする方法を被疑者自らが身につけないと、また同様の犯行に至るおそれもあります。起訴など厳重処分がなされても全くおかしくない事案です。
そのような状況の中、本件の弁護活動として、闇雲にただ被害者に示談を迫るのではなく、まずは被疑者自身に自らを見つめさせてその感情等をコントロールする方法を身につけるよう現に努力させ、再発防止を図りました。その上で、被害者に暴行の動機や、その原因に真摯に向き合う被疑者の現状等を粘り強く説明して納得を得ることができました。
通常は示談が困難で、したがって不起訴処分を得ることも難しい事案においても、事案とその原因等を深く洞察した上でそれに即した効果的な弁護活動を実施すれば、不起訴その他所期の結果を得ることも不可能ではありません。