控訴審で示談成立し原判決破棄を獲得
3件の特殊詐欺事例であり、被害金額はそれぞれ200万円、100万円、0円(未遂)でした。
控訴段階で受任し、示談は200万円の件でのみ成立しており、他の件は1審弁護人が交渉したものの、未成立でした。
第一審において法律上の問題点は特になく、減軽できるかどうかは、1審の段階で断られている2件について、控訴審で示談できるかにかかっていました。
弁護人はまず、本人に謝罪文を書いてもらい、示談金を用意してもらった上で、示談未成立の被害者に連絡し、示談交渉を試みました。
具体的には、被害金額以上の示談金を預かった上で、被害者に連絡し、示談を申し入れました。結果、100万円の被害者については、示談を成立させることができました。
被害額0円の未遂の被害者は複数回電話し、「お気持ちだけで結構です」との返答でしたが、こちらから示談金を提示した事実については、示談経緯報告書に記載して事実取調べ請求し、控訴趣意書にも記載しました。他にも本人が特殊詐欺に関わった経緯、原判決後の反省の深まりなどについて具体的に聴取し、控訴趣意書に反映しました。
更に、依頼者の原判決後の反省状況を具体的に示すため、依頼者に改めて反省文を書いてもらい、それに加えて、雇用主の嘆願書と同居の母親の嘆願書にも、原判決後の依頼者の反省状況を具体的に書いてもらい、事実取調べ請求を行いました。
結果として、依頼者には古いとはいえない服役前科があり、執行猶予を付けることはできないとの判決でしたが、4か月の減軽に成功しました。
事件のポイント
コロナ禍の中、非対面犯罪である特殊詐欺は増加傾向にあり、たとえ受け子、出し子などの末端関与者であっても、前科前歴がなくても、原則、実刑判決です。その中で、もし被告人が犯行を心から悔いていて、反省の気持ちが深まっているとみられる場合には、弁護人としては、執行猶予付き判決を求め、それが無理でも可能な限りの減軽を求めて、弁護活動を進めます。
本件は、一審弁護人が示談を成立させることができなかった犯行につき、控訴段階から受任し、弁護人となって示談を成立させ、その結果、減軽を獲得することができました。
前科があり、かつ、複数の犯行に加担し複数の公訴事実で起訴された本件では、執行猶予獲得はできませんでしたが、被告人質問において裁判官の質問に答えていた被告人の一語一言は素直で、反省の気持ちが現れていました。
できれば服役後、仮釈放をとり、一日でも早い社会復帰をして再出発してもらいたいと感じた事件でした。
執筆者: 代表弁護士 中村勉