粘り強く連絡を待った示談対応で示談成立し不起訴
病院の清掃員をしていた被疑者が、勤務先同僚の着替えを盗撮するため、控室兼更衣室に動画撮影モードにしたスマートフォンを設置したところ、被害者に発見されて社内で犯人捜しが始まり、結局、上司に自分から名乗り出て、警察にも会社の上司と一緒に自首しに行ったという盗撮事例です。
依頼者は、被害者に対して早く謝罪したいという意思が強かったため、受任後早々に謝罪文と示談金を準備してもらい、警察に被害者取次ぎを依頼しましたが、被害者は「家族と相談したい」と言っているとのことで、すぐには連絡先を入手することができませんでした。
弁護人は被害者を急かすデメリットの方が大きいと判断したため、被害者が連絡先を開示してもよいと思ってもらえるまで辛抱強く待つことにしたところ、それから約1か月後に連絡先を教えてもらうことができました。
元々示談交渉の準備は完了していたため、連絡先入手後はすぐに被害者に連絡し、その翌日には示談交渉のアポイントを取りました。当日は、本人の反省状況等についてきちんと説明したところ、その場で示談締結に至りました。
結果、不起訴処分を得ることができました。
事件のポイント
盗撮に限らず、示談交渉は被害者の方のペースに合わせるべきです。依頼者である被疑者は早急に示談をまとめることを要望するでしょうが、示談を急ぐあまり、何度も連絡、接触を試みるのはかえって逆効果となります。
一度で会ってもらえない場合には、送検まで待つこともあります。とにかく粘り強さが必要です。
本件は特に同じ職場内の犯行なので、被害者の方も複雑な処罰感情を抱いていると思われ、待ちの姿勢で対応したのが良かったです。
執筆者: 代表弁護士 中村勉