粘り強い示談交渉で保護観察付執行猶予
準強制わいせつの事例をご紹介します。ご相談者が、被害者の乳房を着衣の上から数回撫でて触った事例で、結果的に保護観察付きの執行猶予を獲得しました。
本件は、被害者の処罰感情が強く、当初示談交渉が難航しておりました。受任段階ですでに起訴が確定していた事案で、相談者と被害者の供述の食い違いがあり、調書を不同意にすると相談者が反省していないなどと誤解され、焦点がぼやけるおそれがあったため、調書は同意して、被告人質問で対処する方針としました。
そのような経緯から当然、被害者の処罰感情が強く、高額な示談金や、現実的ではない立入禁止条項を被害者から提示されてしまいましたが、被害者にも依頼者の状況や支払える金額についても何度も丁寧に説明し、相談者が捻出できる最大限の金額を用意できたこと、粘り強く交渉を継続したこともあり、難航していた示談を、結審ギリギリのタイミングで締結させました。
また、今後の再犯のおそれがないことを説得的に伝えるため、相談者には性障害専門クリニックに通院してもらった上でクリニックには治療計画書を作成してもらい、相談者の親や勤務先社長には今後の監督を誓約する旨の嘆願書を作成してもらいました。
このような弁護活動の積み重ねが実を結び、無事執行猶予付き判決を獲得しました。
事件のポイント
公判弁護は常に戦略的に方針を決めるべきであり、検察官書証の同意不同意にあってもいたずらに瑣末な点で一部不同意にするよりも、全部同意して反省の情を示す方が良い場合があります。
本件で仮に一部不同意などで争う姿勢を示したなら、被害感情を損ね示談ができず、実刑判決となったと思われます。
執筆者: 代表弁護士 中村勉