早期の弁護活動で不起訴処分を獲得した事例
お酒を飲んで自宅に帰宅中の被疑者が、深夜の路上にて背後から女性に抱きついた上、マスクを剥がしてキスをし、臀部などを触ったとされる強制わいせつ事件です。被疑者は事件から2か月後通常逮捕され、弁護士が接見をして受任した事案です。
接見に際し、被疑者は、当日のことはお酒を飲んで覚えていないと話していました。弁護士が被疑者から事件前後の動向について詳細に聴取したところ、被疑者は「事件当時のことはお酒を飲んでいてほとんど覚えていないが、現場にいたことは間違いなく被害者がうそをついているとは考えられないので事実だと思う」と供述しました。
受任後、弁護士は直ちに検察官に対して被害者への取次を依頼しました。当初、被害者は被疑者の供述状況(「よく覚えていないが被害者が言うのであれば間違いないと思う」)を踏まえて連絡先の開示に難色を示しましたが、なんとか「弁護士から話だけは聞いても良い」との意向を示され、面談のお時間をいただけることとなりました。面談に際し、被疑者の謝罪の意向、再接触防止策を伝えたところ、解決に前向きな意向を示していただきました。
深夜路上という事案の性質上、被疑者と被害者は生活圏が重なっていましたが、柔軟な誓約条件を設定することで被害者の連絡先の開示を受けてから1週間以内に円満な示談が成立することになりました。
弁護士は同日、裁判所に対し勾留取消請求を申し立て、翌日勾留が取り消されて身柄釈放に至り、不起訴処分となりました。
逮捕直後から被疑者の記憶喚起を促し、認否を見極めて被害者への誠意を示し、早期解決に至った事例です。
事件のポイント
酔って覚えていない旨の弁解は、否認して争っても奏功することはまずなく、本件でも認める方向で弁護活動を進めたのは正しい方針であったと思います。
示談交渉においても被害者の今後のセキュリティに配慮し、柔軟な条件設定で示談合意な持ち込んだもので、起訴回避できました。
執筆者: 代表弁護士 中村勉