家族への連絡配慮依頼の対応も行い、入念な再犯防止策構築し不起訴処分を獲得
喫茶店内での盗撮事例です。
依頼者は男女共用トイレに小型カメラを設置後、しばらくして回収に戻ると第三者によって持ち出されていました。
店員により既に通報済みである可能性が高かったことや、カメラに自身の姿が写っている可能性があること、防犯カメラやカードの支払履歴から特定される可能性があったこと、不安で眠れなかったことなどから、自首を決意。
その後、当事務所に相談があり、受任に至りました。
弁護活動
弁護人は警察署へ自首同行を行いました。
結果、カメラは店員により落とし物として保管されており、自首をきっかけに本件事実が発覚することになりました。
弁護人は自首状及び逮捕回避の意見書を提出し、警察官からひとまず在宅捜査で進め、かつ警察段階では家族に知らせないとの言葉をもらうことができました。
弁護人は警察と連絡を取り合い、依頼者の家庭環境への配慮や取調べ時期の調整も行いました。
被害店舗へは、本人が警察と現場を確認した際、警察官立会いのもと直接謝罪しました。
被害店舗からも被害届を出さないとの言葉をいただき、侵入行為については立件されませんでした。
盗撮の被害者の特定は当初から難しいと言われており、結局特定することはできず、余罪については立件されませんでした。
その後、依頼者は送致され、検事からの呼び出しを一度受けました。
弁護人は、呼出し前など定期的に依頼者と打ち合わせをし、反省文の作成、献血、専門クリニックへの通院を行い、取調べ前に検事に提出することができました。
検事からは、自首後の活動から反省の態度が伝わったため、今回に限り不起訴とする方針と言われ、不起訴処分を得ることができました。
事件のポイント
自首をする際の関心としては、自首をして逮捕を回避したいという点と、もしかしたら被害届が提出されておらず、自首をするとかえってそのことをきっかけとして前科がつき、「ヤブヘビ」になってしまうのではないかという点です。
そこで、自首をすべきかどうかを考えるとき、果たして被害届が出ているか、被害届が出ているとして自分が犯人であると警察が特定出来るかを専門家である弁護士の助言を基に判断する必要があります。
では、どういう場合に被害届が出るかというと、被害者が犯罪に気づいたとき、そして被害届を出して検挙してもらわないと、同じような犯罪被害に遭うおそれがある場合です。
今回のような、トイレに隠しカメラが遺留されていたというケースは設置態様にもよりますが、カメラの携帯自体から直ちに盗撮犯罪の痕跡と推察することが出来ます。そうすると、被害店舗としては、二度と同じ犯行が繰り返されないように被害届を警察に提出し犯人検挙を求めるでしょう。
今回、被害店舗が被害届を提出しなかった事情は定かではないですが、自首するという判断は正しかったと言えます。
執筆者: 代表弁護士 中村勉