否認主張で完全黙秘を実行し不送致を獲得
アルバイト掲載サイトから応募した事務所スタッフの仕事が、実は特殊詐欺の受け子であったという事案です。少年本人は正規の仕事と信じて稼働しており、犯罪に関係するものだとは思わなかったとして、詐欺の故意について完全に否認していました。
弁護人が接見時に少年から丁寧に話を聞き取ったところ、アルバイト掲載サイトの外形、応募時のやりとり、少年が実際に稼働した内容 等には、怪しい部分が一切ないとはいえないものの、少年が詐欺もしくは何らかの犯罪に関するものだと疑いを抱かず、特に知識の乏しい未成年では、正規のアルバイトだと信じてもおかしくないと考えました。弁護人は、少年には詐欺の故意が認められず犯罪は成立しないということを、少年の話から確信しました。
弁護人が選任される前、少年に対しては警察が誘導的な取調べを行っており、少年がその誘導に乗った答えをし、少年にとって不利な内容の調書が作成されてしまっていました。そこで、少年には取調べに対して完全黙秘をさせることとしました。接見において、警察が黙秘を破るためにどのような言葉がけをしてくるかを事前に説明し、取調べで黙秘をするための練習を行いました。
少年から聞き取った内容について詳細な意見書を作成し、少年には詐欺の故意が認められないため犯罪は成立せず、本件については不起訴処分とすべきであることを主張し、検察官に提出しました。
結果として、弁護人の主張が認められ、20日間の勾留満期の後、少年は家庭裁判所に送致されることなく釈放され、その後不起訴処分が確定しました。
事件のポイント
少年は、知識の不足や精神的な未熟さから、捜査官の誘導や威迫的取調べに迎合して自白しやすい傾向にあるとされます。そこで、早期に弁護士を選任し、真実に反する自白をしないよう専門的なアドバイスを継続的に行うことが必要です。特に、本件では、詐欺の犯意という少年の「内心」が争点の事案ですので、その点について少年がいかなる供述をしているかということは証拠上極めて重要です。
本件においては、弁護士が少年から事案の内容を虚心坦懐に詳細に聴取して争点を的確にえぐり出した上、その争点に対する効果的な対処方法をアドバイスすることによって、少年が上記のような自白に及ぶことを阻止し、検察官から「事実上無罪」の処分を獲得した成功事例です。