取調べ対応の適切指導や環境調整も行い不起訴
友人と共に暮らしている被疑者宅に、友人の大麻所持の疑いで家宅捜索が入りました。
友人の所持していた大麻1グラムと吸引器具や携帯が押収され、尿検査も実施されました。
友人と被疑者の尿検査結果は陽性でした。当時被疑者は、警察には「何も知らなかった」と伝えていました。
当事務所で受任後、弁護士と被疑者との間で打合せを行い、被疑者自身は大麻を購入するなどしておらず、大麻の売人とのつながりもなく、かつ、友人から勧められたタイミングで使用したにとどまっていたこと等を確認しました。
このため、被疑者と相談の上、不起訴処分を目指して、黙秘する方針としました。
友人は大麻の売人との繋がりが多数あったようで、被疑者の意向もあり、今後の環境調整の観点から、友人との同居は解消することにしました。
被疑者は逮捕されたものの、弁護活動の結果、不起訴処分となりました。
逮捕後、弁護士は被疑者の勤める会社とも何度か連絡をとりました。
依頼者の日頃の勤務態度が良好であるため、不起訴処分となった場合には雇用を継続するとの言葉もいただくことができ、検事にも早期釈放の必要性を伝えました。
結果として、不起訴処分を獲得できました。
事件のポイント
大麻でも覚せい剤でもそうですが、友人宅にたまたま遊びに行った際、警察による捜索差押が入った場合に違法薬物が発見されれば、その場に居た人は全員逮捕されます。
もちろん、捜索差押令状はその友人を被疑者とするものであり、何らかの情報や証拠に基づき令状が発せられるわけですが、必ずしもたまたま訪問していた人をターゲットにはしていません(その場所が大麻吸引の溜まり場である場合は参加者全員を一網打尽しようということもあります)。
ターゲットにしていなくてもその場に居た人は「共同所持」の客観的要件をみたし、逮捕されるのです。尿検査が陽性であればなおさらです。
しかし、主観的要件である「大麻が存在することを知っていたこと」の立証責任は警察、検事にあります。
逮捕されたものはそれに協力する義務はありません(自己負罪拒否特権)。
今回の黙秘戦略はそのような意味合いをもっています。
執筆者: 代表弁護士 中村勉