被疑者利益第一に保釈獲得のうえ執行猶予
被疑者は大麻を含む液体を所持していたところ、大麻取締法違反の容疑で逮捕されました。
本人は初回接見時点から大麻所持とその故意を認めていましたが、取調べでは「CBDオイルだと思っていた」として故意を否認しておりました。
何とか不起訴を目指したいという意向が強かったため、まず黙秘をして嫌疑不十分を理由とする不起訴を目指しました。
また、事件当時、本人は実家を離れて交際相手と同棲していましたが、そのことを捜査機関や裁判所に話したくないという意向も強かったため、信頼関係を構築して話す必要性を説得しつつ、本人の意向も尊重して慎重に活動を進めることを目指しました。
結局、起訴されたため、弁護人は早期の保釈と公判審理の終結を目指しました。
弁護人は公訴事実を認める誓約書を添付して保釈が認められ、公判審理も簡潔な被告人質問を意識して行い、裁判所が即日判決できるように工夫しました。
結果として、即日判決(執行猶予付判決)により早期終結に至りました。
事件のポイント
否認事件は常にリスクがあり、特に認識に関する否認はこれを支える積極証拠がない限り、ほとんどの検事は信用せず右から左へと起訴します。当然、保釈も直ぐには認められませんし、長期拘束のリスクがあります。
被疑者本人が否認している場合、当初は黙秘しつつ、検事面会を通じて起訴意図があるか嫌疑不十分心証かを探り、起訴心証で、かつ、公判で無罪を獲得する可能性がほとんどない場合は自白に転じるのも被疑者利益になることが多いので、慎重に活動すべきです。
本件は捜査段階では起訴か不起訴か心証が取れなかったために否認を通しましたが、起訴後すぐに自白することで否認事件にしては早期に保釈を獲得できました。
検事は、「ダメ元で黙秘し、起訴されたら自白する」という態度を嫌い、保釈に強く反対したり、公判での尋問が厳しくなったりすることがあります。
リスクを分析しつつ、あくまでも被疑者利益を第一とした弁護活動が求められます。
執筆者: 代表弁護士 中村勉