営利目的の罪名落ちで執行猶予
同級生に対して乾燥大麻25グラム、大麻リキッド6本を数十万円で譲渡したという大麻取締法違反(営利目的譲渡)の事案です。
譲受人が乾燥大麻3グラムを所持していた際に警察官から職務質問されたことで本件譲渡が発覚しました。本人は購入原価のまま横流ししたとして、譲渡の事実は認めていましたが、営利の目的を否認しておりました。
本件は、遠方で一人暮らしをしている息子が大麻を売買したことで逮捕されたとのご家族から相談があり、受任に至りました。弁護士が本人から事情を聞くと、勾留事実は大麻の営利目的譲渡でしたが、譲渡の目的、動機等を踏まえると、営利目的は認定できないと思われる事案でした。
そのため、譲渡の事実は自白しつつも、大麻の仕入れ先や販売先、頻度、金額などの営利目的を推認させる間接事実については黙秘をする方針を取り、営利目的の罪名落ちを目指しました。
結果として、営利目的での起訴は見送られ、単純譲渡での公判請求に至りました。起訴後直ちに保釈が許可されました。
公判では、遠方に住んでいたご家族が一時期生活を共にしていたこと、事件後に連絡を密にして交流を深めたこと、職場復帰を果たしていることなどの大麻との結びつきが断ち切られたことを主張して、執行猶予付きの判決を得ることができました。
事件のポイント
営利目的のない単純譲渡の法定刑は5年以下の懲役ですが、営利目的譲渡となると7年以下の懲役、又はこれに200万円以下の罰金が併科されるという重い罰となり、起訴されると執行猶予付き判決を得るのが困難となりますから、同じ譲渡でも、営利目的が付くのと付かないのとでは雲泥の差があります。
本件においては、譲渡が有償であり、譲渡された大麻の量も少なくないことなどから、捜査側としては依頼者を営利目的譲渡として立件・逮捕したものと思われます。
しかしながら、弁護人としては、本件が購入原価のままの譲渡であり、依頼者が利得を得ていないこと、譲渡先が不特定の相手方でなかったことのほか、譲渡の目的、動機等から営利目的は認められないと早期に判断し、黙秘により捜査側に余計な情報を与えない方針を採った上、検察官に対し、営利目的のない譲渡で起訴すべき旨を意見書で主張した結果、検察官をして、営利目的は立証しきれないと判断させて単純譲渡で起訴させたという成功事例です。法定刑の軽い単純所持での起訴であるがゆえに、保釈も認められやすく、執行猶予付き判決も獲得することができました。
一旦営利目的で起訴されてしまうと、裁判でそれを覆すのはより困難となりますから、捜査段階から迅速かつ適切な弁護活動を行うことの重要性がよくわかる事案です。