示談成立で不起訴を獲得
公然わいせつの事例をご紹介します。マンションの共有スペースでの公然わいせつ事件で、結果として不起訴処分になったケースです。
事案の内容は、依頼者が家族の住むマンションの共有スペースで公然わいせつ行為に及び、住民の通報により逮捕された、というものです。
元々、家族と通報者において刑事・民事両面のトラブルが生じており、親類が退去を求められているという険悪な状況下、依頼者が犯行に及んだ、という特殊かつ複合的な経緯がありました。被害者にしてみれば依頼者家族との度々のトラブルに悩まされているという立場ですから、当然、被害感情が激しいことが懸念されました。
弁護人は以上の点を留意しつつ、示談を見据えた活動を開始しました。
まず速やかに検察官に連絡を取り、略式起訴方向であったところを示談交渉の決着まで待機を要請し、被害者へのアプローチに際しては、依頼者本人はもちろん、家族全体としての謝罪の意思を丁寧に伝える一方で、家族とのかねてからのトラブルと、依頼者による今回の犯行は別個であることをはっきりと主張するという方針で示談交渉を展開しました。
交渉の末、被害者からひとまず当座の解決を図ることの理解を得て、依頼者の不起訴処分に繋がりました。
事件のポイント
隣人トラブルは、通りがかりの第三者とのトラブルと異なり、長年にわたる関係性が前提にあって根が深く、複数の小さなトラブルが重なり合って刑事事件へとエスカレートすることが多いです。
このようなケースの示談交渉は、理想的には過去に遡って全てのトラブルを包括的に解決するのが望ましいですが、それが難しく、示談交渉が長期化しそうなときには、交渉対象を問題とされている刑事事件に絞り、適正な解決金を提示して、かつ、紛争蒸し返しを避けるためにしっかりとした清算条項を示談書に盛り込むことが肝要です。
本件ではそのような手法を駆使して、この種事案には珍しく短期間で解決をみた事案です。
執筆者: 代表弁護士 中村勉