捜査状況に応じた的確な弁護方針で執行猶予判決を獲得
インターネットにて組織的に売春あっせんをしていたという、売春防止法違反の事例です。
依頼者の役割はインターネット上に「#せふれ募集」などと投稿し、ダイレクトメールが来た人に対して、マニュアル通りに返信し、売春条件が成立すれば指示役に報告していた「打ち子」でした。約10か月間稼働し、売春あっせんの対価として組織から報酬100万円を受領しており、売春あっせん容疑で逮捕されたというものでした。
依頼者の逮捕後に受任し、依頼者は「勾留事実の犯行は実行していない」と供述しているため、実行役は別の打ち子であると思われました。よって、他の打ち子の実行行為について、法的責任を追及できるのか問題となりました。
弁護人は、打ち子らはそれぞれ独立した末端者であり、打ち子同士の共謀は認められないことを主張して嫌疑不十分を目指しました。
捜査段階では、別の打ち子との共謀や犯意に疑問があったため、黙秘の方針を取りました。黙秘継続中であっても、検察官に対して接見禁止解除の根回しや証拠の心証を探ることにより、家族との書面の授受については解除されました。
最終的に、依頼者の稼働期間、報酬額などからして「共謀は認められる」との結論に至り、起訴後の保釈も見据えて黙秘を解除しました。起訴後、直ちに保釈請求をしたところ、無事保釈が許可されました(検察官準抗告棄却)。
結果として、執行猶予付判決を得ることができました。
依頼者が当時金銭苦から違法行為に加担したため保釈後は就職活動を進め、無事第一回公判期日までに正社員として就職することができ、生活環境の改善を主張立証することができました。
その他、就職活動や年末年始期間の親族団らんのための旅行許可申請、制限住居変更申請は問題なく進み、依頼者の「正当な利益」を実現することができました。
事件のポイント
本件は組織的犯罪で、ネットを介して組織が統率され、多数の犯罪行為が反復される類型です。悪質な犯罪で起訴不可避の事案です。
共謀については共犯者間で面識なくても順次共謀が認められます。本件では本人が否認した関係から黙秘を勧めてはいますが、事案によっては保釈の確実な獲得のためにタイミングを見て黙秘解除もあり得ます。
検事は黙秘したことを理由に保釈に頑強に反対しましたが、準抗告に勝ち、早期の保釈を獲得しています。
公判戦略も認めに転じ、猶予を獲得できた点で参考事案となります。
執筆者: 代表弁護士 中村勉