同種前科がありながら治療指導で執行猶予を獲得
SNSで知り合った未成年の男子を車に乗せ、最終的にはホテルに行って、男子の陰茎を手淫したという、わいせつ誘拐・強制わいせつの事例です。
依頼者には、同種事案の罰金前科がありました。
被害者側には示談に応じていただけなかったものの、検察官を通して被害者側の処罰感情がそれほど強くないことを知ることができたため、処罰感情について検察官より証拠化をしてもらうように交渉しました。
起訴後、証拠開示を行い、その証拠を入手することができたので、裁判では弁護側から証拠請求を行いました。
依頼者には直近に同種事案の罰金前科があり、性に対する偏った嗜好が見られたため、専門のクリニックに通院して治療に励んでもらいました。裁判では、被告人質問で、クリニックを通して学んだことを詳しく話してもらい、前刑後の状況と現在の状況との違いを強調しました。
加えて、依頼者が保釈中に毎日記した日記や、依頼者の社会復帰後(執行猶予付き判決であれば判決後すぐ、仮に実刑判決であったら服役後)に雇用を約束してくれる雇用主の上申書を、裁判において証拠請求しました。
これらの弁護側立証が功を奏し、同種前科がありながら、執行猶予付き判決を獲得することができました。
事件のポイント
この種の事犯では、依頼者に罰金といえども性犯罪系の前科があり、しかもその前科からそう時間が経っていないのに再度の犯行が行われた場合、公判請求され、かつ実刑判決となる可能性が相当にあります。それでも執行猶予付き判決を目指すには、まずは被害者との示談が決定的に重要となります。
しかしながら、被害者のご意向により、弁護士を通じたとしてもどうしても示談に応じていただけないことが、残念ながら少なからずあります。
本件では、その場合でも諦めず、検察官に対し、被害者の処罰意見の証拠化を促し、また、依頼者自身の治療、今後の雇用条件の整備など再犯防止に向けた環境を整え、日記による依頼者の反省状況を明確化するなどの粘り強い弁護活動を実施した結果、おそらくギリギリで執行猶予判決を獲得できた成功事例です。