窃盗事件で示談の締結なく不起訴処分となった事例
依頼者は商業ビル内の店舗で複数回に渡って万引きを繰り返していたところ、店舗入り口のブザーが鳴り店員に呼び止められ、事件が発覚しました。
最終的には弁護活動の結果、不起訴処分となりました。
商業ビル内の大型チェーン店が被害店舗であったため、示談交渉が難航し、迷惑料等の受け取りや被害届の取り下げは実現しませんでした。
しかし、粘り強く交渉交渉を続けた結果、謝罪文の受け取りに加え、各店舗担当者から、「反省していると思います。」「更生の余地はあると思うので、頑張ってください。」と依頼者の謝意を汲んだ言葉をいただくことができました。
弁護人はその交渉の様子を示談経緯報告書にまとめ、捜査機関に提出しました。
依頼者は責任能力にも問題がある可能性があったので、クレプトマニア治療の通院を続け、心理士の意見書を提出いたしました。
これらの弁護活動の結果、不起訴処分となりました。
事件のポイント
大型商業施設やコンビニのチェーン店などは、会社の方針として、万引き犯罪に対し、示談はしないというケースが多いです。
官公庁及び民間団体の調査によれば、万引きによる被害総額は年間4000億円を超え、オレオレ詐欺の被害総額の約10倍になるというのですからこうした会社の厳しい対応にも理由があります。
一方で、いわゆるクレプトマニアと呼ばれる依存症に基づく常習行為は病気の側面があり、刑罰による威嚇、厳罰主義は必ずしも犯罪減少に効果がないとも言われています。こうした中で、弁護士としての役割の要となるのが再犯防止のための活動であり、依存症専門クリニックとの連携による司法プログラムの策定、実施が重要になります。
当事務所では専門クリニックと提携して実績を積み上げてます。
また、再犯防止策の一環として、示談活動もまた重要です。示談交渉を通じて被害感情を被疑者に理解させる努力は再犯防止に必要不可欠です。
弁護士としては、大型商業施設だから示談は無理と諦めず、粘り強い交渉によって重い扉が開かれることがあるのです。
執筆者: 代表弁護士 中村勉