試験観察とは何ですか。弁護士さんは試験観察に関してどのように活動してくれるのでしょうか。
家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもって、相当の期間、少年を家庭裁判所調査官の観察に付することができます(同法25条1項)。これを試験観察といいます。これは、少年に対する終局処分を一定の期間留保し、その間に調査官の観察に付するという中間処分であり、①遵守事項を定めてその履行を命ずる措置、②条件を付けて保護者に引き渡す措置や、③補導委託先の施設や団体、個人に預けて生活させる措置の3種類に分けられます(同条2項各号)。
終局処分の中での保護処分は、いずれも少年の身柄を拘束する重大な権利制約を伴うものであるため、それまでに少年にとって何が適正な処分かを見極める必要があります。また、矯正施設への収容を猶予し、社会内で指導監督や援助を行うことにより、観察期間中での更生を促すという効果を期待できるため、中間処分としての試験観察が設けられているといえます。
試験観察が認められるには、①保護処分に付する蓋然性があること、②直ちに保護処分に付することができないか、あるいは相当でない事情があること、③調査官の観察活動が必要であり、かつ、その結果、適切な終局決定ができる見込みがあること、④相当の期間内に観察の目的を達成する見込みがあることです。あらかじめ相当期間内の観察の目的を達成できないことが判明している場合には、保護観察等の保護処分に付して、その執行にゆだねるべきといえます。
なお、試験観察の期間について、少年法は「相当の期間」としか定めていませんが、実務上、在宅試験観察の場合には3~4か月であり、補導委託の場合には4~6か月が目処となります。事案によっては1年を超える場合もあり、個別の事案によるものといえます。
少年鑑別所においても家裁調査官は少年から聴き取り調査を行っており、その限りでは試験観察も調査官の調査の延長線にあります。しかし、試験観察は少年を特定の場所ないし条件下におき、教育的な働きかけを行いつつ観察するという能動的な作用を有するものです。
つまり、保護者に引き渡すなどして学校に通わせたり、特定の補導委託先に居住させながらボランティア活動をさせるといった、より社会の中で生活させながら観察することが試験観察の特徴といえます。
それでは、少年が試験観察処分を受けた場合、付添人はどのような活動をすべきでしょうか。
試験観察決定が出された場合、裁判所から試験観察期間中に遵守しなければならない遵守事項が言い渡されます。この遵守事項を破ることになれば、最終的な処分が重い処分になる可能性が高いので、付添人は少年に対して遵守事項をしっかりと理解させる必要があります。
また、在宅試験観察の場合、少年は事件の前と同様に自宅などの普段生活している場所へ帰ることになりますので、気が緩みがちになります。また、友人等からの誘惑で、堕落した生活に引き込まれる可能性もあります。そのため、付添人は少年に対して電話やメールなどで定期的に連絡を取り、試験観察期間中の非行などが最終的な処分にどのような影響を与えるか、常に少年に意識させるように行動していく必要があります。
さらに、試験観察は、裁判官の最終的な処分を決めるための判断材料を収集するために、調査官が少年の生活状況などを観察するという意味合いがあることから、付添人は、少年との関係だけでなく、裁判所との関係でも、調査官や裁判官に頻繁に連絡を取っていく必要があります。少年が付添人だけに話した内容等で、少年にとって有利に働きそうな事情については、積極的に付添人が裁判所に報告すべきでしょう。