全件送致主義とはなんですか。
通常の刑事事件では、捜査機関が被疑者を逮捕・勾留した後、犯罪の嫌疑がある場合には公訴提起という手続がなされ、犯罪の嫌疑がない場合には不起訴処分、あるいは公訴提起がふさわしくない場合と検察官が判断する場合には起訴猶予処分といった事件処理がなされます。起訴するか否かについては検察官の裁量の余地が極めて大きい点に特徴があります。
これに対し、少年法は、全件送致主義を採用しており、全ての事件について家庭裁判所へ送致することを規定しています。その判断に際しては、捜査機関に裁量の余地を認めていません。捜査機関は、被疑少年を逮捕後、最大20日間の勾留を終えた後、初めて検察庁から家庭裁判所に送致しています。
仮に、捜査の段階で当該犯罪についての嫌疑が認められない場合であっても、「ぐ犯少年」に該当する場合には、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。したがって、犯罪の嫌疑の有無に関わらず、逮捕後20日間の勾留を終えると、家庭裁判所に送致され、審判に付されることになるのです。
家庭裁判所では、審判に付すべき少年について調査をしなければなりません(8条1項後段)。その際、医学、心理学、社会学、教育学等の専門的知識を活用すべきものとされています(9条)。家庭裁判所には、調査のための専門機関として、家庭裁判所調査官や医学的診断を行う医務室が設けられています。
少年事件の背景には、少年の資質や生育環境等様々な事情があります。少年審判の目的が「少年の健全育成」にあることから、少年が非行に陥った原因を探求してそれを解消、除去するための方策を検討する必要があります。そこで、各分野における専門家の知見を用いるべく、家庭裁判所に調査官が設けられています。