金融機関等でお金を借りる際には利息が発生しますが、借り手を保護するために、金利の上限を定めた法律があります。それがいわゆる出資法や利息制限法、貸金業法です。「グレーゾーン金利」という用語を耳にしたことがあるかもしれませんが、それはこれらの法律によるものなのです。
出資法はその他にも、一定の態様の「出資金」や「預り金」、「浮貸し」、「高金利」などの行為を禁止しています。出資法とはどのような法律なのか、出資法に抵触する行為とはどのようなものなのか、代表弁護士・中村勉が詳しく解説してまいります。
高利貸しの禁止とグレーゾーン金利
いわゆる出資法とは、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」の略称です。お金を貸し借りする際の上限金利は、出資法と利息制限法という2つの法律に規定されています。出資法と利息制限法の一番大きな違いは、上限を超えた金利でお金を貸した場合の罰則(刑事罰)があるかどうかです。出資法には罰則がありますが、利息制限法には罰則がありません。
出資法では、例えば、業として金銭を貸し付ける際の上限金利を年20%としており、それを超える割合による利息の契約をしたときは、罰則として5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されることになっています(出資法5条2項)。
一方で、利息制限法の定める上限金利は、元本の金額によって3種類に分けられています。元本が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%と定められています(利息制限法1条)。
上でも述べたとおり、利息制限法には罰則はありません。したがって、利息制限法に定める上限金利を超えた金利を設定しても、出資法で処罰される高金利に至らない金利であれば、逮捕されたり、刑事罰に問われたりすることはありません。
ただし、民事上はその超過部分は無効となると定められています。例えば元本200万円のときに金利を20%と設定した場合、超過している5%分を借り手に対して請求しても、借り手はその部分については支払う必要はありません。さらに、利息制限法の上限金利を超えた金利で金銭を貸し付けると、貸金業者の登録取消しや、業務停止命令などの行政処分の対象にもなります。
かつての出資法
現在はこのような制度になっていますが、平成18年に法改正が行われるまでは状況が異なりました。
かつての出資法の上限金利は、29.2%とされていました。また、行政処分もありませんでした。さらに、貸金業法に定められた一定の要件(比較的容易に充足できるものです)を満たせば、利息制限法に定める上限利率よりも高い割合の利息を貸金業者が受け取っても、それを有効な弁済とみなす「みなし弁済」と呼ばれる制度がありました。
すると、みなし弁済が成立するような場面において、利息制限法の定める上限利率(元本に応じて20%、18%、15%)よりも高く、旧出資法の上限利率の29.2%以下の金利であれば、刑事罰がなく、かつ、民事上も有効とみなされることになります。これがグレーゾーン金利というものです。現在では、元本が10万円未満の場合に出資法と利息制限法の上限金利が同じになっており、10万円以上の場合もその差の部分については、みなし弁済が廃止され、さらに行政処分も用意されているため、実質的にはグレーゾーン金利は撤廃されたと考えてよいことになります。
その他の出資法違反となる行為
出資法5条2項の高利貸し以外にも、出資法にはいくつかの犯罪が規定されています。それらのうち、いくつかを紹介します。
その他の高金利罪
これまでに解説した、出資法における高金利罪は、「業として」行うものでした。ここでいう、「業として」は、反復継続して高利貸しをする意図の下にこれを行うことを指します。「業として」という要件からは、必ずしも貸金業者によって行われることを意味するわけではないことが分かります。
もっとも、出資法には「業として」ではなく、単に1回だけ高利貸しを行う場合の条文も用意されています。それが出資法5条1項です。この場合の上限金利は年109.5%(うるう年は109.8%)です。違反した場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
また、業として行う者が年109.5%(うるう年は109.8%)を超える著しい高金利で金銭を貸し付けた場合、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。このように、単に1回だけ高利貸しを行うよりも、業として高金利貸しを行う方が、重い罰則が定められています。
出資金の受入れ
不特定かつ多数の者に対して、後日、出資の払い戻しとして出資金の全額もしくはこれを超える金額に相当する金銭を支払うことを示して出資金を受け入れることは、出資法1条で禁止されています。罰則は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
本来は、出資金は、ある事業に拠出され、その事業への参加を意味するものであり、元本返還・利益配当は当該事業の成功・不成功にかかるという性格のものなので、必ずしも出資者に返さなければならないわけではありません。しかしながら、全額あるいはそれ以上のお金が返ってくるかのような誇大広告によって出資金を集め、後に経営困難に陥って宣言通りに返還できなかった場合、出資者が損害を被ることになります。
このような事態を防止することが本条の趣旨です。なお、対象は「不特定かつ多数の者」なので、特定の人や少数の人に対して全額もしくはそれを超える金額の支払を約束して出資金を受け入れても、本条には該当しません。
預り金
出資法2条1項には、銀行法による銀行、信用金庫法による信用金庫、農業協同組合法による農業協同組合など、業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除くほか、業として預り金をしてはならない旨が規定されています。ここにいう「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであって、預貯金または定期積金の受入れ、社債、借入金その他いかなる名目で行われるかを問わず、預金等と同様の経済的性質を持つものをいいます(同法2条2項)。
また、「業として」は、反復継続して預り金をする意図の下にこれを行うことを指します。違反した場合の罰則は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
浮貸し
金融機関の従業員等が、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るために、その金融機関の業務としてではなく、金銭の貸付け等を行う行為を「浮貸し」と呼び、出資法3条で禁止されています。また、同様に、金銭の貸借の媒介または債務の保証を行う行為も同条で禁じられています。罰則はやはり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
具体例としては、金融機関の従業員が窓口で預金として顧客から受け取ったお金を、帳簿に記録して金庫に保管する等の処理をせずに、顧客から承諾を得て、他人への貸付けに流用するなどの行為 が挙げられます。
両罰規定
これまでに挙げた出資法違反となる罪のうち、法人の従業員等が、高金利罪(5条1項)、業として行う高金利罪(5条2項)、業として行う著しい高金利罪(5条3項)のいずれかを行った場合、従業員等の本人のみならず、法人である業務主(事業主)にも罰金刑が科されます(9条1項違反は3000万円以下、2項、3項違反は1億円以下)。
このように、行為者である従業員だけでなく、使用者である業務主(事業主)も処罰することを定めた規定のことを、「両罰規定」と呼びます。
出資法第9条
法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務又は財産に関して次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第五条第一項若しくは第二項、第五条の二第一項、第五条の三又は前条第一項 三千万円以下の罰金刑
二 第五条第三項又は前条第二項 一億円以下の罰金刑
三 前条第三項(第三条に係る部分を除く。) 同項の罰金刑
出資法違反で逮捕されたら
出資法違反の疑いで逮捕されたら、警察・検察からの取調べに適切に対応するとともに、債務者(被害者)に対して適切な対応を行うことも重要です。出資法違反の事件の場合には、被害者とされる債務者が複数いたり、被害金額が大きかったりすることが多いため、被害弁償をしたとしても、不起訴処分となることは残念ながら多くはありません。
しかし、債務者に対して被害弁償をしたという事情や、そもそも債務者の処罰感情が強くないという事情、あるいは被害弁償により処罰感情が和らいだという事情は、不起訴処分を目指すために必要な一事情ではあります。また、残念ながら起訴されてしまった場合であっても、これらの事情は、刑の量刑を下げる事情になります。
まとめ
出資法違反となるいくつかの犯罪について解説しました。
当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
- 逮捕されるのだろうか
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上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。