危険ドラッグの一種である「ラッシュ」は比較的入手しやすい薬物ですが、所持や使用をすれば刑罰が課されます。本記事では、そもそも「ラッシュ」とはどのような薬物なのか、逮捕された場合の流れや弁護士に依頼する必要性を刑事事件に詳しい弁護士が解説いたします。
ラッシュとは
「ラッシュ」とは、亜硝酸エステルを主成分とする薬物です。本来は工業用途のほか医療に使うものですが、性的興奮を高める作用があるとされているため、ネットなどで流通しています。
ラッシュは主成分の沸点が低く常温でも気化するので、覚醒剤のように注射器を使わなくても鼻から蒸気を吸い込むことで体内に取り込むことができます。この手軽さが、ラッシュの蔓延の理由の一つでもあると言われています。
ラッシュの有毒性はタバコやアルコールよりも低いとも言われていますが、日本では以下のように厳しい規制が置かれています。
ラッシュの使用・所持の罰則
厚生労働省は2007年、主成分の亜硝酸イソプロピルなどを医薬品医療機器等法(旧薬事法)の「指定薬物」とし、輸入や販売を原則として禁じ、さらに2015年には関税法で「輸入してはならない貨物」に追加されています。個人での所持や使用も、2014年には違法となっています。
現在、医薬品医療機器等法において、購入や所持は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、営利目的の場合は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金との罰則が規定されています(第84条、第83条の9)。
他方で、海外ではラッシュの使用・所持は厳しく規制されていないことがほとんどです。実際に、台湾、中国、韓国、タイ、シンガポールでも、一定の販売規制はあるものの、使用で処罰されることはないようです。これらの国と比較して、日本ではラッシュの使用・所持に関してとても厳しい規制をしています。しかし、日本であっても規制の緩い海外からの個人輸入によりラッシュを手に入れることができてしまうので、海外で規制されていないからといってラッシュを購入してしまわないように注意が必要です。
日本においては著名人がラッシュを使用・所持したことで逮捕されたというニュースが話題になったこともあります。ネットの購入履歴から警察が犯罪を覚知し、その後家宅捜索が行われて逮捕されるといったケースもあるため、ネットでラッシュを見つけたとしても安易に購入しないようにしなければなりません。
ラッシュで逮捕されたら
逮捕後の流れとして、警察は、引き続き身柄拘束をする必要はないと判断した場合被疑者を直ちに釈放しますが、引き続き身柄拘束をする必要があると判断した場合には被疑者の身柄拘束のときから48時間以内に被疑者を検察へ送致する手続きをとります。ラッシュに限らず薬物の使用・所持等が発覚した場合は勾留される可能性が高いです。
送致された場合、検察官は被疑者に弁明の機会を与え、身柄拘束の必要が無いと判断すれば直ちに被疑者を釈放しますが、引き続き身柄拘束の必要があると判断した場合には被疑者を受け取ったときから24時間以内(被疑者が逮捕されたときから72時間以内)に裁判官に対して勾留請求を行います。勾留とは、罪を犯した疑いのある者を一定期間、刑事施設に身柄拘束することをいいます。
その請求を受けて裁判官は被疑者に対して勾留質問を行い、勾留の当否を判断します。捜査の上で身柄拘束が必要だと判断した場合は勾留決定をします。被疑者の勾留は原則10日間、さらにやむを得ない事情がある場合は最大10日間延長した20日間の拘束を認めます。この勾留期間内に検察官はラッシュ所持等の事実について起訴するか否かを判断します。ここで起訴されれば刑事裁判が開かれ、裁判所が法廷で審理をします。
ラッシュ事件で弁護士に依頼した方が良い4つの理由
- 逮捕回避の可能性が高まる
- 不起訴処分の可能性が高まる
- 弁護士といつでも連絡が取れて安心できる
- 薬物事件に適した対応ができる
1.逮捕回避の可能性が高まる
ラッシュを使用・所持してしまった場合、弁護士が自首に同行することで逮捕を回避できる可能性が高くなります。
そもそも逮捕をするための要件として大まかに「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が必要です。罪を犯したことが明らかであっても逃亡の恐れや証拠隠滅のおそれがなければ、被疑者を逮捕することはできません。
そこで、自首により自ら警察署に犯罪を申告することで「逃亡や罪証隠滅は決してしません」という主張をすることができ、これにより「逮捕の必要性」がないと判断され、結果的に逮捕を回避できる可能性が高まります。
2.不起訴処分の可能性が高まる
上記の「逮捕回避の可能性が高まる」でも記載したように、ラッシュなどの薬物は個人が検察官に対して反省の意を示しても逃亡の恐れや証拠隠滅のおそれがあるのではないかと疑われ、「嘘をついているのではないか」、「そういってまたやるのであろう」と信じてもらえない可能性があります。そこで弁護士が代理人として今後どうするのか、どうやって薬物と向き合っていくのかを検察官にきちんと訴えることで説得力が増し、それによって不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。また、起訴されたとしても保釈が認められる可能性が高くなります。
不起訴処分を獲得できれば起訴されて裁判になる前に事件が終わるため、前科を付けずに刑事事件が終結します。当事務所では元検事の弁護士が在籍しており、不起訴処分を獲得するためにどのような弁護活動を行うことが適切であるかを熟知しています。
3.弁護士といつでも連絡が取れて安心できる
刑事事件では上記の「逮捕後の流れ」で挙げたとおり、逮捕、勾留、起訴と、短い期間で刑事手続がどんどん進行していきます。したがって、少しでも早い段階で弁護士が手続きに関与することが重要です。右も左もわからない刑事手続きでどのような振る舞いが必要なのか、取調べの受け答えや態度もアドバイスがもらえます。被疑者本人だけでなく、ご家族もご本人の状況を正しく把握することができ、今後の見通しも立つので不安も解消されるでしょう。
当事務所では弁護士の携帯番号を依頼者の方にお教えしていますので、何か不安があればいつでも弁護士に相談することができます。もちろん、ご本人だけでなくご家族の方が弁護士に相談いただくことも可能です。
4.薬物事件に適した対応ができる
ラッシュのような薬物事件において一番重要なのはその依存性を断ち切ることです。実際にラッシュを所持・使用していた場合、薬物事犯は、薬物から抜け出すための治療やリハビリが必要であるという点で他の犯罪とは異なってきます。それゆえに弁護活動も他の事件とはやや異なる視点で行う必要があります。
刑事事件の弁護活動といえば被告人に反省をさせ、家族らの監督のもと生活させるという面が重視されがちかもしれませんが、薬物依存から脱するため治療する点にも目を向ける必要があります。当事務所では、必要に応じて薬物依存の治療を行っているクリニックと連携して弁護活動を行っています。治療の経過を捜査機関に報告するとともに依頼者が薬物依存を断ち切ろうとしていることを訴え、依頼者に有利な結果が出るよう導いていきます。
薬物事件の解決実績や感謝の声
中村国際刑事法律事務所では、薬物事件の解決実績が数多くあります。ご依頼者様からいただいた「感謝の声」を是非ご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ラッシュは覚醒剤などのメジャーな薬物と異なり、使用方法も簡単ですし、購入もしやすいので手が出しやすいといえます。しかし、日本では厳格な規制がなされており、ラッシュの輸入はもちろん、使用や保管も犯罪となることにご注意ください。万が一ラッシュを使用してしまって自首を考えている場合、また、逮捕されてしまった場合には弁護士にご相談ください。年末年始を含め、休日・祝日も24時間無料相談受付しております。