中村国際刑事法律事務所 | 刑事事件の実力派弁護士集団 中村国際刑事法律事務所
お急ぎの方へ メニュー

器物損壊で逮捕されたら? 弁護士が解説

お酒に酔ってしまい、店の物を壊す、路上を歩いていて立て看板や車両を蹴って壊すなど、器物損壊事件はお酒に酔って起こることが多いです。壊された被害者にしてみるとその憤りは決して小さくなく、間違いなく警察に被害届を提出します。警察に通報し、その場で逮捕されるケースも少なくありません。

このように、器物損壊罪は、普段は犯罪とは無縁の人であってもお酒に酔った勢いで起こすことがあり、酔いが覚めて初めて事の重大さに気づきます。ここでは、器物損壊罪とはどのような罪で、逮捕される可能性が高いのか、不起訴になるにはどうすれば良いかなどについて、代表弁護士・中村勉が解説します。

どのような行為が器物損壊罪にあたるのか

器物損壊罪とは「他人の物を損壊し、又は傷害した」場合に成立する犯罪です。刑法261条は「前三条(258条~260条)に規定するもののほか」と規定していることから、「器物」とは文書・電磁的記録(データ)や建造物等を除く有体物一般のことを指します。

「損壊」とは

上述の通り、刑法261条は他人の物を損壊し、又は傷害した場合に成立します。では「損壊」とはいかなる行為でしょうか。「損壊」とは一般に物の効用を害する行為と説明されています。やや抽象的な概念でありますが、つまりはある「モノ」の通常の利用方法により得られる機能を害する行為が損壊にあたります。

「損壊」の具体的な例

例えば、通常の利用方法とは、お皿なら食事を盛り付けること、コップなら飲み物を入れることなどです。したがって、レストランの食器を割ってしまう行為は、もちろん損壊にあたります。それだけではなく、食器を利用させなくするために食器を持ち去る行為や、食器に向かって放尿する行為も、食事の利用に供するという食器の効用を害するため、器物損壊罪が成立する余地があります。

ただし、この場合、窃盗罪(刑法235条)との区別が曖昧になります。一般には、窃盗罪が財産犯であることから、モノの経済的効用を享受する意思(いわゆる「不法領得の意思」)の有無によって判断します。

先ほどの例によると、食器を自宅などで利用する意思で持ち去った場合には窃盗罪が成立し、このような食器の経済的効用を享受する意思がない場合には器物損壊罪が成立することになります。理屈としては、店に対する嫌がらせで食器を持ち去る行為は窃盗罪ではなく、器物損壊罪で処理されることになります。ただし、実務上は、持ち去って店を出てすぐに破壊するような場合を除き、ほとんどが窃盗罪で処理されるでしょう。

私生活の様子を一般人にスマホで撮影された有名人が、その一般人のスマホを持ち去った行為が器物損壊罪にあたるとして書類送検されるという事件がありましたが、これは、その有名人の持ち去り行為がスマホの効用を害するという点で損壊にあたり、もっとも、電話やメールの利用に供するというスマホの経済的効用を享受する意思までは有していなかったために器物損壊罪が成立するという判断でした。

未遂・過失の場合には成立しない

未遂とは「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった(刑法43条)」場合を指します。つまりは、他人のモノを損壊しようとしたが、損壊に至らなかった場合のことを指します。

刑法44条は「未遂を罰する場合は、各本条で定める。」と規定し、未遂犯を処罰するためには法律の特別の規定を要する旨定めています。そして器物損壊罪には未遂を処罰する規定が存在しないため、器物損壊罪に未遂犯は成立せず、不処罰となります。

刑法38条では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と規定し、器物損壊罪には過失犯の規定が用意されていないため、器物損壊罪にあたる行為をしてしまった場合であっても、故意がない場合には犯罪は不成立となります。もっとも、このような場合であっても、民事上の損害賠償責任は成立し得えます。

器物損壊罪の罰則とは

器物損壊罪の法定刑は「三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料(刑法261条)」です。「科料」とは、1万円未満の金銭の納付を求める刑罰のことです。

器物損壊罪は「親告罪」

また、刑法264条は「第二百六十一条(器物損壊罪)…の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と規定していることから、器物損壊罪は親告罪であると言えます。告訴が存在しない段階では、告訴はあくまでも起訴のための条件であって逮捕の条件ではありませんが、逮捕自体されない可能性があります。

このような場合には、警察は任意同行を求めて事情聴取を行うが、場合によっては事件を検察庁には送致しない処分(微罪処分)を行い、即日釈放となる可能性があります。

器物損壊罪で逮捕される可能性

器物損壊罪で逮捕される場合としては通常逮捕現行犯逮捕が考えられます。通常逮捕とは、捜査機関が事前に逮捕状を裁判所に請求して行う手続きであり、現行犯逮捕とは犯罪の実行行為を行ったその場等で逮捕される手続きのことを指します。2021年の検察統計によると毀棄・隠匿罪の逮捕率は38%となっています。器物損壊罪のみの逮捕率ではないですが、半数は逮捕されずに捜査が進む、在宅捜査になる可能性があります。

それでは、器物損壊罪で逮捕される場合とはどのようなケースでしょうか。例えば、被害品が高額である場合、連続して何件も行った場合、前科がある場合、被害者の処罰感情が強く被害届が提出されている場合など、重大な事件については逮捕される可能性があります。

器物損壊罪は必ず逮捕されるとは限らない

器物損壊罪にあたる行為を行ったからといって必ず逮捕されるとは限らず、一定の場合には在宅捜査となる可能性があります。これは、逮捕自体は刑罰ではないこと、身体拘束が本人の社会生活上重大な不利益を伴うことになるため、逮捕を行うには慎重な考慮が必要とされるためです。

したがって、事案が軽微である場合には器物損壊罪では逮捕されない可能性があります。例えば、被害が極めて軽微である場合、被害届が提出されていない場合、民事的な賠償が既に終わっている場合等がこれにあたります。

器物損壊罪で逮捕されたら

器物損壊罪で警察に逮捕された場合には48時間の身体拘束の後、検察官によりさらに24時間の身体拘束を受けます。さらに、検察官が引き続き身体拘束の必要があると判断した場合には勾留延長を請求し、それが裁判官に認められた場合、最大20日間の身体拘束を受けます。

そこで、弁護士の活動の中心は、身柄解放活動ということになります。罪証隠滅のおそれがないこと逃亡のおそれがないことを示す疎明資料を収集し、意見書に添付の上、検事や裁判官を説得して釈放を求めます。あるいは、被害者と迅速に示談をし、被害届を取り下げさせるなどのスピーディな活動も行います。また、勾留された場合には準抗告という不服申立書を裁判所に提出して勾留決定を争います。

器物損壊罪で逮捕された場合に弁護士ができること

器物損壊罪は、他人のモノを「損壊する」類型の犯罪である以上、検察官や裁判官は被害者の処罰感情や損害の回復の有無というものを重視します。したがって、被害者の方との間で、示談が成立している場合や慰謝料の支払いを終えている場合、初犯であれば不起訴となる可能性が高いでしょう。

もっとも、モノに対する思い入れは人それぞれであり、また故意の犯罪に巻き込まれるストレスはときに筆舌に尽くし難く、被害者にとって謝罪をそのまま受け入れることは必ずしも容易ではなく、このような場合には第三者の介入が重要となってきます。

したがって、器物損壊罪で逮捕された場合には弁護士が早急に被害者の方とのコンタクトをとり、謝罪の意思を伝えることが弁護活動の第一歩となるでしょう。その上で、被害回復のため、慰謝料の支払いを含む示談交渉を開始することになります。交渉において、加害者側は(当然のことながら)どうしても弱い立場になり、より不利な条件を提示されがちです。事案を客観的に判断し、うまい落としどころを見つけるために、経験豊富な弁護士への依頼を検討することをお薦めします。

器物損壊罪で起訴されたら

告訴が維持された場合であっても、重大な事案でなく、また初犯又は前科1犯程度でしたら、公判請求(いわゆる正式な裁判)がなされる可能性は低く、略式請求され、罰金となる可能性が高いと言えるでしょう。略式請求とは、簡易裁判所において、公判審理によらずに100万円以下の罰金または科料を科すことを求めるものです。

この場合、書面で起訴処分や罰則が言い渡されるのみで、これにより身体を拘束されることはありません。一方で、同種前科が複数存在する場合、又は重大な事件である場合には、公判請求をされる可能性が高いと言えるでしょう。もっとも、そのような場合であっても執行猶予を得ることは不可能ではありません。

器物損壊罪の弁護士費用について

器物損壊罪は、強盗等とは異なり、比較的軽微な犯罪で、在宅捜査のケースが多いです。在宅捜査のケースでは、弁護士は接見活動(警察署に出向いて接見し協議する活動)の必要もありませんので、着手金も30万円程度の弁護士が多いと思いますし、示談が成立するなどして不起訴処分となり、前科が付かなかった場合の成功報酬も30万円から40万円程度で済むでしょう。

略式罰金刑の場合には、正式起訴を避けることができたという意味での成功報酬として20万円程度の報酬となる場合が多いように思います。一方、器物損壊罪で逮捕された場合には、身柄解放活動も積極的に行うので、着手金は40万円程度で、不起訴成功報酬も40万円から50万円程度になるでしょう。そのほかに接見日当についても警察署が遠方かどうかによりかかることもあります。詳細は弁護士にご相談ください。

今すぐ無料相談のお電話を

当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。

  • 逮捕されるのだろうか
  • いつ逮捕されるのだろうか
  • 何日間拘束されるのだろうか
  • 会社を解雇されるのだろうか
  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
  • 実名報道されるのだろうか
  • 家族には知られるのだろうか
  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

#ハッシュタグ
更新日: 公開日:
Columns

関連する弁護士監修記事を読む

経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

このページをシェア