コカインの輸入・譲渡・譲受等は、麻薬及び向精神薬取締法で規制されており、大麻や覚醒剤の次に検挙件数の高い薬物です。また、最大で7年以下の懲役に処せられる重たい犯罪です。しかし、状況と対応によっては執行猶予がつくこともあります。
そのため、早い段階で弁護士に相談し、適切な対応をすることが重要になってきます。
すでに、コカインの使用や所持で家族が逮捕されてしまった場合や、今後ご自身に逮捕の危険性があるかもしれない場合について弁護士が解説します。
コカインとは
コカインとは、コカの木を原料とした薬物で、覚醒剤と同様に神経を興奮させる作用があり、気分が高揚し、眠気や疲労感が無くなったり、体が軽く感じられ、腕力、知力が付いたという錯覚が起きたりします。
覚醒剤と異なり、効果の持続時間が短く、依存状態に陥ると一日に何度も乱用するようになります。乱用を続けてしまうと、幻覚等の精神障害が現れたり、虫が皮膚内を動き回っているような不快感に襲われたりし、存在しない虫を殺そうと自分の皮膚を刺したりすることがあります。
また、コカインの大量使用により、呼吸麻痺や心停止を起こし、死亡することもある非常に危険な薬物です。
過去の逮捕事例を見てみましょう。例えば、マーベル作品の「アイアンマン」トニースターク役をやられているロバート・ダウニー・ジュニアさんは過去に薬物関係で6回も逮捕されています。なぜそのようなことをしてしまったのかは、動画配信サービスのネットフリックスで閲覧できる「sir」にて明らかになっていますが、作中ではロバート・ダウニー・ジュニアは薬物依存症と戦いながら何年も刑務所に入ったり出たりを繰り返していました。
他にも有名な歌手のブルーノ・マーズさんやレディー・ガガさんなど世界的に有名な方もコカインを使用し、薬物依存に陥ってしまったと告白しています。
その他にも有名人がコカインの使用により逮捕されるといったニュースを目にすることはあるかと思いますが、皆共通して言っているのは「何年も使用してやめられなかった」ということです。
コカインの恐ろしさはその依存性にあり、また取引価格(値段の相場)として約1万5千円~2万円と割と誰でも手が届く金額なため抜け出せない方が多く、その依存性や危険性から重い刑罰となっています。
コカインの刑罰
麻薬及び向精神薬取締法で別表第1に掲げられたものは「麻薬」として使用や所持等が規制されており(2条1号)、コカインも「麻薬」に当たります。
同法で最も厳しく規制されているのはジアセチルモルヒネ等(ヘロイン)ですが、コカインはジアセチルモルヒネ等以外の麻薬として、取り締まりの対象となります。
禁止されている行為は以下の通りです。
- 輸入(13条)、輸出(17条)
- 製造(20条)
- 譲渡(24条)、譲受(26条)
- 施用(27条)
- 所持(28条)
それぞれを解説します。
①輸入(13条)、輸出(17条)
厚生労働大臣の許可を受けて、治療目的で携帯する場合を除き、麻薬輸入業者・輸出業者以外が麻薬を輸出入することは禁止されています。
②製造(20条)
麻薬研究者が研究のために製造する場合を除き、麻薬製造業者でない者が麻薬を製造することは禁止されています。
③譲渡(24条)、譲受(26条)
許可を受けた業者や医療目的での処方を除き、麻薬の譲渡し・譲受けは禁止されています。
④施用(27条)
麻薬施用者、研究者、処方箋により調剤された麻薬を譲り受けた患者を除き、麻薬の施用(使用)は禁止されています。
⑤所持(28条)
麻薬取扱者、麻薬診療施設の開設者、麻薬研究施設の設置者や医療目的で処方を受けた者等以外の者が麻薬を所持することは禁止されています。
これらの行為の罰則は、同法65条・66条で定められています。
輸出入、製造には、1年以上10年以下の懲役が科せられます。営利目的であった場合は、1年以上の有期懲役又は情状により1年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金となります。
譲渡、譲受、施用、所持には、7年以下の懲役が科せられます。営利目的であった場合は、1年以上10年以下の懲役、又は1年以上10年以下の懲役及び三百万円以下の罰金となります。
コカインはどのように発覚するか
どのように発覚するかは人それぞれですが、大きく分けると2つあります。
まず、1つ目が警察の巡回中に発覚する場合です。錯覚症状が出ることから、巡回中の警察官に不審に思われ、職務質問の結果、所持や使用などが発覚したり、所持や使用を疑った知人等から通報され、発覚したりすることが考えられます。
次に、友人や家族からの相談により発覚する場合です。コカインにて薬物依存に陥っている場合や抜け出そうとする際の離脱症状によって、「行動がおかしい」とか「嘘をつくようになった」などの変化が生じ、そのことで医師又は警察に発覚するという流れで逮捕に至る可能性があります。
逮捕に至った場合には一刻も早く弁護士の介入が必要になります。弁護士が介入することで事前に警察への対応についてアドバイスをもらうことができるなど、早期解決の道が開かれます。発覚するかもしれずご不安な場合は、一人で抱え込まず、まずは弁護士に無料相談をすることをおすすめします。
コカインで逮捕されたときの流れ
上記の方法によってコカインの使用・所持が発覚した場合、多くは警察に逮捕されるか、自ら警察署に出頭するかになります。
ここでいう出頭は自首とは異なります。自首は、警察などの捜査機関に発覚していないことが前提のため、発覚した場合に警察に出頭しても自首の成立要件に該当しません。そのため発覚した場合には出頭という手続きになります。
捜査機関に逮捕された場合には取り調べを受けることになります。
逮捕時から48時間以内に釈放されるか送検されるかが決まります。もし送検されると、検察官の取り調べを受け、逮捕時から72時間以内に勾留の要否を検討されます。勾留とは被疑者を刑事施設に身柄拘束することをいい、拘束期間は原則10日、延長されるとさらに最長で10日間拘束が続きます。
コカイン等の覚醒剤関連の事件の場合、入手ルート等の証拠隠滅を防ぐために、ほとんどは勾留が認められます。また10日間の勾留期間中に捜査が完了しなければ、最大で10日間勾留期間を延長できます。したがって、最大で逮捕から23日間拘束される可能性があります。また、起訴後も保釈されない限り裁判が終わるまで勾留が続きます。
事前に弁護士の介入がある場合には、逮捕・勾留後であっても、依頼している弁護士に接見依頼が可能となります。依頼せずに逮捕・勾留されてしまった場合でも、当番弁護士や国選弁護士を依頼するという方法も取ることができます。
ただし、当番や国選の弁護士の場合は、選ぶことができません。そのため刑事事件を多く扱っている弁護士であるか、自身との相性が良いかどうかといった考慮をしたい場合には、私選弁護士を依頼するほかないでしょう。
コカインなどの薬物事件での起訴可能性と保釈
ごく少量である場合や、検察官が有罪を立証できるだけの証拠がないと判断した場合を除き、コカインで逮捕された場合は起訴されます。コカインの使用や単純所持で逮捕・起訴された場合、前科が無く、容疑を認めていれば、起訴直後に保釈されることが多いです。
もっとも、起訴され裁判になった際に、裁判中にコカインの所持又は使用等についてそれが営利目的であると判断されてしまった場合は、初犯であっても実刑判決になってしまうことは多く、その場合は釈放されず刑務所行きとなります。そうならないためにも、まず速やかに弁護士に連絡し、早期解決に向けて相談する必要があります。
コカインで逮捕されたときの弁護活動
弁護士は①勾留請求される前、②勾留請求された直後、③勾留決定された後、④起訴された後の、それぞれの段階で弁護活動していきます。①では勾留されないように、②では裁判所が勾留請求を認めないように、③では準抗告(勾留決定の取消及び変更)が認められるように、④では保釈が認められるように働きかけます。
もっとも、一度勾留されてしまうと早期釈放は難しく、また、日本では起訴事件の有罪率が99.9%です。早い段階から弁護活動を行い、可能であれば勾留決定を防ぐことが望ましいです。
弁護士には接見交通権が保障されており、面会が禁止されている期間でも被疑者との面会が可能です。そのため、逮捕された段階からスムーズに取調べのサポートをすることができます。
まとめ
コカインはその依存性から繰り返し犯してしまう犯罪の一つでもあることから検挙件数が多く、有罪になる可能性も高い犯罪です。また、被害者がいないため、示談による解決が望めません。一度でも逮捕されると厳格な規則に従った刑事手続きが進められます。
そのため、早い段階で刑事事件、薬物事件に強い弁護士に相談し、今後の方針を固め、適切な対応をしていくことが、送検や起訴を回避する可能性を高めることにつながります。
そして、コカインの最大の問題である薬物依存症について真摯に向き合い、更生に向かって進み出しましょう。
薬物で警察からの接触があった場合、ご自身またはご家族がどのような状況にあるのか、今後どうなるのか、ご不安な場合は一度、薬物事件に強いNICDへご相談ください。