サマーアソシエイト 参加者感想文 Y.Kさん(2014年)(千葉ロー卒)
平成26年度サマーアソシエイトとして第3セッションでお世話になりました。この経験を通じて、非常に多くのことを学ぶことができました。
まず、圧巻は、まさにNICDがハイレベルな戦う集団であるということです。私は、各先生方・スタッフの方々の能力の高さと、チームワークの高さに圧倒されました。
アソシエイトの先生方は、キャリア1年目の先生であっても、多数の担当事件を抱えられ、ベテランのように安定して事件に取り組まれています。また、それをサポートするスタッフの方々も、高いプロ意識と事務処理能力で、強力に弁護士の執務をバックアップされていました。さらに、外部からの情報や、内部の指令などが素早く機動的に事務所において共有され、分業と協業の下、次々と事件が処理されて行くさまを、目の当たりにしました。まるでSF映画「マトリックス」に出てくる味方の精鋭部隊のように、ハイレベルな事案処理が展開されているのです。まさに、検察と「戦車対戦車」として対峙することのできる強い実務家集団なのです。
私もサマーアソシエイトとして、NICDの一員となり、法律相談への同席、文書の起案、リサーチ業務などを行うなかで、このような実務運用に感動するとともに、先生方や職員の方々と比較して自分の文書作成能力や事務処理能力のいたらなさを痛感いたしました。こうした能力は、一朝一夕に築けるものでは無い、というのはもちろんなのですが、歳の近い若い先生方が、しっかりと事件をこなされ、高い能力を発揮されているのを見て、刺激を受けないわけがありません。
このように、非常に間近でNICDのハイレベルな執務現場を見させていただくことで、ハイレベルな実務の一つのあり方を知るとともに、実務という見地から見たとき鍛えなければならない能力を痛感することができました。
私がサマーアソシエイト期間中最も力を入れていたのは、先生方から出されるアサインメントでした。分量がヘビーなものもありましたが、中でも特に印象に残っているのが、とある事件の弁論を書く、というものでした。中村先生に追加のアサインメントをいただけないかお願いしたところ、とある重大事件の弁論を起案するアサインをいただいたのです。
この事件は、社会一般的見地からすれば、強い非難をまぬがれない重い事件でしたが、中村先生は「どのように弁護できるか、悩み、自分の刑事弁護の哲学を見せなさい」との指示をされました。10冊もの分厚いファイルに収められた事件記録や、被告人の書いた手記などを読み、被告人がなぜこのような事件を犯したのか、被告人が犯した罪の重さは客観的に判例統計に照らせばどの程度のレベルなのかを考え、さらにはベッカリーアの著作を読み刑罰とは何かを考えました。そして、時間をかけ悩み抜く過程で、しだいに自分の考えがまとまり、自身の感性に照らして何の欺瞞のない一つの考え方に収斂させるにいたりました。
その内容は、実務での使用に耐えうるレベルとはくらぶべくもないでしょう。しかし、こうした経験を経るなかで、刑事弁護のまともな弁護士がどのように悩んで弁護活動をしているのか、また弁護する立場として罪や被害とどう向き合うべきなのかのかについて深く考え、腹で理解する重要な体験となりました。
この事件をアサインしていただいたことは、私にとって、刑事弁護とは何か、を考える上で非常に重要な契機となりました。
サマーアソシエイトとして働いた2週間は大変短いものでしたが、ロースクールでの勉学や、事務所訪問などの就職活動では得られない多くの経験を積むことができました。中村先生、小島先生、指導担当をしてくださった岡本先生を始め、指導、アドバイスをしてくださった先生方、スタッフの皆さんには、大変お世話になりました。ありがとうございました。