サマーアソシエイト 参加者感想文 K.Oさん(2017年)(東大ロー卒業)
2017年の司法試験を終えた後、事務所説明会に伺ったことが切掛となり、中村国際刑事法律事務所のサマーアソシエイトに参加させていただきました。番外ということで通常よりも短い期間ではありましたが、濃密な時間を過ごすことができたと思っています。
中村国際刑事法律事務所に対する私の印象は、一言で言うなら「格好いい」に尽きます。「刑事専門」を掲げていること、それぞれの先生方が確かなプロフェッショナルであること、事務所内の家具や調度品の重厚さ、応接室に置かれた「品位欠くべからず」と書かれた額縁などなど。そうした色々なことが、波長の合う人にはたまらないでしょう。
実は、私は早い時期から刑事事件に興味を持っていたわけではなく、ロースクール在学中に親類が刑事事件の渦中に投げ込まれ、最終的に無罪判決を勝ち取るという経験をしたことで興味を持つようになりました。そうして興味や期待、憧憬とともに始めたインターンですが、いざ実際の事件に触れ、アサインが降ってくると、どれもこれも大変でした。
最初に触れたのは、外国人が麻薬の密輸・大麻の所持で公判を控えている事件です。弁論要旨及び被告の母親の情状証人質問事項書の作成が私のアサインでしたが、まず英語での文面作成に四苦八苦し、改めて勉強し直さなければという気持ちになりました。全体的には、個別の事案に沿った適切なストーリーを組み立てることの難しさと面白さの一端を知れた課題だったと思います。
他に印象に残っているのは、既に複数の前科があり、クレプトマニア(窃盗癖)を有する女性の起訴を防ぐための意見書作成というアサインです。被害額が軽微で、反省もしているといった内容でなんとか起案した意見書に対する中村先生の評価は「ありきたりなもの。これじゃぁ検察は一瞥して起訴するでしょう」でした。
起訴されてしまえば有罪はほぼ避けられない日本の実務の中で、刑事手続の全ての段階で弁護人が如何に重い責任を負っているものなのかということを実感させられる言葉でした。
「前科があるのにまた窃盗に及んだということは、反省していない」「またやらかすに違いない」「病癖の治療は刑務所でもできる」といった、一見筋が通っているように見える検察の意見にどのように反論するべきか、悩まされました。女性が自らの半生を綴った文章を読み、前科に至った際にはどのような事情があり、そして彼女が抱えるクレプトマニアというものが如何なるものなのかきちんと把握し、それを克服するために今どのような努力をしているのか説明する。個別具体的な点を拾って一本の線にしてようやく、ある程度説得力のあるストーリーを持つ意見書を作ることができたと思います。
こうした難解かつやりがいのある数々のアサインを遂行するにおいて、他の弁護士の先生方が、丁寧な助言をしてくださったこともありがたかったです。「自分の事件」として受任してこそ見えてくるものがあるという言葉も忘れられません。
短い期間の中でも、サマーアソシエイトで多くのものを得ることができました。多少強引な応募を試みて、本当に良かったと思っています。今回の経験を修習の中でも生かし、精進していきたいです。ありがとうございました。