ウィンターインターン 参加者感想文 I.Sさん(2016年)(早稲田学部在籍)
はじめに
私は、以前から刑事弁護に携わる弁護士を志しており、刑事事件を専門に扱う事務所で実務に触れてみたいと考えて、2016年1月にNICDのウィンターインターンに参加しました。司法試験を控えた予備試験合格者が対象となっていたこともあり、2日間という短いプログラムではありましたが、非常に得る物の多い貴重な時間を過ごすことができました。
1日目について
まず1日目は、地裁で傷害致死事件の裁判傍聴を行いました。これまで傍聴のために裁判所へ足を運んだことが無く、また模擬裁判の経験等も無かった私にとっては、これまで机上での勉強に終始していた刑事訴訟手続の具体的なイメージを把握する良い機会となりました。
傍聴席から公判を眺める中で、強く印象に残ったことは、事件に対する強い感情に揺り動かされながら手続きに参加する被告人や被害者遺族と、毅然とした態度で主張を述べる弁護人と検察官、そして淡々と訴訟を進行していく裁判官のコントラストです。検察官から鋭い質問を受け、次第に発言が不明瞭になっていく被告人や、犯行を映した映像を見て涙を流す被害者遺族の姿を目の当たりにして、事件に関わる当事者の人生を大きく左右する刑事事件の重大さ、そしてそこに携わる刑事弁護という職業に伴う責任の重さを痛感しました。
また、NICDの先生の冷静かつ的確な被告人質問・証人尋問に感嘆させられたことを覚えています。翌日に中村勉先生から、「先生は刑事弁護に携わるために生まれてきた様な男だ」と伺い、法廷での姿を頭に浮かべて只々頷くばかりだったのですが、比較的経験の浅い時期から、1人前の刑事弁護人として刑事事件の現場で活躍できるのも、刑事事件を専門に扱うNICDの特色なのではないかと感じました。
2日目について
2日目は、事務所の案内を受けた後、事務所内で先生方の業務に触れる機会をいただきました。私は、出会い系サイト規制法をめぐる事件についての検討と、公益通報者保護法に関するリサーチの課題をいただき、先生のご指導を受けながら課題をこなしていきました。いずれの法律もこれまで扱ったことがなく、戸惑いもありましたが、現在進行中の事件の事件記録を読みながら、犯罪の成立可能性について興味深く検討することができました。また、公益通報者保護法は、近年の日本企業の不祥事と大きく関連するものであり、常日頃から幅広い視野を持って社会問題に関心を持たなければいけないなと反省致しました。
さらに、少年事件の弁護活動について詳細なお話を伺うことができました。私は、以前から少年事件における付添人業務に興味があったのですが、身柄段階から少年の親族や学校、被害者の元へ何度も足を運び、少年との面会を何度も重ねて反省を促し、調査官とともに少年の処遇について考えるという先生の経験談は、まさに私が思い描いていた少年事件における弁護士像と合致するところであり、将来は少年事件に携わりたいという意欲がより一層高まりました。
その他にも、現在先生方が扱われている事件の証拠を拝見し、事件についての意見を述べるという貴重な経験もさせていただきました。丸1日かけて、刑事弁護の第一線に直に接することができたことは、私自身の将来を考える上で大きな財産になりました。
おわりに
11月以降、各法律事務所により行われるウィンターインターンは、説明会の様なものに留まることが多い中で、NICDのプログラムは、2日間で刑事弁護の現場の雰囲気を肌で体感できる貴重なものでした。かねてから私が抱いていた刑事弁護に携わりたいという漠然とした思いが、今回のウィンターアソシエイトを経て、明確な目標へと変化したのを感じており、夏のサマーアソシエイトにも是非参加したいと考えています。
2日間という短い時間ではありましたが、「戦車対戦車」を標榜するNICDの業務に触れる貴重な機会をいただき、弁護士の先生方ならびにスタッフの皆様には心より感謝しております。ありがとうございました。