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AirDrop痴漢 – 一般的な痴漢とは異なる罪を弁護士が解説

日本人の7割以上が持っていると言われているスマートフォン。今後もその数は増えると予想されています。実際にこの記事もスマートフォンでご覧になっている方が多いのではないでしょうか。

スマートフォンには多くの便利な機能がありますが、高い利用率を誇る「iPhone」には、近距離にいるユーザー同士の間で無線で簡単に画像または動画を共有することができる「AirDrop(エアドロップ)」という機能があります。そして、この機能を使った痴漢が近年多発しております。これより詳しく見てまいりましょう。

AirDrop痴漢とは?

この、AirDropを使った痴漢は、一般的に「AirDrop痴漢」と呼ばれており、多くは満員電車の中で女性がターゲットとなるようです。その手口は、電車内等、人が密集している場所でAirDropを使い、卑わいな画像などを送って、それを受信した相手の視界に無理やり入れさせるというものです。

AirDropで画像を共有する際、「Taro’s_iPhone」などのように、近くにあるiPhone、またはiPadの端末名が表示されます。この端末名が女性だと思われるものをターゲットとし、卑わいな画像を無差別に送ってくるという手口の痴漢です。

どんな罪に問われるのか?

それでは、この「AirDrop痴漢」はどのような罪に当たるのでしょうか。

刑法第175条 わいせつ電磁的記録頒布罪(わいせつ物頒布等)
1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

こちらは、例えばTwitterなどのSNSで自分の性器を公開した場合や、アダルトダウンロード販売サイトに、わいせつ動画をアップし販売した場合などに該当する罪ですが、「AirDrop痴漢」も該当する可能性があります。条文にもある通り、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金と定められています。

条例違反

さらにこの「AirDrop痴漢」は各都道府県が定める条例違反に当たる可能性があります。東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪での条例違反の罰則は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。過去の「AirDrop痴漢」逮捕者の罪状は条例違反であることが多いようです。

さらに、こちらの罪状では実際に逮捕者も出ています。例えば、兵庫県では、電車内で二十代女性にスマホを通じてわいせつ画像を送り付けたとして、県迷惑防止条例違反容疑で三十代の会社員の男が逮捕された例があります。また、大阪府でも、電車内で他人のiPhoneにわいせつ画像を送りつけたとして、和歌山県に住む会社員の男性を府迷惑防止条例違反容疑で書類送検された例があります。

このように、「AirDrop痴漢」はれっきとした犯罪です。安易に手を出すと、逮捕されたり前科がつく等により社会的信用を喪失しかねないことを十分認識する必要があります。

すぐにできる対策法

今すぐにできる「AirDrop痴漢」の対策法について説明します。方法は以下の二点です。

  1. 『設定』→『一般』→『AirDrop』で”連絡先のみ”を選択し設定する
  2.  AirDropは必要なときだけ、連絡先にいる人から受信するという使い方にする。

  3. iPhoneの名前設定に本名は使わず、かつ女性だと思われるようなものにしない。

以上の設定をするだけでも、被害を大幅に減らすことができます。是非今一度ご自分のiPhoneの設定を見直してみてはいかがでしょうか。

参考:「論説 わいせつ情報とわいせつ罪の行為態様・再論
筑波大学法科大学院 渡邊卓也准教授

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