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少年事件の更生保護を弁護士が解説

少年による非行で大切なことは、再犯防止です。少年は精神的な未熟さゆえに社会ルールを逸脱することがあります。それが非行となって警察沙汰となり、家庭裁判所などによる更生保護の手続きに乗り、弁護士も付添人として関与します。

ただ、確信的利欲的動機で犯罪を敢行する大人と違って、少年には立ち直る資質が備わっています。何よりも大人の厳格な制度に接して、ショックを受け、目を覚めさせる効果があります。可塑性と言われる柔軟性も備わっています。それでは、非行少年が、再犯・再非行に陥らずに、円滑に社会復帰するためには、付添人の立場から何ができるでしょうか。また、非行少年を支援するために、どのような施設があるのでしょうか。

ここではまず、非行少年とは何か、非行少年の処遇や実態を説明した後で、付添人としてどのように少年の家庭環境の調整ができるのか、非行少年を支援するためにどのような施設があるかを代表弁護士・中村勉が紹介していきます。

非行少年とは

非行少年とは、少年法による「犯罪少年」、「触法少年」、「ぐ犯少年」の総称をいいます。
犯罪少年とは、 14歳以上20歳未満の者で、犯罪行為をした者(少年法3条1項1号)をいいます。
触法少年とは、14歳未満の者で、刑罰法令に触れる行為をした者(少年法3条1項2号)をいいます。

ぐ犯少年とは、18歳未満の者で、刑罰法令に該当しないぐ犯事由があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者(少年法3条1項3号、65条1項)をいいます。元々は20歳未満の者でしたが、最近の少年法改正により、18歳、19歳の「特定少年」は除外されました。
具体的に、ぐ犯事由とは、保護者の正当な監督に服しない性癖のあること(少年法3条1項3号イ)、正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと(少年法3条1項3号ロ)、犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること(少年法3条1項3号ハ)、自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること(少年法3条1項3号ニ)をいいます。

この他に、「非行少年」に当たらないが、飲酒、喫煙、家出等を行って警察に補導された20歳未満の者を不良行為少年といいます。

非行少年の処遇と実態

非行少年に関する処遇は、家庭裁判所で決定されます。
処遇の内容は、以下のとおりです。

  • 審判不開始
  • 不処分
  • 児童相談所長送致
  • 保護観察
  • 少年院送致
  • 検察官送致
  • 児童自立支援施設・児童養護施設送致
  • 児童相談所送致

ここでは、処遇の内容について、それぞれ説明していきます。

審判不開始

審判不開始とは、審判を開かずに終局することをいいます。調査の結果に基づいて、法律上または事実上審判に付することができない場合、あるいは、審判に付するべき事由はあるが、少年の要保護性が既に解消している場合には、審判不開始決定がなされます(少年法19条1項)。

不処分

不処分とは、審判は開始されますが、処分をしないことをいいます。審判の結果、保護処分に付することができない場合、又は保護処分に付する必要が認められない場合に、不処分決定がなされます(少年法23条2項)。

保護観察

保護観察とは、少年を施設に収容せず、社会生活をさせながら保護観察所の行う指導監督及び補導援護によって少年の改善更生を図る社会内処遇の保護処分をいいます(少年法24条1項1号)。

保護観察は、主に、心理学・教育学・社会学の知識をもつ専門家たる保護観察官と、地域・民間のボランティアである保護司が担っています。少年と日常的に面接を行ない、助言や指導、就労への情報提供、家族へのサポートなどを行います。

少年院送致

少年院は、保護処分の執行を受ける者及び少年院において刑の執行を受ける者を収容し、これらの者に対し矯正教育その他の必要な処遇を行う施設です(少年法24条1項3号)。

少年院は、第1種、第2種、第3種、第4種に分かれており、どの種類の少年院に入院するかは、少年の年齢、心身の状況、非行傾向などを基準として、家庭裁判所で決定されます。第1種少年院には、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満の者、第2種少年院には、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者、第3種少年院には、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満の者、第4種少年院には、少年院において刑の執行を受ける者が入ることになります。

検察官送致

検察官送致とは、成人の刑事事件と同様の処罰をすることです。死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは検察官送致となります(少年法20条1項)。少年が16歳以上で、故意に被害者を死亡させた場合は、原則として検察官送致となります(同条2項)。

最近の少年法改正により、少年が18歳か19歳の場合、「調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない」とされるようになりました。また、「死刑又は無期もしくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であって、その罪を犯すとき」に18歳か19歳の場合も、原則検察官送致しなければならないとされるようになりました(少年法62条1項、同条2項2項)。

児童自立支援施設・児童養護施設送致

児童自立支援施設とは、不良行為をした、またはそのおそれのある児童が入所する施設であって、保護者のもとから通うこともできます(少年法24条1項2号)。ここでは、児童の健全な育成のための指導や、自立のための援助が行われます。

児童養護施設とは、保護者がいない児童や被虐待児などの家庭環境上養護を必要とする児童が入所する施設です(同号)。児童が退所した後も、相談や自立のための援助を行います。ちなみに、近年、児童自立支援施設や児童養護施設に入所する発達障害を持つ非行少年が増えています。発達障害そのものが非行と直結するわけではありませんが、発達障害が少年の人格形成に関係する重要な要因であり、環境要因なども合わさって、非行性に結びつくことも少なくないからです。

児童相談所送致

児童相談所長送致は、少年について、保護処分や保護的措置による不処分よりも、児童福祉機関の措置に委ねるのが適切であると認められるときになされます(少年法18条)。

なお、「令和3年版犯罪白書」によれば、令和2年の非行少年の処遇は、多い順から、審判不開始2万33人、保護観察1万2425人、不処分7926人、検察官送致2966人、少年院1624人、児童相談所長送致141人、児童自立支援施設又は児童養護施設送致87人となっています。

要保護性の解消と付添人活動

少年事件では、審判の対象となるのは、非行事実要保護性の2点です。犯罪行為の軽重が量刑に直結する成人の刑事事件と異なり、少年事件では、非行事実が軽微なものであっても、要保護性が高い場合には、少年院送致等の重い処遇がなされることになります。

逆に、非行事実が重いものであっても、要保護性が解消されている場合には、社会内処遇が選択されることもあるのです。要保護性とは、犯罪的危険性矯正可能性保護相当性の3点から判断されます。

犯罪的危険性とは、少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があることをいいます。矯正可能性とは、保護処分による矯正教育を施すことにより、再非行の危険性を除去できる可能性をいいます。保護相当性とは、保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であることをいいます。

非行少年の非行の背景には様々な要因がありますが、代表的な非行の要因として、家庭環境に問題があることが考えられます。少年の非行の要因を除去することは、上記要保護性の3点の判断要素のうち、犯罪的危険性の要素に関わり、要保護性の解消のために重要といえます。

家庭環境に問題がある場合とは、親から虐待を受けていたり、家族との折り合いが悪く、家庭に居場所がなかったりする等です。これらの問題に対する付添人の取り組みとして、家族との関係の修復を図ったり、修復が難しい場合には家庭に代わる居場所を探したりします。

具体的には、付添人が家庭訪問を行って家族や少年から話を聞いたり、家庭の雰囲気を見たりします。母親が父親からDVを受けていることが判明した場合などには、行政や民間の援助団体、医療機関、カウンセリング等、付添人が保護者を適切な援助機関につなぎ、少年をとりまく環境を変えていくこともできます。家庭に代わる少年の居場所を探すにあたっては、付添人と調査官が密に連携する必要があります。少年の受け入れ先としては、祖父母などの親戚や、少年や保護者と親しい知人などが考えられますが、親戚や知人に少年を監督する意思・能力があるか、付添人がきちんと見極めることが必要です。少年にこのような受け入れ先がない場合には、自立支援ホーム等の施設を探すことになります。
施設については、下記で詳しく説明します。

非行少年を支援するための施設

ここでは、非行少年を支援するための施設を紹介します。
まず、出所後に頼るべき親族がいない等の理由で帰る場所がない少年のために、自立のための一時的な宿泊場所として、法務大臣の認可を受けて運営している施設である「更生保護施設」と、あらかじめ保護観察所に登録されたNPO法人、社会福祉法人などが運営する施設である「自立準備ホーム」というものがあります。これらの施設では、宿泊場所・食事等の生活基盤の提供、社会復帰のための日常生活の指導、就労支援や金銭管理の指導、薬物等の依存治療等の専門的な処遇が行われます。

また、児童自立生活支援事業を専門的に行う、自立援助ホームという施設があります。これは、何らかの理由により家庭にいられない、あるいは児童福祉施設や矯正教育施設を退所した15歳から20歳までの少年に対して、安心して生活できる場を提供し、少年が経済的・精神的に自立できるよう援助する施設のことです。実施主体は都道府県、政令指定都市となり、運営主体は社会福祉法人、NPO、一般社団法人、株式会社等です。現在、全国で200以上の自立援助ホームが活動をしています。

最近では、少年院を出院した若者に対象に、再犯防止を企業に委託するプロジェクトが立ち上がりました。複数の企業や法人が共同体事業を作り、法務省と成果連動型の委託契約を結ぶという枠組みです。具体的には、あらかじめ再犯率や学習継続率といった指標を設定し、達成度合いに応じ国が委託費を支払うという仕組みになっており、少年らの成績があがって再び犯罪を起こさなければ高く、逆なら低くなります。学習支援を担うのは公文教育研究会など教育関係の企業や法人で、日本政策投資銀行や三井住友銀行が資金を提供します。将来的には、成人の更生への導入も視野に入れられています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
非行少年が円滑に社会復帰をするためには、生活環境を調整することが大変重要になってきます。少年や家族だけの努力では限界があることもあるので、公的機関と上手く連携して、円滑な社会復帰を目指しましょう。

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