突然家族が逮捕されると、家族の生活が心配になります。
きちんと食事は支給されているのか、シャワーは浴びれるのか、着替えはどうしているのか…。
必要なものを差入れてあげたいけれど、どうすればよいのかわからない…。
逮捕された人はどこでどのような生活をしているのか。差入れにルールはあるのか。そんな疑問を弁護士・中村勉が解決します。
逮捕されたらどこに連れて行かれる?
警察に逮捕されると、大半の場合は逮捕をした警察官の所属する警察署(「扱いの警察署」と呼ばれます)に連れて行かれ、同警察署内の「留置場」と呼ばれる留置施設に収容されます。例外として、扱いの警察署の留置場が満員であった場合や、同時期に逮捕された共犯者が扱いの警察署の留置場に収容される場合には、近隣の警察署の留置場に収容されます。大半の警察署が備える留置場は男性向けになっており、女性専用の留置場がある警察署は少数に限られています。
そのため、女性が逮捕された場合はほとんどのケースで、逮捕を実施した警察署とは別の女性専用の留置場がある警察署の留置場に収容されることになります。
留置場での生活
留置場はいわゆる「牢屋」です。「牢屋」という言葉からはそれだけで過酷な環境が想像されますが、実際の留置場の生活環境はどのようになっているのでしょうか。
警察庁は、「逃走や証拠隠滅を防止するために必要な制約はあるが、良好な生活環境となるように常に施設・設備の改善、整備に努めているほか、被留置者の人権について配慮を行っている」としており、牢屋といえども一定の生活環境は保障されていることがわかります。
ここで重要なのは、逮捕され留置されている人(「被疑者」と呼ばれます)は、あくまでも「疑われている人」なのであって、まだ「犯罪者」とは決まってはいない(この状態で収容されている人を「未決囚」と言ったりします)という点です。犯罪者という立場が確定するのはあくまでも裁判で有罪の判決を下されてからになります。ゆえに、留置場は牢屋ではあっても、なんらかの罰を下すことを目的とした施設では本来なく、その点がいわゆる「刑務所」とは異なります。
留置場の管理を担うのは警察署の「留置管理課」などと呼ばれる部署ですが、この部門は捜査(取調べ)を実施する部署とは厳密に区別されており、留置管理課に所属する警察官が取調べを行うことは絶対にありません。くわえて、捜査担当の警察官が留置場内に入って取調べを行うことも禁止されています。同じ警察署の中にあっても、留置場は独立した生活空間になっていると言えます。
取調べが行われる際には、留置場から連れ出されて刑事課の取調べ室で行われます。検察官による取調べが行われる際には、通常、その日の朝、同じくその日に検察官による取調べがある他の被収容者の人たちと共に検察庁へ護送され、その日の夜、警察署に戻ってきます。
では、留置場において保障されているという一定の生活環境というのはどのようなものなのでしょうか。
具体的な環境は各留置場により異なるため一概に言えない点もありますが、少なくとも1日3回の食事の支給、空調の完備された空間、一定の運動時間の確保、起床・就寝時刻などの決まりなどといった点は全国の留置場で最低限共通するものと言えるでしょう。
居室は格子により外部から内部を把握できるようになっていますが、ある程度プライバシーも配慮され、例えば各居室内に設置されているトイレには一定の高さの囲いが設けられています。
このほか、回数は頻繁ではありませんが、入浴や医師による診察の機会といった保健衛生面の手当ても講じられています。娯楽についてもある程度は認められており、大抵の警察署では数やジャンルは限られますが本の貸出を受けられます。本については後述の通り、外部からの差入れも可能です。
逮捕された人へ差入れできるもの・できないもの
差入れできるもの
差入れができるのは以下のとおりです。
- 現金
- 本・雑誌類
- ノート・便箋
- 写真
- 眼鏡
- 衣類
本・雑誌類、ノート、便箋、写真については書き込みがないものに限られます。
その他の生活必需品(食べ物、トイレットペーパー、歯ブラシ、シャンプー、石鹸、タオル等)については留置場内で支給されるか、本人が購入するようになっています。衣類については差入れをしなくても留置場内で貸し出されるものがありますが、下着類などは差入れを希望される方が比較的多いです。
本や雑誌を差入れする場合には、1回につき何冊まで等の制限が警察署ごとにあります。
衣類については留置場内において他人及び自分に対して危害を加えるのを防止するため等の理由から、警察署によって様々な制限が設けられています。
差入れできない衣類
差入れのできない衣類として代表的なものには以下のようなものがあります。
- フード付きのもの
- 紐が入っているもの
- チャックが付いているもの
- 金具が付いているもの
- 装飾品が付いているもの
- 伸縮性の高い生地が使われているもの
- くるぶし丈以上の長さの靴下
※もともとウエスト部分に紐の入っているジャージのズボン等については、紐を抜き取った上、紐通し穴を糸で縫って閉じることで差入れができます。ウエストのゴムについては、抜き出せない状態になっている限り、通常はそのままで問題ありません。
以上は多くの警察署で採用されているルールになりますが、警察署によってはより厳しいルールがあるところもあれば、より緩やかなルールとなっているところもありますので、詳しい運用については差入れに行かれる警察署の留置管理課にお問い合わせください。
逮捕された人へ差入れする方法
一般の方が差入れできるのは、面会と同様、平日のみです。時間帯は警察署によって異なりますが、面会可能時間と合わせて、大体午前8時30分から午後4時までの時間帯が定められていることが多いです。また、お昼の12時から13時まではお昼休みとなり、受付はしてもらえないところが多いです。なお、本人が取調べ等で警察署外に出ていると本人との面会はできませんが、本人への差入れについては通常可能です。
警察署によっては、郵送での差入れも可能です。その場合には宛名欄に警察署名+留置管理課+本人の氏名を記載しましょう。差入れできないものを送った場合には、差出人ではなく、受取人である本人に確認の上破棄の手続をとられることが多いのでご注意ください。
警察署で直接差入れする際の流れ
以下、警察署で直接差入れする際の流れをご説明します。
- 身分証と印鑑を持参して、差入受付時間内に警察署へ行き、総合受付で、留置されている人に差入れに来た旨告げる。
- 留置管理課に案内されると、差入れのための申込用紙を渡されるので、差入れ相手の氏名やご自身の氏名・生年月日・住所・連絡先・差入れ相手との関係等を記入し、押印する。
※最近は押印を省略可能とする警察署も増えてきています。差入れるものの品目や数については、書き方が決まっているので、差入れるものを係に渡したうえで、係の指示に従って記入が必要です。
差入れできないものについてはあらかじめ留置管理課に電話して聞いておくのをお勧めしますが、いずれにしても、差入れできないものについては、上記②の際にその旨言われ返されますので、自分で判断が難しいものについてはとりあえず持っていってみるのもよいでしょう。
弁護士は差入れがいつでも可能
弁護士は、一般の方と違い、差入れが可能な時間に制限がありません。
急ぎで本人に差入れてあげたいものがある場合には弁護士にお願いするのがよいでしょう。
警察署(留置場・留置所)と拘置所の違い
逮捕されて勾留が決定すると、その勾留期間中、警察署の留置場で留置されることになります。警察や検察による捜査が終わり、起訴されると、起訴時に勾留されていた方は、原則として保釈が認められない限り、引き続き刑事裁判の判決が出るまで勾留されることになります(起訴後は立場が「被疑者」から「被告人」に変わりますので、起訴後の勾留は「被告人勾留」と呼ばれたりします)。
被告人勾留となってしばらくすると、警察署の留置場から拘置所へ移送され、拘置所で収容されることになります。もっとも、拘置所の収容人数の関係や、裁判の期日がそれほど先でなく、また、1回の期日のみで裁判が終わるような場合には、拘置所に移送されないままということもあり得ます。
拘置所での差入れのルールの大枠は警察署での差入れのルールとほとんど同じです。もっとも、拘置所での差入れについては、拘置所にもよりますが、差入れ可能な衣類の制限が警察署よりやや緩和されている場合があります。また、拘置所内の売店で売られているもの(日用品やお菓子等)であれば、その場で購入して本人へ差入れてもらうことが可能です。
まとめ
以上、警察署の留置場での生活環境や差入れについて見てきました。
一定の生活環境は保障されているとはいえ、ご本人にとってはこれまでの生活とは大きく異なり、不便に感じることはもちろんのこと、その生活が一体いつまで続くのか不安に駆られることになります。特に弁護士以外の人との面会が許されていない逮捕直後は、その傾向にあります。
ご家族が逮捕された場合には、お早めに弁護士にご相談・ご依頼いただくことで、早期に弁護士がご本人と接見して刑事手続の流れを説明し、不安を軽減することができます。接見の際、差入れの代行することも可能です。ご家族が逮捕された場合はご相談ください。
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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
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