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転売行為で逮捕されたら? 弁護士が解説

昨今、個人間での不用品の売買が簡単にできるフリマアプリが急速に普及し、転売によって利益を得る人たちが増えてきました。中には、大量の開封済み化粧品やブランド品を売りさばくなど、単なる不用品の売却とは考え難い販売形態も見られます。

また、限定品を高値で売りさばいて利益を得ているとか、人気のチケットが転売目的で買い占められ、一般にはなかなか手に入らない事態となるといった話もよく耳にします。このような物品の転売は、法的に問題はないのでしょうか。

今回は、何をどのように転売した場合に犯罪行為となるのか、また、違法転売で疑われた場合どうすればよいのかなどにつき、弁護士・中村勉が解説します。

転売行為とは

転売行為とは、一般に、自分が買ったものをさらに他の人に売る行為のことであり、例えば、自分が一度買って使い、不要になったものを売ることなどです。ただ、最近では、転売というと、当初から他人に売る目的で物を購入し、それを購入価格より高めに売って差額分の利益を得る行為をイメージする人が多いのではないでしょうか。

フリマアプリが想定する、個人間の不用品の売買、すなわち、自分が一度買って使ったもの、あるいは自分が当初使う目的で買ったが使わなかったものを売る行為は、いわゆる禁制品その他所持、販売等自体が禁止・規制されている場合等でない限り、基本的には違法にはならないでしょう。しかしながら、以下のような行為は犯罪となり得ます。

犯罪になる転売行為とは

古物営業法違反

「古物」とは、以下のものをいいます(古物営業法第2条)。

  • 一度使用された物品
  • 使用されない物品で使用のために取引されたもの
  • これらいずれかの物品に幾分の手入れをしたもの

古物を売買する営業を営むには、都道府県公安委員会の許可が必要です(同法3条、2条2項1号)。許可を受けずに古物売買の営業をした場合には、3年以下の懲役又100万円以下の罰金に処せられます(同法31条1号)。

なぜこのような法律が存在するかというと、古物の売買には、盗品等の犯罪被害品が混入する可能性があり、これを放置してしまうと、結果的に窃盗をはじめとする犯罪を助長するおそれがあるからです。そのため、古物売買の営業を許可制とし、古物売買等の営業を営む人(法律上、「古物商」と呼ばれます。)には取引相手の本人確認義務や当該古物が不正品の疑いがあると認められる場合に警察官に申告する義務等を課すことによって、窃盗その他の犯罪の防止を図るとともに、被害が迅速に回復できる社会を維持することが図られています(同法15条、1条)。

そして、古物商は、買い受けるなどした古物が盗品又は遺失物であった場合、当該古物商が公の市場等において盗品又は遺失物と知らずに譲り受けた場合でも、盗難又は遺失のときから1年間は、被害者又は遺失主から無償での回復を求められるという、民事法上の重い責任も負います(同法20条)。

フリマアプリ等で売買される不用品は、「古物」ではありましょうが、一般の人が不要品を売買する程度であれば、通常古物「営業」とは言えないでしょうから、許可は不要であり、許可なしに売買しても古物営業法違反には当たりません。もっとも、その売買の量が大量で、反復継続して取引を行っているなど、明らかに単なる個人の不用品の売買とは見えない場合、許可なく古物営業を営んでいるものとして、古物営業法違反の嫌疑がかけられ、最悪、立件・逮捕という可能性もありましょう。

迷惑防止条例違反

各都道府県及び一部の市町村では、「迷惑防止条例」あるいは「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」等の名称の条例が定められています。

この条例は痴漢、盗撮等の行為を禁止し処罰する条例としてよく知られていますが、一部を除きほとんどの都道府県の条例では、ダフ屋行為といって、運送機関を利用するための乗車券、公共の娯楽施設を利用するための入場券等を、不特定の人に転売するため、あるいはそのような転売目的を有する人に交付するため、これらを公共の場所や公共の乗物において、買ったり、買おうとしたり、あるいは、転売する目的で得た乗車券、入場券等を公共の場所や公共の乗物において、売ったり、売ろうとしたりしようとする行為を禁止し処罰しています。ですので、たとえば、販売数が制限されている入場券等を転売する目的で購入した上、これを公共の場所で売ったり売ろうとする行為は、ダフ屋行為として罰せられる可能性があります。

もっとも、2018年12月に制定され、2019年6月14日に施行された「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(略称「チケット不正転売禁止法」)により、演劇、コンサート、スポーツ等のチケットその他それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票のうち一定の要件に該当するもの(特定興行入場券。同法第2条3項)については、ダフ屋行為に限らず、その不正転売や、不正転売を目的とした譲受行為が禁止され、罰せられるようになった(同法第3条、第4条)ため、チケット等の不正転売等をした場合には、迷惑防止条例違反ではなく、チケット不正転売禁止法違反として扱われることが増えるものと予想されます。

ただ、チケット不正転売禁止法は業として行われない転売等は規制対象としていないため、その関係で、迷惑防止条例によるダフ屋行為の規制は今もなお存在意義があると言えましょう。

チケット不正転売禁止法違反

上述したチケット不正転売禁止法は、2020年東京オリンピック等におけるチケット等の転売を念頭に定められました。この法律の制定前は、人気のあるコンサートやスポーツ等のイベントのチケットを販売開始直後に買い占め、インターネット等で高額転売をするような業者や個人がいたために、チケットを本当に必要としている人がチケットを適正価格で購入できず、また、イベント開催者とは関係のない第三者がチケットの高額転売によって不当な利益を得るという事態が問題視されていました。

上記迷惑防止条例では、インターネット上でのチケット転売行為は規制の対象になっていなかったため、チケット不正転売禁止法はこのような行為についても規制対象となりうる点でも大きな意味を持ちます。

チケット不正転売禁止法で禁止されている行為

チケット不正転売禁止法で禁止されている行為は以下のとおりです。

  • 特定興行入場券の不正転売(法3条)
  • 特定興行入場券の不正転売を目的とした特定興行入場券の譲受(法4条)

「特定興行入場券」とは下記の要件を全て満たす映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツのチケットのことをいいます (法2条、3条)。

  1. 興行主が、販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面(電子チケットについては映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて)に表示させたものであること
  2. 興行が行われる特定の日時・場所と入場資格者又は座席が指定されたものであること
  3. 興行主が、販売に際し、入場資格者又は購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)を確認する措置を講じ、その旨を券面(電子チケットについては映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて)に表示させたものであること

上記の要件を全て満たす場合に「特定興業入場券」として規制の対象となりますので、どんなチケットでも規制対象になるというわけではありません。

また、特定興行入場券の「不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいいます(法2条4項)。
したがって、業として、すなわち、反復継続の意思を持って行う特定興行入場券の有償譲渡ではない場合には、処罰の対象にはなりません。

とはいえ、1回限りの転売行為であっても、反復継続の意思を持って、かつ、興行主等の販売価格を超える価格で販売した場合には、不正転売として処罰の対象となり得ます。
特定興行入場券を購入したものの、たまたま急用や急病で行けなくなった場合に当該入場券を他人に売る行為は、業として行う有償譲渡ではありませんので、通常は不正転売には当たらないと言えます。
この法律に違反して特定興行入場券を不正転売したり、不正転売を目的として特定興行入場券を譲り受けたりした場合には、一年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処せられ、又は、これらを併科される可能性があります(法9条1項)。

詐欺罪(刑法246条)

転売目的での購入を禁止する旨明示している売主から、転売目的があるにもかかわらず、それを隠して物品を購入した場合には、詐欺罪が成立する可能性があります。詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となっており(刑法246条)、罰金刑は定められていませんので、このような行為も軽く見ることはできません。

医薬品医療機器等法違反

フリマアプリでよく見られる化粧品の出品も、違法な転売となる可能性があります。
たとえば、海外で購入した化粧品や個人輸入した海外製の化粧品を販売する行為は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称「医薬品医療機器等法」)に抵触する可能性があります(法62条、55条2項)。
この違反行為の法定刑は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科となっています(法84条2号、18号)。

販売行為自体が禁止・規制されているもの

化粧品以外にも、医薬品や酒類等、その販売にそもそも許可や免許が必要とされている物については、それらを販売すると医薬品医療機器等法違反や酒税法違反になる場合があります。

偽ブランド品については、偽物と知りながら転売すれば、偽物と知りながら購入した場合でも、知らずに購入して後から偽物と気付いた場合でも、商標法違反となります。

転売で逮捕されたら

事案にもよりますが、逮捕される場合は、一般に、警察からの事前の事情聴取などなく、あるいは、ある日突然家宅捜索に来られてそのまま逮捕、といった事態が想定されます。身に覚えがあって、そのような事態をできる限り避け、できる限り寛大な処分を求めるためには、いち早く弁護士に相談し、販売先・興行主との示談を試みるなど善後策を検討する必要があります。
また、ご家族が突然逮捕された場合には、いち早く弁護士に依頼し、ひとまずご本人に接見に行ってもらうことも重要です。

転売行為で違法性が問題となった事例

チケットの転売で詐欺に該当し執行猶予判決の事例

被告人が、営利目的での転売を禁止されているコンサートチケットについて、営利目的での転売意思を有しているのに、これがないかのように装って販売会社にチケットの購入を申し込み、電子チケット及び紙チケットを詐取した、詐欺利得罪及び詐欺罪の事案において、犯行は常習的かつ職業的であること、一連の行為態様は販売会社の転売防止策をかいくぐる巧妙なものであることから、被告人の責任は重大であるが、他方で、被告人は反省の態度を示していることなども考慮し、被告人に懲役2年6月、執行猶予4年を言い渡した事例。

チケット不正転売防止法違反で執行猶予判決の事例

被告人が、舞台公演Bの興行主であるC社の事前の同意を得ないで、業として、同舞台公演の電子チケットを興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格で譲渡し、C社作成名義の身分証明書1通を偽造した上、舞台公演Bの入場口において、スタッフに対し、同偽造身分証明書を真正に成立したもののように装って提出して行使した事案において、被告人は、転売されているチケットを複数入手するなどした上で、偽造身分証明書を利用して公演に入場するほか、残りのチケットを転売し、得た利益をチケットの購入代金に充てるということを繰り返す中で、本件各犯行を敢行し、その動機や経緯に酌むべき事情は特に認められないとし、懲役1年6月及び罰金30万円、3年間の執行猶予を言い渡した事例。

まとめ

いかがでしたか。医薬品等一部の商品を除き、個人で不用品をフリマ等で転売することは基本的には問題ありません。
しかし、転売行為には上記のとおりの様々な法規制があり、少なからず違法となるリスクがありますから、事前に事案に応じた専門的な検討が必要です。

特に、大量又は反復継続して行う場合、利潤を追及する場合、古物・チケット類・医薬品・酒類・ブランド品等の売買の場合などには、慎重に検討すべきでしょう。上記の法規制に該当しないかどうか不安な転売行為を既に行っている場合には、いきなりの逮捕劇とならないよう、早めに弁護士に相談しましょう。

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