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身元引受人とは – 身元引受人が必要になるケースや条件について元検事率いる中村国際刑事の弁護士が解説

2016年、有名人が覚せい剤使用等の罪で逮捕された事件において、その方のご家族だけでなく、職業上の上司なども「身元引受人になる」と申し出たという報道がなされました。

身近な人が逮捕された場合、その人の力になりたいと思う反面、身元引受人になるための条件やリスクなどについて予め確かな情報を把握しておくことが重要となります。以下、身元引受人の役割や責任、リスクなどについて説明いたします。

身元引受人とは

刑事事件における身元引受人とは、警察の聴取等を受けた被疑者が、以後逃走や証拠隠滅をせず、二度と罪を犯さないよう監督する人のことをいいます。

保証人や後見人との違い

保証人とは、一般的には、他人の債務の支払いを保証する人のことを言います。たとえば、借金をした本人が返済できなかったり、賃貸の住宅や駐車場などを借りている本人が賃料を滞納したような場合に、本人に代わって賃料などの支払いをします。

後見人とは、一言でいうと、民法上の代理人のひとつです。判断能力が不十分なために契約などの法律行為を行えない人に代わって、必要な契約を締結するなどの財産管理に関する法律行為などを行います。

一言でいうと、保証人は債務を支払う人、後見人は法律行為などを代理する人です。
これに対し、刑事事件における身元引受人とは、犯人を監督する人のことを言うのです。

身元引受人の役割や責任

身元引受人の主な役割は以下の通りです。

  • 被疑者がその後逃亡したり罪証隠滅を行うことを阻止すること
  • 被疑者のその後の捜査機関や裁判所などへの出頭を確約すること
  • 被疑者と同居し被疑者の私生活全般を監督すること
  • その他被疑者の生活全般を監督し更生させること

身元引受人の負うべき責任は、以下の通りです。

捜査機関または裁判所に対し、約束内容を履行するだろうという信用・信頼に応える必要があります。

身元引受人は、後に述べるように、被疑者や被告人の身柄を捜査機関や裁判所などが敢えて確保せずとも被疑者・被告人の逃亡や罪証隠滅を阻止し、出頭を確保し、その後の更生を確約する役割を担っています。そして、そのような内容を、捜査機関及び裁判所に対し約束するのでありますから、一度約束した内容に応えるべき立場にあると言えます。

刑罰を科せられたり、損害賠償請求を被ることはありません。

決してあってはならないことですが、もし、被疑者や被告人が、身柄引受人がいるにもかかわらず逃走したり罪証を隠滅してしまった場合であっても、身元引受人が刑罰を受けたり、損害賠償を支払わなければならないということはありません。

その後身元引受人を引き受けられない場合があります。

もっとも、例えば一度逃走を許したり、罪証隠滅を許してしまったような場合、その後も同じ人が身柄引受人の役を引き受けようとしても、捜査機関や裁判所などから認められない場合があります。

上記のような、捜査機関や裁判所からの信用・信頼を一度失った者は、その後に身柄引受人の職についても再び逃亡や罪証隠滅などを許してしまうのではないか等と推認されてしまうのです。

身元引受人が必要になるケース

刑事事件において身元保証人が必要になるケースは主に以下のものがあります。

自首同行や任意取調べのために警察へ出頭する場合

一般的に、捜査機関に未発覚の事件につき自首をする場合や、警察から任意の取調べの出頭を要請されているような場合に、予め身元引受人とともに出頭する場合があります。
身元引受人がいることで、捜査機関が敢えて逮捕せずとも、在宅のまま捜査を進めることが可能であると判断してもらえる可能性が上がるのです。

逮捕・勾留後の釈放や保釈を求める場合

一度捜査機関に身柄を拘束された者がその後身柄を解放される場合、その後に逃亡や罪証を隠滅しないこと、捜査機関や裁判所への出廷を保証するため、身元引受人を用意する場合があります。

身元引受人がいることで、捜査機関や裁判所がその後に敢えて身柄を拘束せずとも、在宅のまま捜査や裁判を進めることが可能であると判断してもらえる可能性が上がるのです。

被疑者の更生を裁判において誓約する場合

裁判において、被告人が二度と犯罪をせず、全うな社会生活を営むために、その後の被告人の更生を約束する者として、身柄引受人を立てる場合があります。

身元引受人がいることで、懲役刑のような施設処遇を敢えてせずとも、社会生活を営みながら、更生施設や病院へ通院することなどによる更生が可能であると判断してもらえる可能性が上がるのです。

身元引受人を立てるまでの流れ

上記の場面ごとに異なる流れとなります。

自首同行や任意取調べのために警察へ出頭する場合

この場合、出頭する日時が予め判明しているので、出頭する本人とともに身元引受人が同行する場合がほとんどです。

逮捕・勾留後の釈放や保釈を求める場合

逮捕後や勾留後の釈放時には、本人又は警察から家族などへ電話し、事情を説明の上、身元引受人として警察署へ迎えに来ることとなります。

保釈を求める場合には、弁護士を通じて保釈請求をする際に、弁護士が予め身元引受人を用意することとなります。保釈が認められた後、警察署等へ迎えに来ることとなります。

裁判において誓約する場合

この場合には、裁判において身元引受人として被告人を監督していく旨の証言をすることが多いです。弁護士と相談の上、証人として被告人を監督し更生させていくための具体的な内容を証言できるよう予め打合せを行います。

身元引受人になれる人とは

事案ごとに異なりますが、一般的には以下のような場合があります。

同居の家族や親族

第一に、身元引受人として相応しいのは、同居の親や配偶者、兄弟などの家族・親族となります。同居していることで、私生活を含めた監督が可能となり、家族や親族であることで、赤の他人では把握しづらい犯罪や更生に関する知識をも被疑者・被告人と共有することが期待でき、その分監督効果も期待できるからです。

会社の社長・上司など

会社との信頼関係によりケースバイケースですが、同居の家族や親族がおらず、勤務先の社長や上司がいわば親代わりになって監督してくれるような場合には、会社の社長や上司が身元引受人になることが可能です。

もっとも、会社は、罪を犯したことなどを理由として懲戒処分などを行う場合があるので、状況に応じ、会社関係者に犯罪を伝えることには慎重になるべきでしょう。

身元引受人になったらするべきこと

身元引受人になったら、以下で述べた役割を果たす必要があります。

  • 被疑者がその後逃亡したり罪証隠滅を行うことを阻止すること
  • 被疑者のその後の捜査機関や裁判所などへの出頭を確約すること
  • 被疑者と同居し被疑者の私生活全般を監督すること
  • その他被疑者の生活全般を監督し更生させること

身元引受人になる際の注意点

自首同行や任意聴取への同行、留置施設へ迎えに行く場合などには、捜査機関の用意する「身柄請書」という書面への記入が求められるので必ず記入しましょう。

被疑者の身柄を引き受けること、捜査機関からの呼び出しを受けた場合には出頭させる等の内容の書面となります。氏名、住所、職業、生年月日、電話番号などの記載を求められますので漏れなく記入するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。身元引受人についての役割などについてご理解いただけたのではないかと思います。ご不明な点があればいつでも刑事専門の弁護士へご連絡ください。

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