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裏垢トラブルで警察から連絡があった場合を弁護士が解説

今回は、「裏垢」で起きやすいトラブルや犯罪について、代表弁護士・中村勉が解説いたします。

裏垢とは?

技術革新の進行に伴い、匿名性の高い社会となり、犯罪は密行化し、コミュニティが破壊されると警笛を鳴らしたのは、我が恩師渥美東洋教授でした。先生ご存命のころはSNSはまだ普及しておらず、SNSを通じてここまで社会に悪が蔓延るとは先生も想像していなかったかもしれません。

匿名性社会のもっともリスキーな点は、犯罪行為の反対動機形成のハードルが低くなること、そして被害者にとっても防衛ラインが低くなることです。そして今、「裏垢」なる悪が人々のセキュリティを侵し始めています。

「裏垢」とは「裏アカウント」の略で、本来のアカウントとは別に設けているアカウントのことをいいます。裏垢の使用目的は人によって様々ですが、例えば、性的な画像や動画、下着などの売買など、表立ってできないような小遣い稼ぎや、学校や会社の悪口を書いてストレス解消するなど、本来その人が属している学校や会社などのコミュニティに向けては発信できないようなことを発信するために使用されています。

もちろん、裏垢で発信するだけで直ちに違法になるわけではありませんが、よく気を付けないと犯罪行為になり、警察沙汰になることもあります。
また、裏垢を使っている人の中には、例えば女性を装って詐欺行為をするなどの悪質な業者も数多く存在し、よく気を付けないと犯罪行為の被害者になってしまうこともあります。

裏垢で起きやすいトラブル

性的画像・動画の送信

当事務所の相談でも最近目立つのが性的画像・動画の送信に関するトラブルです。
例えば、女性を装ったアカウントが、「お金を送れば性的画像・動画を送る」などと発信して買い手を募集し、これを信じた買い手からお金(電子マネーやAmazonギフト券などを含む)を受け取り、実際には動画や画像は送らず、相手をブロックするという詐欺があります。この手法の詐欺で特徴的な点は、誰でも簡単にできることです。

詐欺といえば「振り込め詐欺」が有名ですが、振り込め詐欺は、掛け子、受け子、出し子など様々な役割があり、とても一個人ではできません。
しかし、この詐欺は、裏垢一つ作ればできるので、特別な準備も協力者もなく、一個人で簡単にできてしまいます。当事務所に相談があったケースでも、少年が一人で小遣い稼ぎにこの詐欺を繰り返していたところ、警察がある日突然家宅捜索に来たというものがありました。

この種の投稿では、実際に性的画像・動画が送られてきたとしても、詐欺とはまた違った犯罪が成立することがあります。例えば、当該性的画像・動画が児童ポルノに該当すれば、所持するだけで犯罪になります。この場合、お金のやり取りがあったかどうかは関係なく、単に「裏垢女子」のツイートをリツイート・いいねをしただけで性的画像を送られてきたというケースもあります。

性的画像・動画の投稿

以上は個人間の性的画像・動画の送信に関するトラブルですが、性的画像・動画を不特定多数者が閲覧可能な方法で投稿された場合には、また違った犯罪が成立します。
当該性的画像・動画が先ほど挙げた児童ポルノに当たれば、児童ポルノ頒布公然陳列の罪が成立しますが、児童ポルノに当たなかったとしても、わいせつ電磁的記録頒布罪に当たる可能性があります。第三者が見て撮影対象者が特定できるような性的画像・動画の場合には、リベンジポルノ防止法違反の罪が成立し得ます。

誹謗中傷

性的画像・動画に関するトラブルだけでなく、SNSでの誹謗中傷も最近大きく問題となっています。SNSでの誹謗中傷は、名誉毀損・侮辱に当たる可能性があります。
特に、侮辱罪は厳罰化に関するニュースが最近大きく取り上げられました。「裏垢だから大丈夫」と思って投稿しても、被害者にバレてしまい、刑事告訴や損害賠償請求されてしまうこともあります。安易な誹謗中傷は避けるべきでしょう。

裏垢トラブルで該当する罪状や罰則

これまで、裏垢で起きやすいトラブルや成立し得る犯罪を取り上げましたが、以下では成立し得る犯罪についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

詐欺

刑法第246条(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

最初にご紹介した「お金を送れば性的画像・動画を送る」などと発信してお金だけを受け取り、実際には動画や画像を送らないという手法は、「人を欺いて財物を交付」させていることになるので、詐欺罪が成立します。

詐欺罪は懲役刑しか予定されておらず、罰金刑が選択肢にないため、起訴される場合は略式起訴で済まされず、正式裁判になります。
しかも、この手法の詐欺は、1人の被害者から多額のお金を騙し取るのではなく、多くの被害者から少しずつお金を騙し取るタイプであるため、被害弁償が比較的難しい部類に入ります。個人での示談交渉は難しいでしょう。

児童ポルノ禁止法違反

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 (中略)
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、ビデオテープその他の物であって、
次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

第7条(児童ポルノ頒布等)
児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3 第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

先ほどご紹介した「児童ポルノ」は、児童ポルノ法2条に定義されているような18歳未満の者のわいせつな画像・動画などを指します。
そして、この児童ポルノを「頒布」「販売」「公然と陳列」「所持」などをすると7条により、処罰されます。法定刑は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となっており、略式起訴の余地があるとはいえ、軽くはありません。

わいせつ電磁的記録頒布

刑法第175条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

被写体の人物が18歳以上であったとしても、わいせつな画像・動画を「頒布」すれば、わいせつ電磁的記録頒布罪に問われます。
法定刑は2年以下の懲役又は250万円以下の罰金もしくは科料と児童ポルノ禁止法違反に比べれば少し下がるものの、懲役刑と罰金刑が併科されることもあり得、やはり軽いとはいえません。

リベンジポルノ防止法違反

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
第2条(定義)
この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。

第3条(私事性的画像記録提供等)
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

リベンジポルノ防止法は正式名称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といい、比較的新しくできた法律です。
定義規定は一見長く見えますが、児童ポルノ禁止法に倣って作られているため、先に挙げた児童ポルノ禁止法の定義規定に目を通していればさほど難しくありません。
この法律のポイントは3条1項の「第三者が撮影対象者を特定することができる方法で」の文言です。

つまり、被写体の人物の顔がわかるような性的画像・動画などを誰でも閲覧可能なSNSなどに投稿してしまうと、リベンジポルノ防止法が適用されます。

ただし、本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像(アダルトビデオ・グラビア写真等)の場合はリベンジポルノには当たりません。
法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっており、略式起訴もあり得る規定にはなっていますが、初犯でも略式起訴ではなくいきなり正式起訴されるケースが目立ちます。立件された場合、あまり甘く見ない方がよいでしょう。

名誉毀損・侮辱

刑法第230条(名誉毀損)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

刑法第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

名誉毀損と侮辱は条文を見比べるとおわかりのとおり、「事実の適示」があるかないかで区別されます。「事実の適示」がある名誉毀損は法定刑が3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金となっているのに対し、「事実の適示」がない侮辱は法定刑が「拘留又は科料」とかなり軽い罪になっています。

ただし、侮辱については、ネット上の誹謗中傷を抑止するためには厳罰化が必要との見方が強まり、今後、「1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、又は拘留もしくは科料」に引き上げられる見込みです。「侮辱なら大した罪にはならない」などと思わない方がよいでしょう。

裏垢トラブルで警察から連絡があった場合

以上ご紹介したとおり、裏垢トラブルには様々な犯罪が成立し得るため、 警察沙汰になるケースも増えています。特に、児童ポルノ事件の送致事件に係る被害児童は、平成25年に646人だったのに対し、平成29年には約2倍の1,216人まで増加しています。

出典: 平成30年警察白書 統計資料

安易に裸の写真を送信するなどしないよう注意を呼び掛けるポスターも多く見られるようになりました。今後も裏垢トラブルを含むSNS関係の犯罪は増加していくものと考えられます。トラブルを未然に防止するためには、「裏垢だからバレない」などと安易に考えず、このような犯罪になるおそれはないか十分に注意すべきでしょう。

もし、裏垢トラブルで警察から連絡があった場合、すぐにでも弁護士に相談すべきです。ネットの世界では被害者の顔が見えないため、実際に被害者がいるという意識が希薄になりがちですが、警察から連絡があるということは現実の被害者が被害届を出している可能性が高いです。

被害者がいる犯罪では、示談が非常に重要になりますが、ネットの世界では被害者がどこの誰かわかりにくいことも多く、個人での示談交渉はハードルが高いといえます。その点、弁護士であれば、警察や検察官経由で実際の被害者の連絡先取次ぎを依頼することが可能であり、被害者としても、加害者本人ではなく弁護士限りであれば連絡先を教えてくれるという人が多いです。ただし、裏垢トラブルのような事件では、被害者が近くに住んでいる人とは限らず、示談交渉にも時間がかかるケースも多いため、早めの行動する必要性が高いといえます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。SNSは今や誰もが使っているツールではありますが、その反面、裏垢トラブルにより、加害者・被害者どちらの立場でも犯罪に巻き込まれてしまうリスクが上昇しています。
警察から連絡が来た場合はもちろん、そうでなかったとしても、「自分の投稿・DMが犯罪になるかもしれない」と思った場合は早めに弁護士にご相談ください。ネット犯罪にも経験豊富な刑事事件に強い弁護士が、あなたにとっての最善策を提案します。

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