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罰金刑の場合に弁護士をつけるメリットを解説

何か悪いことをしたら罰金を科される。誰しも漠然とそのような意識があるかもしれません。

ある意味当然すぎて、罰金を受けることのデメリットをきちんと理解せず、「刑務所に行くわけではないでしょう」「罰金くらい別に…」と思っていらっしゃる方も多いと思います。

もし現に警察や検察に呼び出され、罰金の話をされているのであれば、本記事をご一読されることをお勧めします。
本コラムは代表弁護士・中村勉が執筆いたしました。

罰金刑とは

罰金刑とは、いくつかある刑事罰の種類の一つで、一定の金額の剥奪を内容とするものです。
刑事罰の種類は刑法第9条に定められており、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収の7種類あります。

刑法第9条(刑の種類)
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

死刑を除き、刑事罰は、人の身体の自由を奪う自由刑と、人の財産を奪う財産刑にわかれます。

  • 自由刑: 懲役、禁錮、拘留
  • 財産刑: 罰金、科料、没収

刑の軽重は基本的に刑法第9条に規定する順序によるものとされていますので(刑法第10条1項)、罰金は、死刑、懲役刑や禁錮刑と比べて軽く、拘留や科料よりかは重い刑ということになります。なお、没収は付加刑といって、単独では言い渡せない刑になりますので、没収だけの刑罰を受けることはありません

それでは、同じ財産刑である罰金と科料では、どういった違いがあるのでしょうか。違いは、罰金と科料についてそれぞれ定めている以下の条文と見ると、一目瞭然です。

刑法第15条(罰金)
罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。

刑法第17条(科料)
科料は、千円以上一万円未満とする。

罰金は、1万円以上の金額の剥奪を内容とするもので、科料は1万円未満の額(ただし下限千円)の金額の剥奪を内容とするものということですから、金額の多寡が違いとなっていることがわかります。

罰金刑の最低金額は1万円ということですが、最高金額については、罰金刑を刑事罰として定めている各犯罪の罰則規定において「~以下の罰金」というように個別に定められています。刑法では特に罰金の上限金額につき制限は設けておらず、罰則規定によっては億単位の罰金の上限を定めているものもあります。

刑事罰上の罰金刑の立ち位置

刑事罰上、罰金刑が、死刑・懲役・禁錮よりかは軽く、拘留・科料よりかは重いものとされていることは先程述べたとおりです。
もっとも、刑事罰として罰金刑のみ定めている犯罪はあまり多くありません。
「30万円以下の罰金又は科料」(過失傷害罪等)となっていたり、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(傷害罪等)となっていたりする例が多いです。このように複数の刑事罰が「又は」で規定されている場合の刑事罰を「選択刑」といいます。
特に、懲役刑と罰金刑の選択刑となっている例がよく見られます。以下のようなよく耳にする犯罪も、懲役刑と罰金刑の選択刑が定められています。

刑事罰として懲役刑と罰金刑の選択刑が定められている犯罪の例

  • 窃盗罪(刑法第203条)
  • 暴行罪(刑法第208条)
  • 傷害罪(刑法第204条)
  • 脅迫罪(刑法第222条)
  • 名誉棄損罪(刑法第230条)
  • 公然わいせつ罪(刑法第174条)

これらの罪は、懲役刑が科されずに、罰金刑のみで済む場合もあるという意味では、懲役刑のみ定められている犯罪と比較すると軽い犯罪類型に入るといえます。
ただ、検察官としては、懲役刑より軽い罰金刑を選ぶことができることにより、起訴か不起訴か、という判断よりも、略式手続(刑事訴訟法第461条以下)に拠ることができる軽い罰金刑か、懲役刑の求刑をするための公判請求(※略式手続に拠ることにつき、被疑者の同意が得られなかった場合には公判請求をして罰金の求刑をすることもあります)か、という判断をする傾向にあります。

略式手続も、当該被疑者を被告人として起訴していることに変わりはありませんので、一度罰金の略式命令が出れば、それは前科となってしまいます。このような懲役刑と罰金刑の選択刑が定められている犯罪において、起訴を回避するためには、弁護士による示談交渉や弁護士の検察官に対する不起訴処分意見の上申が不可欠です。

犯行態様や前科の種類及び数によっては、罰金刑は避けられないというケースもありますが、その場合にも、刑事事件の中で示談をすることで、同時に後々の民事紛争を防ぐことができ、刑事民事を一括解決することができます。

罰金刑を受けることによる金銭以外のデメリット

上述したとおり、前科がつく、という大きなデメリットがあります。前科がつくと、以下のような影響が考えられます。

就職活動への影響

就職活動の際には、履歴書が用いられますが、履歴書によっては「賞罰」を記載する欄があります。前科は一般的に「罰」に当たると考えられますので、罰金刑であっても、前科としてその事実を記載する必要が出てきます。
罰金刑を受けた事実を記載すればどこも採用してくれないだろうと考え、もし何も記載せずに当該履歴書を応募先の会社等に提出し、採用された場合には、採用後、当該事実が発覚すれば、内容虚偽の履歴書を提出していたとして、大きな影響が出てしまいかねません。

職場への影響

職場によっては、就業規則において、犯罪の重さにかかわらず、「犯罪行為をしたこと」が懲戒解雇事由になっている場合があります。
不起訴であれば、たとえ被疑者として捜査機関の取調べを受けたことが会社に知られても、裁判所による有罪の判断を受けていないという主張して、当該事由に当たらない旨争い得ますが、罰金刑を受けてしまうと、裁判所による有罪の判断を受けているということになりますので、ほぼ争いようがありません。

海外渡航の制限を受け得る

国によっては、ビザ申請や入国の際、出身国で刑事罰を受けたことがあるか等を確認し、これをビザ発給や入国許可の判断要素としてくるところがありますので、罰金刑を受けることで、海外へ気軽に行けなくなる可能性もあります。

資格制限がある

法律上、「罰金以上の刑に処せられた者」につき、「免許を与えないことがある。」とされている資格があります。医師(医師法第4条3号)、歯科医師(歯科医師法4条3号)、保健師、助産師、看護師、准看護師(保健師助産師看護師法9条1号)等です。

なお、罰金の刑の執行を受けてから、罰金以上の刑に処せられずに5年が経過したときには、刑の言渡しは効力を失う(「刑の消滅」といいます)とされておりますので(刑法第34条の2第1項)、時間の経過により、資格制限がなくなることはあります。

刑法第34条の2(刑の消滅)
禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

しかし、この規定によってもなお、罰金刑という刑事罰を受けたという事実がなくなるわけでなく、捜査機関には前科のデータが残りますし、海外渡航についても、当該国の規制の趣旨によっては、刑の消滅は関係なく、過去に一度でも刑事罰を受けたことがあるかを重要視して確認している場合がありますので、注意が必要です。

やはり、このような将来の生活への大きな影響を避けるためにも、刑事罰としては比較的軽い罰金刑であっても回避するのが望ましいといえるでしょう。
罰金刑が定められている犯罪の被疑者になってしまった場合には、早急に弁護士をつけて示談等の不起訴処分獲得のための対策をとることをお勧めします。

罰金の支払い方法と支払えない場合

罰金の支払い方法は、原則一括払いで、検察庁へ納付します。納付期限が納付通知書に記載されるので、その期限までに支払いを済ませる必要があります。期限内に支払いを済ませられない場合は、財産に対して強制執行が行われる可能性もあります。

罰金を支払えない場合は、刑法第18条の規定に従い、労役場に留置され、罰金額の完納まで働くことになります。
1日の留置あたり罰金いくら相当として換算されるかは、裁判の際に定められますが、現在、多くの裁判において1日の留置を罰金5,000円相当とすると定められています。
労役場留置の期間は、1日から2年の間で決定されます。留置されている間は家にも帰れませんので、普段仕事をされている人であれば、期間によっては、仕事に影響が出てしまいます。ですので、罰金を完納するための貯金等がない場合であっても、家族等周りに用立てしてもらうなどし、一括で支払うことをできるだけ検討した方が良いでしょう。

どうしても一括で支払えない場合には、ひとまず罰金納付の通知をした検察庁の徴収事務担当者に相談してみるのがよいでしょう。国としても、労役場留置では罰金額の回収はほとんどできないのが現実で、罰金の額そのものを支払ってもらった方が利益になるため、計画的な分割払いによる納付が期待できるのであれば、分割払いを認めてくれる可能性があります。

刑法第18条(労役場留置)
罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
2 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
5 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

罰金刑と科料・過料・反則金の違い

罰金刑のほかにも、同じようにお金を収める刑はいくつかあり、刑事罰行政罰に分けることができます。では、罰金刑とどのように違うのかについて解説します。

科料

科料については、前述したとおり、罰金刑と同じく刑事罰に当たります。
罰金刑とは金額が異なり、罰金刑が1万円以上の納付を要求する財産刑であるのに対し、科料は千円以上1万円未満の額の納付を要求する財産刑です。

過料

過料は行政罰です。中でも秩序罰に分類されます。行政上の軽微な違反について定められていることが多いです。
過料は、刑事罰と異なり、支払えなくても労役場に留置されることはありません。

反則金

反則金も行政罰です。交通反則通告制度に基づいて科せられるものです。
本来、道路交通法違反として刑事罰を受けるべき事件につき、交通違反者の増加に伴う検察庁や裁判所等の司法機関の業務の圧迫を緩和するため、軽微な交通違反については行政上の手続の中で違反者が反則金を納付すれば刑事事件化しないこととした経緯があります。
ですので、反則金を納付しない場合には、刑事事件に移行し、より重い罰金刑や懲役刑を受ける可能性が生じてきますので、注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。罰金刑も甘く見るのは禁物だということがお分かりいただけたかと思います。
罰金刑が定められている犯罪の被疑者となってしまった方は、後悔する前に弁護士にご相談ください。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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