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業務妨害とは – SNSでの誹謗中傷や迷惑電話などで逮捕されたら? 元検事率いる中村国際刑事の弁護士が解説

2020年10月、あるYouTuber(ユーチューバー)が、衣料品店で購入した商品が偽物であるなどと述べ店舗に対し返品を求める様子を動画で撮影し、威力業務妨害罪などの疑いで逮捕されました。

また、昨今のコロナ感染症をめぐる時勢の中、店舗や役所などにおいて「自分はコロナにかかっている」などと発言すれば、店舗や役所は消毒や換気の徹底といった感染防止措置を講じなければならず、店舗等の業務が妨害されることが明らかな事態となります。

これらの行為は、単なる迷惑行為に留まるだけでなく、刑法上の業務妨害罪に該当する明らかな犯罪なのです。以下、業務妨害罪について説明いたします。

業務妨害罪とは

業務妨害罪とは、虚偽の風説の流布や偽計、威力を用いて人の業務を妨害することをいいます。虚偽の風説の流布又は偽計を用いた業務妨害を偽計業務妨害、威力を用いた業務妨害を威力業務妨害といいます。

信用毀損及び業務妨害
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
威力業務妨害
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の違い

いずれも人や法人の社会的活動の自由を保護する目的にある点は共通ですが、その手段に違いがあります。

偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪における手段は「虚偽の風説の流布」又は「偽計を用い」ることです。

「虚偽の風説を流布」するとは、虚偽の事項を内容とする噂を、不特定または多数の者に知れ渡るようにすることをいいます。「虚偽」とは、客観的事実に反することをいい、その事実について争われている段階であっても虚偽となる可能性があると言われています。また、ある事実の全部について虚偽である必要はなく、一部の虚偽にとどまる場合も含まれます。

「風説」とは、噂だけでなく、行為者の判断や評価として一定の事項を流布させるものでも良いとされています。必ずしも悪事や醜行を含まなくてもよく、作り話であるか否かも問わないと考えられています。 「流布」とは、不特定又は多数の者へ広めることを指します。

必ずしも行為者から直接に不特定又は多数者へ伝える必要はなく、他人を通じて順次それが不特定又は多数者に伝播(でんぱ)されることを分かって行い、結果として広まればこれも該当します。また、直接、文章や口頭で伝達する他に、口伝えに噂として伝播することも含みます。

「偽計を用い」るとは、人を欺き・誘惑したり、または他人の無知、錯誤を利用すること、計略や策略を講じることなど、後述する威力以外の手段を用いることをいいます。人への働きかけが必ず必要というわけでなく、適正な判断または業務の円滑な実施を誤らせるに足りる程度の手段・方法であることを要するとされています。

偽計業務妨害罪の詳細はこちらの偽計業務妨害罪に関する記事もお読みください。

威力業務妨害罪

これに対し、威力業務妨害における「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力に対し、威力業務妨害における「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力をいい、暴行や脅迫を用いるだけでなく、社会的地位や経済情勢などを利用した威圧、団体の存在や力の誇示、物の損壊等、およそ人の意思を制圧するに足りるような勢力のすべてをいいます。

「威力」に該当するためには、様々な事情を勘案して客観的に人の自由意思を制圧するに足りるものであるかを判断し、現実に被害者が自由意思を制圧されたことは必要ではありません。

業務妨害罪の罰則

業務妨害罪の刑罰は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています。

信用毀損及び業務妨害
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
威力業務妨害
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

業務妨害罪の逮捕例や裁判例

業務妨害で逮捕された場合の事例を紹介します。

  • インターネット掲示板で施設に対し爆発予告をしたところ、威力業務妨害罪の疑いで逮捕された例
  • ドラッグストアのレジにて、従業員に暴言を吐いたり、コロナ感染症対策の飛沫(ひまつ)防止シートや陳列されていた商品を落とすなど業務を妨害したとして、威力業務妨害罪の疑いで逮捕された例
  • 警察署に対し、非通知設定にて、1日137回もの無言電話をかけて業務を妨害したとして、偽計業務妨害罪の疑いで逮捕された例
  • 市役所に対し、「危険物を持ち込んだ」などの電話をかけて業務を妨害したとして、偽計業務妨害罪の疑いで逮捕された例

業務妨害罪の裁判例を紹介します。

  • 市役所に爆発予告の電話をかけて業務を妨害したとの偽計業務妨害罪被告事件において、「ねたみに基づく犯行で酌量の余地はない」とされた一方、「市に対し謝罪文を送り反省している」等として懲役1年6ケ月・執行猶予3年の判決が言い渡された例
  • 離陸直前の飛行機の中で「自分はコロナに感染している」等の虚偽の発言をして離陸を遅らせるなどの業務を妨害したとの偽計業務妨害罪被告事件において、「新型コロナウイルスの脅威につけ込む卑劣な犯行」等として懲役1年・執行猶予3年の判決が言い渡された例
  • 家電量販店で「自分はコロナだ」等と店員に発言しその業務を妨害したとの偽計業務妨害罪被告事件において、懲役10月(執行猶予なし)の判決が言い渡された例

業務妨害罪で逮捕されたら

業務妨害罪で逮捕されると、その後最大20日間の勾留による長期の身柄拘束を受ける可能性があります。また、有罪の場合には、その後の刑罰として、罰金刑だけでなく、上述のような懲役刑まで規定されており、重大な罪のひとつなのです。

業務妨害罪での弁護活動

まずは被害者に対する謝罪示談を試みます。業務妨害の罪においては、早期に被害者に対し誠実に謝罪し示談をすることにより、早期の身柄解放や、不起訴処分の獲得、罰金刑や執行猶予の獲得による実刑の回避といった刑罰の減軽が期待できます。

次に、逮捕勾留されている場合には、早期に接見を行い、取調べに対するアドバイスや事件の経緯の聴取、家族との連絡役などを担うことができます。弁護士は家族などの一般面会と異なり、土日祝日や夜間でも接見が可能なため、迅速・機敏に対応することができるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。昨今のコロナウイルス感染症対策による自粛の情勢もあり、一人一人にのし掛かる様々なプレッシャーが増えている現状だからこそ、より他者を思いやり、「自分がされて嫌なことは他人にしない」という当たり前のルールを守っていくことが大切なのです。

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