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性依存症に起因する犯罪を弁護士が解説

夫や息子が何回も強制わいせつを繰り返してしまう」、「自分でもどうして盗撮を繰り返してしまうかわからない」、「過去に刑務所に服役していたのに痴漢をしてしまう」、こういった事例を耳にすることがあります。

このように「繰り返す性的逸脱行動の衝動を制御するのに失敗を繰り返しているにもかかわらず、それがやめられずに社会的損失や身体的損失、経済的損失を繰り返している状態が継続していること」を性依存症と呼ぶことがあります(斉藤章佳著『盗撮をやめられない男たち』〈扶桑社〉72頁参照)。

性依存症の場合には、身体的損失や経済的損失が生じる可能性があるにもかかわらず性的逸脱行動を繰り返してしまうため刑罰による制裁だけでは再犯に至ってしまう可能性があり適切な再犯防止策が必要となります。本コラムは弁護士・山口亮輔が執筆いたしました。

性依存症とは

人が何か耽溺するときは主に①物質、②行為、③関係に依存するとされています。

①物質依存の典型例は、薬物、アルコールです。何らかの精神作用物質を習慣的に体内に取り込むことで生じるものです。
②行為依存の典型例は、ギャンブル、買い物です。ある特定の行為自体に耽溺してしまうもので、必要のないモノであるにも関わらずモノを盗むまでのリスクやスリルのために万引きに及んでしまうクレプトマニアもこれにあたるとされます。
③関係依存の典型例は、親子間、恋愛の共依存と呼ばれるものです。親子間の共依存から児童虐待に至るケースもあります。

性依存症は、主として②行為依存に分類されるものといえるでしょう。
もっとも、今日においてはいまだ「性依存症」という病名は精神科診断で用いられている国際的診断基準DSM-5やICD-11において病気として公認されていません。
しかしながら、これらの診断基準は医学の進歩とともに集積されてきたものであり、将来的に診断基準として分類される可能性があります。また、医学的に認められていないからといって医療による支援が否定されるべきものではありません。

犯罪白書にも「痴漢行為により懲役刑の実刑に処せられた者の大多数は、それまでに痴漢行為で複数回の罰金、執行猶予の処分を受けているにもかかわらず痴漢行為を繰り返している。また、痴漢型は、他の性犯罪者類型と比べて、再犯率が高く、短期間のうちに再犯に及ぶ傾向にある。痴漢事犯者の再犯防止のためには、痴漢行為が常習化する前のより早い段階において、痴漢行為に及ぶ問題性に働きかけることが重要である」との指摘があります(平成27年度版犯罪白書44頁)。

性依存症によってどのような犯罪が引き起こされるか

性依存症は合法的なものと非合法的なものがあり、風俗通い、不倫・浮気、インターネットポルノ依存などが合法的な性依存症として挙げられます。
経済的損失が生じるにもかかわらず、芸能人が複数回の不倫により謝罪会見をすることも記憶に新しいでしょう。

一方で、強制わいせつや迷惑防止条例違反などの犯罪にあたるものとしては、痴漢、小児性愛障害(ペドフィリア)、盗撮・のぞき、露出、ストーキング、下着窃盗があります。
このような非合法的な性依存症事案の特徴として、「盗撮行為をする人は、盗撮行為を繰り返す」「痴漢行為をする人は、痴漢行為を繰り返す」「露出行為をする人は、露出行為を繰り返す」といったように、特定の行為のみを繰り返し、他の行為には及ばないことが挙げられます。

  • 痴漢行為・・・痴漢の態様により強制わいせつ又は都道府県の迷惑防止条例違反が成立します。
  • 盗撮行為・・・都道府県の迷惑防止条例違反が成立しますが、被害者の属性によっては児童ポルノ製造が成立することもあります。
  • 露出行為・・・公然わいせつが成立します。
  • 小児性愛障害・・・行為の態様により、児童買春、児童ポルノ、青少年保護育成条例違反、監護者わいせつ・性交、未成年者誘拐・略取が成立する可能性があります。

性犯罪の再犯防止策について

「何度も痴漢を繰り返してしまう」といったように、問題行動を繰り返してしまう場合には性依存症が疑われます。また、性依存症の場合には、問題行動を継続するために「盗撮は被害者にバレなければ迷惑をかけていないから大丈夫だ」「痴漢に遭っても被害者は声を上げていないから内心では喜んでいる」「スカート丈が短いのは下着を見せたいと思っているからだ」など、本人にとって都合の良いように価値観を持っていることがあります(「認知の歪み」ということがあります)。

性依存症の克服には、このように自分の頭の中で認識している価値観の歪みを修正する必要があります。
性依存症を専門に取り扱っているクリニックもあり、同じ悩みを抱える者同士が集まって話し合う集団精神療法、集団認知行動療法のほか、男性ホルモン抑制の薬物療法もあります。

まとめ

性依存症の事件の場合、必ずしも刑罰が再犯防止として機能していないことがあります。
しかしながら性依存症は身体的損失・経済的損失を受けているにもかかわらず、問題行動を繰り返してしまうという点で特定の行為に依存しているものであり、本人の意思の弱さだけが原因となっているものではありません。また、性依存症による事件であってもそこには性犯罪の被害者がいるということを忘れてはなりません。被害者は、何の落ち度もなく事件に巻き込まれるのであり、その苦痛は想像に難くありません。

当事務所では性依存症が疑われる事件においても、医療機関との連携を進めて再犯防止に取り組んできた実績があります。「これまで一人で悩んできたけどもう二度と繰り返したくない」という方は是非とも当事務所にご連絡ください。

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