ある日警察から呼び出しがあり、刑事事件の被疑者となってしまったら、まずは弁護士に相談する、というのが一般的ですが、「弁護」と言われても具体的に何をしてもらえるのかがよくわからない、という方も多いかと思います。
あるいは、弁護士に依頼するとかえって相手を硬化させ、逆効果にならないかという不安を抱く方も多いかもしれません。
また、せっかく弁護士に相談しても、経験の浅い、もしくは民事しか扱わない弁護士に、「逮捕されてからなら動きますが、今弁護士にできることは何もない」と言われた経験ある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、弁護士を依頼すれば、自分一人ではとても対応できないことがたくさんできます。依頼するのであれば、できる限り早く依頼することを推奨します。
今回は、刑事事件で早期に弁護士を立てるメリットについて代表弁護士・中村勉が解説していきます。
精神的なサポートとアドバイス
警察から呼び出しがあった場合、冷静に物事を考えるのは難しいことです。警察からの呼び出しが初めてであればなおさら、不安でいっぱいになることが普通です。
どのようなことを聞かれるのか、どのように答えればいいのか、逮捕されてしまわないか、家宅捜索に来られるのか、家族に知られるのか、職場に知られるのか、報道されないか…など、悩みはいつも絶えなくて考えればきりがありません。家族や友達にも簡単に相談できることではありませんし、できたとしても専門家のアドバイスでなければやはり不安の解消にも限界があります。もちろん、どれくらい不安になるかには個人差がありますが、一人で抱え込んでしまうととても精神的に耐えられないという方もいらっしゃると思います。
弁護士に依頼すれば、こういった不安や悩みが生じた時、その都度、どんなことでも相談することができます。特に、弁護士には守秘義務がありますから、家族や友人には相談できないことでも安心して相談することができます。
ただし、残念ながら、どの程度親身になってくれるかも弁護士によって個人差があります。自分の不安や悩みを話しても親身になって聞いてくれる弁護士に依頼しましょう。
勾留回避と起訴後の身柄解放
元々在宅事件であっても、事案によっては途中で逮捕・勾留される可能性は否定できません。弁護士を依頼すれば、途中で逮捕・勾留されることを未然に防ぐため、意見書を作成したり、早めに示談交渉したりすることができます。
逮捕されてからの依頼の場合、勾留決定までは数日かかります。この数日のうちに弁護士を立てれば、勾留決定を回避するための意見書を作成し、検察官や裁判官に提出することで、10日間の勾留決定を回避できる可能性があります。逆に、弁護士を立てなければ、逮捕後そのまま勾留される可能性が非常に高いです。
勾留決定後の依頼であっても、勾留決定に対して不服申立て(準抗告、勾留決定請求)をすることにより、早急に釈放できる可能性があります。起訴後の依頼の場合は、保釈請求により、釈放することが一般的です。このように、どのタイミングの依頼かによって、手段は異なりますが、弁護士を立てれば釈放に向けての活動することができます。
示談交渉
特定個人の被害者がいる事件の場合、何よりも起訴前に示談を成立させることが重要です。起訴後に示談しても、一度裁判になってしまえば、執行猶予の可能性は上がるものの、起訴が取り下げられることにはなりません。早期の対応が不可欠です。
しかし、自分で示談交渉することには様々な困難が伴います。それは、逮捕・勾留されておらず、自分で動くことができる在宅事件の場合でも同様です。
被害者の連絡先がわからない場合、警察官や検察官を通じて聞くことになりますが、教えてもらえることはあまり期待できません。特に性犯罪の場合はほとんど期待できません。被害者の同意なく勝手に連絡先を教えることはできませんし、被害者も加害者本人に連絡先を教えてよいと 同意することは考えられません。
仮に被害者の連絡先を元々知っていたとしても、被害者は警察に被害申告している時点で被害感情は強く、加害者本人と冷静な話し合いができる状態であることは期待できません。仮に話し合い自体はできたとしても、示談を円満に成立させることには難しく、しかも、一回交渉が決裂してしまうと再度話し合いをすることは仮にそこから弁護士を付けたとしても難しくなるでしょう。
したがって、特定個人の被害者のいる犯罪で検挙された場合、示談成立のためには、自分でやみくもに行動するのではなく、早期の段階で弁護士に相談することが重要です。もし自分は犯罪行為などしていないから示談交渉は必要ないと思われる場合も、それを信用してもらうためには法的アドバイスが不可欠ですので、同様に早期の段階で弁護士に相談することが非常に重要です。
事件の早期解決・前科回避
弁護士を立てず一人で取調べに対応する場合、捜査の進捗状況がどうなっているのか、いつ終わるかを知ることが難しいです。
しかし、弁護士であれば、警察官や検察官に捜査の進捗状況を確認し、今どういう状況にあるのか把握して、あとどれくらいでどういった段階に進むのか見通しを付けることができます。また、弁護士であれば、ただ進捗状況を確認するだけでなく、場合によっては、必要な資料を提供する、意見書を提出するなどして、なるべく早く捜査が終わるように働きかけることもできます。
早く示談締結することも事件の早期解決に有用です。示談交渉を考えていることを伝えている場合、捜査機関はその行く末を見届けてから送検や最終的な処分を決めますので、逆に言えば、示談交渉が遅くなると事件解決も遅れる可能性が高くなります。もちろん、事件の内容によっては、すぐに示談交渉に着手するよりも送検を待ってからの方がよい場合もありますが、そうだとしても適切なタイミングで速やかに示談交渉に着手することが事件の早期解決につながります。
特定個人の被害者がいる犯罪の場合、示談が成立すれば不起訴となり、前科を回避できることも多いです。ここで、特定個人の被害者がいる事件の例をいくつか見てみましょう。2020年の統計によれば、傷害罪の起訴率は31.4%、強制わいせつの起訴率は33.9%、強制性交等の起訴率は37.0%となっており、3人に1人程度しか起訴されていないことがわかります。
もちろん、この不起訴の中には、嫌疑不十分による不起訴も含まれるため、全てが示談締結によって不起訴になった事案ではありません。
しかし、2020年の同じ統計で、今度は特定個人の被害者がおらず、示談ができない犯罪を見ると、例えば賭博・富くじの起訴率は68.8%、わいせつ・わいせつ文書頒布等の起訴率は60.4%と高くなっていることがわかります。やはり、特定個人の被害者がいる犯罪の方が、不起訴、ひいては前科回避を狙える可能性が高いでしょう。
刑事事件で弁護士への依頼をお考えの方
いかがでしたでしょうか。確かに、刑事事件の被疑者となったとしても、弁護士が絶対に必要というわけではなく、最後までご自身で対応されている方もいます。
しかし、個人でできることには限界があり、弁護士に依頼すればできることが広がります。弁護士を依頼するかどうか迷っている方は、ともかく早い段階で一度相談してから決めた方がよいでしょう。
今回ご紹介した身柄開放活動や示談交渉は重要な弁護活動ですが、最初にご紹介した精神的なサポートも非常に重要です。いくつか弁護士事務所を回って比較検討されている方は、弁護士費用ももちろん大事ですが、何よりも親身になってくれる弁護士に依頼した方がよいでしょう。
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