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器物損壊罪の慰謝料 – 逮捕される場合や慰謝料について弁護士が解説

器物損壊罪とは他人の物を損壊し、又は傷害した場合に成立する犯罪です。刑法261条は「前三条(258条~260条)に規定するもののほか」と規定していることから、「器物」とは文書・電磁的記録(データ)や建造物等を除く有体物一般のことを指します。ここで注意が必要なことは、ペットも刑法上は物として扱われることです。したがって、ペットに対する加害行為も、他人の物(ペット)を…傷害したとして器物損壊罪が成立する可能性があります。では、器物損壊罪での慰謝料について解説します。

器物損壊罪で逮捕される場合とは

器物損壊罪にあたる行為を行ったからといって必ず逮捕されるとは限らず、事案が軽微な場合には在宅捜査となる可能性があります。これは、逮捕自体は刑罰ではないこと、身体拘束が本人の社会生活上重大な不利益を伴うことになるため、逮捕を行うには慎重な考慮が必要とされるためです。例えば被害が極めて軽微である場合、被害届が提出されていない場合、民事的な賠償が既に終わっている場合等がこれにあたります。

また、刑法264条は「第二百六十一条(器物損壊罪)…の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と規定していることから、器物損壊罪は親告罪であると言えます。告訴はあくまでも起訴のための条件で、逮捕のための条件ではありませんが、告訴が存在しない段階では、逮捕自体されないこともあります。このような場合には、警察は任意同行を求めて事情聴取を行いますが、場合によっては事件を検察庁には送致しない処分(微罪処分)を行い、即日釈放となる可能性があります。

慰謝料とは

「物」に対する慰謝料は原則として認められない

慰謝料とは、被害者の精神的苦痛に対する損害賠償のことを指し、民法では710条が根拠規定となります。例えば、交通事故における人身事故の場合、被害者が負傷した場合には、治療費等の実費に加えて、その精神的苦痛に対する損害として慰謝料が認められます。もっとも、慰謝料とは精神的苦痛に対する損害であるため、物に対する慰謝料は通常認められません。

これは、物に対する思い入れの範囲及びその程度は人それぞれであり、客観的に判断し難く、その精神的苦痛の度合いは被害者の言い分に依拠せざるを得ないために、加害者側の地位を過度に不安定にするためです。

慰謝料が認められる例外とは

上述の通り、ペットは法律上「物」として扱われます。もっとも、ペットに対する加害行為には慰謝料が認められる場合があります。参考として名古屋高判平成20年9月30日交民41・5・1186では以下のように判断して、慰謝料20万円を認めました。

このように、物に対する損害であっても、精神的苦痛が主観的な感情にとどまらず、客観的に認められるようなものについては、慰謝料が認められる余地があると言えるでしょう。

器物損壊罪における慰謝料とは

示談は任意の手続きであり、その内容はケースバイケース

刑事裁判とは、国家が犯罪者に刑罰を与える手続きであり、被害者に対して損害を賠償する手続きでありません。一方で示談交渉は、被害者の方が告訴や被害届を取り下げる代わりに、加害者が金銭の支払いを約束する等の行為を求める任意の手続きです。もっとも、示談金には損害に対する民事的責任という意味合いも含まれるため、民事的請求の金額が参考になります。

そのように考えれば、器物損壊罪は他人の物に対する加害行為であるため、慰謝料は認められないことになりそうです。しかし、あくまで任意の手続きである以上、どのような場合にいくらの金銭を支払うかは厳密に決められておらず、当事者の交渉次第ということになります。示談交渉では被害者の方に被害届や告訴を取り下げてもらうため、裁判上認容される金額以上の損害賠償金を提示することもあります。

どのような物に慰謝料を認められるか

物に対する思い入れは人それぞれであり、またその程度はその人の主観的感情に委ねざるを得ません。しかし、上記名古屋高裁のように、精神的感情が「主観的な感情にとどまらず、社会通念上、合理的な一般人の被る精神的な損害であるということができ、また、このような場合には、財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛があるものと見るべきである」場合には慰謝料に相当する金額を支払う必要があるでしょう。

そのような場合として通常考えられるものとしては、ペットや結婚指輪、ネガの消失した記念写真等、やはり一点ものとして、この世に他に存在しないものがあげられます。以上は、あくまでも慰謝料についてであり、示談交渉には物自体に対する損害の賠償も必要になりますのでご注意ください。

器物損壊罪における慰謝料と弁護活動とは

物損壊罪は、他人のモノを損壊する類型の犯罪であること、親告罪であることから、検察官や裁判官は被害者の処罰感情や損害の回復の有無というものを重視します。被害者の方との間で、告訴取消しを内容とする示談が成立していれば不起訴になりますし、仮に被害者に告訴取消しをしてもらえなくても、相当の被害弁償を行っていれば、不起訴になる可能性もあります。したがって、器物損壊罪における弁護活動としては示談交渉を成立させることが重要となるでしょう。

ただし、繰り返しとなりますが、物に対する思い入れは人それぞれであり、また示談交渉において加害者はどうしても不利な立場に立たされます。そのため、ときに慰謝料として非常に高額の金額の支払いを請求される可能性があります。そこで、事案を客観的に判断し、うまい落としどころを見つけるためには、専門的知見を有する弁護人の介入が有効な手段となります。また、交渉は書面に残すため、その書類の作成、文言の選定には特に気をつける必要があります。このような場合、紛争を後に残さないためにも、経験豊富な弁護士への依頼を検討されることをお薦めします。

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