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司法面接の役割を弁護士が解説

司法面接」とは何かご存知でしょうか。”Forensic interviewing”という英語が翻訳されたもので、「協同面接」や「被害確認面接」という別名で呼ばれることもあります。
私が検察官の頃は、その仕事というのは、制度の枠組みに縛られたハードなものばかりでしたが、被害者支援の重要性が認識され始めた頃から、検察官もソフトな活動領域が増えてきました。司法面接がその一つです。

“Forensic”(司法の)という修飾が印象的ですが、司法のなかでも特に「児童虐待」に関する文脈において、この「司法面接」は登場します。その趣旨を端的に示すものとしては、「被害確認面接」という別名が適当でしょう。
つまるところ、虐待を受けた子ども本人からその被害について聴き取ることを目的とする面接が、「司法面接」です。
司法面接は子どもを相手に行われるものであるため、相応の専門性に依拠しつつ、関係機関(警察・検察・児童相談所等)の綿密な連携によって実現される高度な面接です。

もっとも、関係者がその専門性に精通するだけでは十分ではなく、社会一般において司法面接に関する理解が浸透していることも、本来の趣旨の実践にあたり重要になります。このページをご覧になり、司法面接への理解を深めていただければ幸いです。

以下、司法面接のあらましやその役割について、代表弁護士・中村勉が解説いたします。

司法面接のあらまし

「司法面接」は、一般的に虐待被害を受けた子ども本人から、その虐待の事実について聴き取ることを目的とするものです。日本では様々な別名を持ち、厚生労働省では「協同面接」、警察においては「被害児童からの客観的聴取技法」あるいは「代表者聴取」、そして児童相談所では「被害確認面接」、「事実確認面接」と呼ばれています。

その理論は児童虐待(特に性的虐待)の事実認定をいかに正確に行うか、という議論が起源となっていますが、現在では対象者は子どもに限らず、意思疎通に関する障がいを抱えた方や、外国籍の方となることも想定されています。
いわば、自己の意思表示に困難を抱え、社会的に弱い立場に置かれやすい人に対して特別な配慮を講じて臨む面接であると言えます。

司法面接の意義

司法面接には二つの大きな目標があります。すなわち、①子どもから法的な判断に資する正確な情報を聴き取ること、②面接を受ける子どもの負担を最小限に抑えることです。
子どもは大人と比して心身ともに未成熟であり、面接という特殊な場面においては肉体的にも心理的にも負担が生じやすいほか、暗示・誘導に対して脆弱であることが懸念されます。そのような子どもたちから正確に事実の聴取りを遂行するには、その特性に対応した高度なスキルが求められます。

実際に、かつて欧米では子どもに対して不適切な方法で事実確認が行われたこと(事実誤認)を原因とする誤った司法的措置(冤罪の発生)が相次いだことがあり、それに対する戒めとして、子どもから司法面接の理論が発展した経緯があります。

また、虐待が真実であった場合には、被害を受けた子どもがいかに深い傷を負うか、ということは想像に難くないでしょう。ただでさえ心身ともに発達途上で敏感であるところへ、最も信頼できる存在であるべき親等から危害を加えられるということは、必然的にトラウマ的受傷、いわゆるPTSDのおそれが高まります。そのようなリスクがあるなかで、虐待の事実確認を行うということは、子どもにトラウマの記憶を思い起こさせ、苦痛を与えることになりかねません。したがって、いくら虐待の事実確認といえども、みだりに聴取を行うことは許されず、必要最小限にとどめられるべきことになります。

司法面接の理論が確立される以前は、虐待の被害を受けた子どもは、まず児童相談所で被害確認面接を受け、次に警察でも被害者として聴取を受け、さらに検察でも重ねて被害について供述を求められる、という状況にありました。司法面接は、関係機関が連携・協同し、各々の聴取を共通した1回の面接の機会に一括して実施することを主旨としており、聴取を受ける子どもの負担を極力小さくしようとする取り組みであると言えます。

日本における司法面接の浸透

日本においては2000年代以降より欧米の理論が紹介されるようになり、児童虐待に対処する関係機関、すなわち虐待通告を受ける児童相談所、虐待者を取り締まる警察・検察での取組みの例がかなり増えてきました。

特に2015年には厚生労働省(児童相談所を所管)、警察庁(警察署を所管)、最高検察庁(検察庁を所管)が各々呼応しつつ通達を出すに至り、全国的に司法面接の実践が後押しされることとなりました。一部の報告によれば、2016年から2017年の間だけでも340件(2016年度)から617件(2017年度)と、実施件数が2倍近くなっているとのことです。

司法面接の実際

さて、司法面接は実際にどのように行われるのでしょうか。
司法面接の実施方法の大きな特徴としては、①代表者聴取、②自由報告、という点が挙げられます。

①は訓練を受けた代表者が唯一の面接者となることを意味しますが、「協同面接」とも呼ばれる以上、本当に単独で面接で臨むわけではありません。代表者以外の関係者は、「バックスタッフ」として、面接室の様子をモニター越しにリアルタイムで観察できる別室に配置され、代表者と随時連絡を取り合いながら、面接の進行をサポートします。

次に②は、誘導や暗示を禁忌とすることはもちろん、原則としてオープンクエスチョンを用い、あくまでも子どもの自由な供述を追求するというものです。
また、単刀直入に核心に触れてようとするのではなく、最初は世間話をするなどして子どもと一定の信頼関係(ラポール)を築き、それから最近の出来事を思い出す練習をし、その上で事件の話をしていくというように、きちんとステップを踏んで面接を進行させていく、という点も重要です。

上記をみると、司法面接が、大人が一般的に経験するいわゆる面接とはかなり雰囲気が異なることがわかります。当然、面接が行われる場所も被面接者である子どもがリラックスできるような環境となるよう意図されます。

まとめ

以上のように「司法面接」は、司法、福祉等の関係機関が連携して、虐待等の被害を受けた子ども(あるいは社会的に弱い立場に置かれやすい方等)の負担を最小限にしつつ、真相究明を目指すという意義深い取り組みであると言えます。

なお、福祉を担う児童相談所が虐待のケアを目的とした事実の聴き取りを目指す一方で、司法機関である警察・検察は加害者を処罰することを念頭に置いた聴取を志向する、というような組織同士の本質的な相違ゆえに、各々のニーズを充たす司法面接を実施していくことは決して容易ではなく、都度現場での試行錯誤が続いているのも現状です。
また、今のところ司法と福祉の二者による連携が主たるものとなっている司法面接ですが、医療とも積極的に連携が図られていくべきことも今後の課題として指摘されており、今後の改善が期待されるところです。
くわえて、司法面接に直に携わることがない大人たちも、その存在と意義を知り、特に子ども虐待の心当たりが生じた際には、その場にいる大人が無暗に確認しようとするよりも、専門機関における「司法面接」によって対処することが適当である、ということを心得ておくべきでしょう。

「司法面接」についてより詳しく知りたい方は、こちらのサイトをご覧ください。

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