もし、医療関係者のご家族が逮捕されてしまった、医師免許を持つご自身が犯罪行為をしてしまったという場合は、早期に弁護士へ相談しましょう。
医師はその社会的地位から、逮捕報道等があると世間からも注目されやすいです。
逮捕報道があった医師はその後どうなっているのでしょうか。また、医師免許は犯罪によってはく奪されるのでしょうか。
本記事では、医師が逮捕された場合の流れ、リスク、関与しやすい犯罪等を弁護士が説明します。
逮捕された時の流れ
医師などの医療従事者であっても逮捕された場合の流れは変わりません。
逮捕による身柄拘束は最長72時間と決まっています。
それ以上身柄拘束を継続する場合には勾留手続が必要です。警察で最長48時間留置(身柄を留置所で拘束)され、取調べが行われます。
その後、検察官に身柄と書類が送られ、身柄受領から24時間以内(ただし、逮捕から72時間以内)に、検察官が裁判官に勾留請求をします。
勾留請求が認められてしまうと、原則として10日間、勾留延長請求が認められれば、さらに10日間と合計20日間もの期間身柄拘束されることになります。
逮捕の日から合わせて最大23日間は家に帰ることもできず、職場に出勤することはできなくなります。
そのため弁護士の力により事案によっては長期の身柄拘束を回避し、勾留されずに釈放を実現することが可能となるのです。これは弁護士以外にはできません。
医師とはいえ、関与したとされる犯罪の重大性によっては、勾留は回避できず、また、起訴されてしまうこともあります。
勾留された状態で起訴された場合には、保釈請求をすることとなります。
医師の場合、保釈が許可された際の保釈保証金はその年収等に照らし高額な金額が設定される可能性があります。
医師が逮捕された場合のリスク
1. 実名報道のリスク
医師であっても、逮捕されずに在宅事件となった場合には実名報道されることはほとんどありませんが、逮捕された場合には、その社会的地位に照らし、実名報道される可能性が高いといわざるを得ません。
実名報道されてしまった場合、たとえその後勾留されずに釈放されたり、事件が不起訴になったとしても、仕事や社会生活への影響を避けることは難しいでしょう。
したがって、実名報道を避けるためには、逮捕自体を避ける必要がありますので、医師が何かしら犯罪に関わってしまった場合には逮捕される前に早めに弁護士に相談・依頼することが重要です。
2. 行政処分のリスク(医師免許関係)
逮捕されただけでは有罪とはなりませんので、直ちに医師免許をはく奪されることにはなりません。もっとも、起訴され、罰金以上の刑に処された場合には、法務省から厚生労働省に情報提供がされて医道審議会により審議され、その犯罪の重大性や悪質性等に照らし、戒告、3年以内の医業停止処分または免許の取消しがされる可能性があります。
「起訴」には略式起訴も含まれますので、例えば痴漢や盗撮等の比較的軽微な事案において略式罰金を受けた場合にも、医業停止処分等を受けるリスクがあります。
医師免許の取消しとなるケースは、重い犯罪で有罪判決を受けた場合が多く、過去には自身が務める医療機関に放火したとして非現住建造物等放火罪で有罪が確定した件や、患者に対する強制わいせつ罪につき有罪が確定した件で医師免許の取消し処分がなされた例があります。
不起訴処分となった場合には、基本的にこれらの行政処分の対象となることはありませんが、別途医道審議会において、「医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者」「医師としての品位を損するような行為をした者」と認定された場合には、行政処分の対象となることがあります。
医師が関与しやすい犯罪とは
医師が関与しやすい犯罪としては、診療報酬を不正請求するといった詐欺罪(刑法第246条)や、診察をせずに処方箋や診断書を作成して交付したりする医師法違反があります。
また、後述しますが、医療過誤のケースにおいては、業務上過失致死傷罪(刑法第211条)に問われる可能性があります。
さらに、医師だから関与しやすい、というわけではありませんが、痴漢や盗撮、強制わいせつ、強制性交等などの性犯罪の被疑者となってしまう医師も少なくなりません。診察の際に医師としての立場を利用してこのような性犯罪を行った場合には特に悪質といえ、処分も重くなる可能性があります。
他にも、過失運転致死傷(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)等の交通事犯は、医師でも関与しやすい犯罪といえます。
医療事故が発生してしまったら
医療事故が発生してしまった場合、医療過誤として民事的請求を受けたり、業務上過失致死傷罪に問われたりする可能性があります。
ただし、その事象自体が医療という専門分野におけるものであるだけに、医療従事者に過失が認められるかどうかの判断は法的にも極めて難しいものとなります。
判断が難しいものであるからこそ、仮にそのような民事的請求を受けたり、業務上過失致死傷罪に問われたりした場合には、争う余地が十分にあるケースも考えられますので、弁護士にお早めにご相談ください。
なお、医療事故が死亡事故の場合には医療事故調査制度の適用がある可能性があります。
医療事故調査制度についてはこちらの記事をご覧ください。
医師が逮捕されたら弁護士へ相談を
医師が逮捕された場合には、医師としての今後のキャリアにも大きく支障が生じる可能性がありますので、ご家族の方は直ちに弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。まず、逮捕されたばかりの場合には、勾留を回避できる可能性がありますので、迅速に弁護士に相談・依頼することで、身柄解放活動に着手してもらうことができます。
週末等逮捕されたタイミングによっては、勾留を回避することで次の出勤日に通常通り出勤でき、逮捕されたことを職場に知られることを避けられる可能性があります。
そのため迅速に対応することがなによりも重要です。
また、特に被害者がいるケースの場合には、検察官による処分との関係で被害者との示談が重要になってきます。処分を決めるのはあくまでも検察官ですが、検察官は処分にあたり被害者の処罰感情を重視するからです。仮に勾留回避ができなかったとしても、被害者との間で早期に示談が成立することで、勾留期間の満了を待たずに早期に釈放される可能性もあります。したがって、被害者がいるケースの場合には、示談の経験が豊富な弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
上述のとおり、医師が逮捕された場合には実名報道される可能性が高いといわざるを得ませんが、仮に逮捕直後の時点において実名報道されなかったとしても、検察官によって起訴された場合に、実名報道される可能性があります。
これを回避するためには、事件を不起訴で終結することが重要になってきますので、やはり流れに身を任せるのではなく、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼するのがよいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。医師が逮捕された場合には、今後のキャリアにも大きく影響を与える可能性があるため、迅速かつ慎重に対処する必要があることがお分かりいただけたと思います。
逮捕された場合に限らず、在宅事件であっても罰金以上の刑を受けてしまった場合には免許取消しや医業停止等の行政処分がされる可能性が高いですので、刑事事件の経験が豊富な弁護士にお早めにご相談・ご依頼ください。
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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
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上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。