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出頭命令(出頭要請)を弁護士が解説

ある日突然、警察や検察官から「この日の何時に出頭をお願いします」という連絡が来たらどうすれば良いでしょうか。今後どうなってしまうのか、出頭したらそのまま逮捕されてしまうのか等、連絡を受けた側は非常に不安になることだと思われます。

当事務所のご相談でも「この件で警察から連絡があったが、どうすれば良いか」「この日時にはすでに予定が入っているが、日程変更をお願いすることはできないのか」「家族が出頭後、逮捕された」「当日の取調べはどのように対応すれば良いのか」等多くあり、これまで数々のご相談やご依頼の解決に努めてまいりました。

今回の記事では、どのような場合に逮捕される可能性が高いのか、出頭するよう連絡があったがそれを無視した場合どうなるのか等、弁護士・中村勉が解説します。出頭後の対処法や、もし出頭を指示された日に行けない場合の対応についても記しているので、ご参考になさってください。

出頭命令とは

まず、出頭命令とは、法律上は、裁判所が被告人を指定の場所まで呼び出すために出す命令のことです(刑事訴訟法第68条)。

刑事訴訟法第68条
裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭又は同行を命ずることができる。被告人が正当な理由がなくこれに応じないときは、その場所に勾引することができる。この場合には、第五十九条の期間は、被告人をその場所に引致した時からこれを起算する。

出頭命令に応じなかった場合、強制的に連行される可能性もあります(この強制的な裁判所への連行を「勾引」といいます)。
なお、後述する出頭要請のことを一般的には「出頭命令」ということもあります。以下で「出頭命令」という場合には、出頭要請の意味で用います。

出頭要請とは

一方で、出頭要請とは警察や検察などの捜査機関からの呼出しのことです。これは刑事訴訟法第198条1項や刑事訴訟法第223条1項に基づくものです。これに応じるかどうかはあくまでも任意です。

出頭命令(出頭要請)に応じた場合、逮捕されるのか

まず結論から言うと、出頭命令に応じた場合に、その日に逮捕されることもありますが、逮捕されないことの方がどちらかというと多いです。
警察が被疑者を逮捕するためには、基本的に裁判官が発付する逮捕状が必要です。逮捕状が発付されるためには、被疑者が①罪を犯したと考えられる相当な根拠があること、②身柄を拘束しないと逃走・証拠隠滅のおそれがあることの2つの条件が求められます。

出頭日にすでに逮捕状が発付されている場合には、その日に逮捕される可能性がそれなりに高いですが、多くの場合、呼出しを行う捜査機関において逮捕することまでは考えておらず、出頭日の取調べでの聴取内容により逮捕の必要性があると判断された場合に限り、その後逮捕状の請求が行われることになるものと思われます。むしろ出頭命令に応じなかった場合には、その非協力的な態度自体によって逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあるものと判断され、逮捕される可能性が高くなってしまいます

出頭命令(出頭要請)がなされるのはどのようなときか

主に①被疑者として呼ばれる場合、②参考人として呼ばれる場合のいずれかです。

①被疑者として呼ばれる場合

被疑者として出頭命令がなされるのは、今後の処分を見据えた犯罪の捜査のためです。
被疑者の出頭命令については、刑事訴訟法第198条1項に根拠規定があります。

刑事訴訟法第198条1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

②参考人として呼ばれる場合

被疑者とは見ていないものの、犯罪の捜査のために話を聞くことが必要と捜査機関が考えている人については、参考人として呼ばれます(刑訴法第223条1項)。例えば、事件の関係者や目撃者などです。こちらの呼出しを拒否したとしても逮捕されることや罰則はありませんが、可能な限り応じるべきでしょう。

なお、被疑者との共犯関係が疑われる人もまずは参考人として呼ばれる可能性があります。この場合、嫌疑が濃くなった場合には、参考人の立場から被疑者の立場に変わる可能性があります。

刑事訴訟法第223条
1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。

なお、元々在宅事件として想定される事案で、また軽微な事案の場合、出頭して取調べに素直に応じれば逮捕される可能性は低くなるでしょう。

出頭命令(出頭要請)に応じられない場合どうするべきか

出頭命令に応じるか否かは任意であり、必ず応じなければならないということはありません。応じなかった場合に必ず逮捕されるというわけでもありません。
しかし、特に被疑者として出頭命令を受けている場合には、正当な理由なく出頭命令を拒否すると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるものと判断されて、逮捕される可能性が高まります。

容疑に心当たりがあるか否かにかかわらず、基本的に出頭命令には応じるべきです。
なお、出頭した上で、取調べでの質問に素直に答えるか、すなわち、供述をするかどうかは別問題であり、別途検討が必要です。

出頭命令(出頭要請)により捜査機関に出頭する場合の注意点

出頭命令に応じて出頭する際の注意点を説明いたします。

可能な限り事前に弁護士に相談しておく

出頭すると、取調べが行われます。ご自身が被害者や目撃者である等、明らかに参考人である立場であればそこまで心配する必要はありませんが、被疑者として取調べを受ける場合には、取調べでの受け答えの仕方が今後の逮捕可能性や処分の見通しに影響してきます。ですので、可能な限り事前に弁護士に相談してアドバイスをもらっておきましょう。

この段階から、弁護士に依頼し、弁護人としてついてもらっておくことも有用です。特に、万が一逮捕された場合のことを考えても、事前に家族に打ち明ける等はしたくないというご事情があるときには、弁護士に依頼しておくことで、もしもの時にはすぐ接見に来てもらえますし、必要に応じて家族等への連絡もしてもらえるでしょう。

供述調書の内容を入念に確認する

取調べが行われた際には、通常、その取調べでの供述内容をまとめた供述調書というものが取調官によって作成され、取調べの最後に、その調書へ署名押印を求められます。ひとたび署名押印すると、その調書に記載された内容がすべて正しいことを認めることになりますし、あとでその内容を変更することはできません。そして、これは、その後の刑事手続での資料となり、裁判では立派な証拠となります。誤った内容の供述調書に署名押印してしまった場合、かえって不利な状況になってしまう可能性もあります。

したがって、署名押印をする前に、実際の供述内容や、事実と異なることが書かれていないか、入念に確認するようにしましょう。少しのニュアンスや言い回しの違いでも妥協は禁物です。少しでも違うと思ったら、迷わずに訂正を求めましょう。訂正を求める権利は、増減変更申立権とも呼ばれ、刑事訴訟法第198条4項に明文で規定されています。

取調官が訂正に応じなかった場合には、供述調書に無理して署名押印する必要はありませんし、署名押印すべきでもありません。署名押印拒絶権も刑事訴訟法第198条5項に明文で規定されています。

刑事訴訟法第198条4項
前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
刑事訴訟法198条5項
被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

黙秘権(供述拒否権、供述自由権)の行使について

黙秘権(取調官によっては「供述拒否権」「供述自由権」と呼ぶ人もいます。)とは、自己の意思に反して供述することを拒むことができる権利です。憲法第38条1項や刑事訴訟法第198条2項に規定されています。

事案によって、検察官による終局処分(起訴するか不起訴にするか)との関係で、黙秘が有用な場合もあれば、供述した方がよい場合もあります。
黙秘権は権利である以上、本来はそれを行使したことを不利に扱ってはいけません。しかし、事実上、黙秘によって、捜査機関が、罪証隠滅のおそれ等を見い出し、逮捕に踏み切る場合があります。したがって、黙秘権を行使すべきかどうかは、何を重視するか、すなわち、不起訴処分にしてもらうことを重視するか、あるいはそれよりも逮捕されないこと自体を重視するか等によっても変わってきます。

やはり出頭する前に弁護士に相談し、取調べにおいて黙秘すべきかどうか等を含めて具体的なアドバイスを受けておくのが良いでしょう。

日本国憲法第38条1項
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

刑事訴訟法第198条2項
前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

出頭命令(出頭要請)後、逮捕されるリスクを防ぐには

以下では出頭命令がなされた際、逮捕される可能性を低くする方法を説明いたします。

出頭命令(出頭要請)に応じる

既に説明したとおり、出頭命令に応じなかった場合には、逮捕される可能性が高くなります。数回応じなかっただけでは通常逮捕されませんが、それが何回も続いてしまうと危険です。指定された日時に出頭することが難しい場合には、遠慮なく難しい旨言って構いません。その代わりに、いつなら可能なのか、代替案を提示するようにしましょう。

被害者との示談を成立させる

被害者のいる事件においては、特に初犯の場合、被害者との示談を成立させることで不起訴の可能性が高くなります。その分、捜査機関側としても、捜査の必要性が小さくなるため、逮捕の可能性を低くすることができます。

弁護士に依頼する

出頭命令に応じる前に弁護士に依頼することで、取調べでの対応の仕方につき具体的にアドバイスをもらえるほか、弁護士に警察署や検察庁への出頭に同行してもらえることもあります。弁護士による同行自体が、逮捕回避に一役買うこともよくあります。
また、逮捕の可能性がそれなりに予測される事案であれば、逮捕回避のための弁護活動もしてもらえるでしょう。さらに、被害者のいる事案であれば、被害者との示談交渉も代理して行ってもらえます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。出頭命令に応じるか否かは任意ですが、それを正当な理由なく拒否すると逮捕されるというリスクもあります。
出頭命令を受けた場合には、今後の生活への影響を考え、出頭前のできる限り早い段階で弁護士に相談しアドバイスを受けておくことが大切です。

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  • 逮捕されるのだろうか
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上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

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