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公然わいせつで逮捕? 釈放の手続きや解決までの流れを弁護士が解説

本コラムは代表弁護士・中村勉が執筆いたしました。

公然わいせつ罪とはどのような性質の犯罪か

公然わいせつ罪は、公の場でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪で、目撃者からの通報などに基づいて発覚する場合が多いです。具体例としては、酔っぱらって公園や路上で全裸になったり、下半身を露出させたりすること、公園で恋人と性行為をすること等があります。

実務として特に多いのは、早朝や深夜に酔っ払って街中で性器を露出するケースです。また、女性に見られる目的で、路上で陰部を露出し女性の前に立ったというケースもあります。
公然わいせつ罪は、同じ性犯罪とはいえ、不同意(強制)わいせつ罪とは異なり、性的自由を直接侵害するタイプの犯罪ではなく、むしろ社会的法益である風紀を乱す行為と捉えられることが多いです。もちろん、見たくもないものを見せられた通行人などは被害者ではありますが、直接被害者に触れる不同意(強制)わいせつ罪とは異なるのです。

そこで、量刑上も不同意(強制)わいせつ罪等と比較して軽く、刑罰は、6か月以下の懲役か50万円以下の罰金、勾留(1日以上30日未満)、科料(1000円以上1万円未満)となります。
初犯であれば、実務的には略式罰金刑となることが多いです。逆に、不同意(強制)わいせつ罪と違って、社会的法益を侵害する犯罪であって、不起訴処分にはなりにくい類型の犯罪とも言えます。

もちろん、露出行為を見せられた者との示談や、仮に店舗内で露出行為を行った場合には店舗との間での示談により不起訴となることもあります。被疑者が公然わいせつ罪にあたる行為を行なったことで、それを見せられた者は精神的被害を被ったという場合があり、その人らに対して被害弁償を行ない、示談を成立させるのです。

公然わいせつ罪の成立要件

「公然」とは

公然とは、不特定多数の人が認識することのできる状態にあることを指します。したがって、公共の場であればたとえその場に誰もいなくとも、また、周囲から丸見えの状態であれば自宅等の個人の空間であっても、公然性が認められます。

「わいせつ」とは

わいせつとは、徒に性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものです。
公共の場での性行為や、路上や公園などの他人に見られ得る場所で陰部などの性的なものを露呈すると、公然わいせつ罪が成立する可能性があります。

一方、その定義は非常に曖昧であり、社会通念に従って法的判断がされるため、行った行為がわいせつ行為といえるかどうかの判断には、専門的知見が不可欠です。したがって、公然わいせつ罪にあたるかの判断には、専門的知見を有した信頼できる弁護士を選ぶことが極めて重要です。なお、公然わいせつ罪は、他の性犯罪と比べると罰則はさほど重くありません。しかし、余罪があるケースが多く、この場合は初犯でも起訴される可能性があるので注意が必要です。

公然わいせつ罪とネット社会

例えば、わいせつ画像を不特定多数が見ることのできるネット上にアップした場合、公然わいせつ罪になるでしょうか。これは、公然わいせつ罪ではなく、わいせつ物頒布罪で処断されます。

では、ネット上でわいせつなものを拡散する行為で、公然わいせつ罪が成立することはないのでしょうか。性交等をライブ中継すれば公然わいせつ罪になるでしょう。犯罪の性質としてわいせつ物頒布罪は、ネットにアップした時点で犯罪行為が完成し、同時に終了します。その後の状態は法益侵害行為は続くものの、犯罪行為としては終了しているのです。これを「状態犯」と言います。例えば、窃盗罪もそうです。窃取行為により犯罪行為は完成して終了しますが、被害者の所有権及び占有権の侵害状態は続いているのです。

これに対し、性行為をネット上、リアルタイムで中継する場合は、その中継が続く限り犯罪行為は終了していません。これを「継続犯」と言います。例えば、監禁罪がそうです。このように、ネット社会でのわいせつ犯罪行為もその性質に基づいて、わいせつ物頒布罪となるか公然わいせつ罪になるかが違ってくるのです。

公然わいせつ罪の弁護活動

公然わいせつ罪は、目撃者がいて現行犯逮捕されることが多く、証拠が明白であることから、逮捕後に勾留・起訴によって長期にわたり身柄を拘束される場合は近年減少しています。現行犯ではない場合、公然わいせつの現場付近にある防犯カメラ等によって、後日逮捕される場合も考えられます。あるいは、公然わいせつを行なった現場に停めていた車のナンバーを目撃されており、警察によって照会・特定されることで後日逮捕に至る場合もあります。

このような場合は、犯人性が問題となることがあり、逮捕され、勾留されることもあります。公然わいせつ事件において、捜査機関に発覚し、逮捕に至る割合は4割程度とされています。一方で、通常逮捕の場合であっても、本人が罪を認めていたり、反省しているような場合や、周りが本人をしっかり監督する旨の身元引受書を提出した場合には、勾留請求されずにすぐに釈放されることもあります。
早期の身柄解放を目指すにあたっては、専門的知見を有した弁護士を選ぶことが重要です。いずれの場合においても、早期から一貫した適切な弁護活動を行うことが肝要となります。例えば、現行犯逮捕されなかった場合でも、弁護士のアドバイスにより、後日逮捕される可能性が高い場合には、弁護士を伴って自首することも逮捕回避の有力な手段になります。

逮捕された場合には、逮捕の翌日又は翌々日に検察庁に送致され、検察官の取調べ(弁解録取)を受けます。その際、検察官は、被疑者を10日間留置する勾留を裁判所に請求するかどうかを決定します。裁判官が勾留決定をした場合には、検察官の勾留請求日から数えて10日間、留置施設に留置されることになります。また、勾留された後、検察官は勾留延長の請求を裁判所にすることができます。勾留の延長が認められると、最大で更に10日間の身体拘束が続きます。

とにかく、逮捕・勾留された場合には、最大23日の身体拘束を受けることがあります。長期間の欠勤が続くと、会社に知られてしまう可能性や、懲戒解雇になる可能性もあるので、そのような不利益を避けるために早期に弁護士を選任することをお勧めします。
身体拘束から解放され在宅事件として捜査が進むことになった場合や、当初から在宅事件として扱われている場合であっても、起訴され、前科がつくこともあります。起訴され、前科がつくのを避けたい場合には、捜査機関への対応や今後すべきことについて、弁護士のアドバイスを受けるべきです。

公然わいせつ罪の再犯防止のために

公然わいせつ罪に当たる行為を繰り返しているような事例等では、再犯防止のため、専門医療機関に通院するなどの対策をとることも必要になってきます。この行動が不起訴処分の一因となったり、執行猶予付判決が得られたりする可能性が高まります。

公然わいせつ罪で無罪を争う場合

公然わいせつ罪で無罪を争う事例としては、被疑者が、例えば立小便をしていただけであるなどの弁解や、ズボンのチャックが気付かずに開いていたため性器が露出していたことに気が付かなかったといった弁解です。目撃者の通報等により現行犯逮捕されることが多いことから、犯人性そのものを争うことはまずありません。

このような弁解で、検察官や裁判官を説得できるかどうかは、経験ある弁護士のアドバイスがぜひ必要です。例えば、釈放して欲しくてそのような嘘の弁解をした場合、後になってそれを翻して認めたとしても、検察官は勾留請求をするでしょう。やはり、早期から信頼できる弁護士によるアドバイスを受けることが重要なのです。

まとめ

公然わいせつ事件では、自白事件(罪を認めている事件)の場合、被害者の方との示談交渉や反省を示すための活動が重要となり、否認事件(罪を認めていない事件)の場合は、無罪判決を目指した弁護活動を行なうことになります。

特に、ネット社会の出現で、立法当時には考え付かなかったような、性行為のネットライブ中継といった公然わいせつの態様も出現してきており、犯行態様も複雑かつ組織的になってきています。もし警察から呼び出された、あるいは逮捕されてしまった場合、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

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